言い訳
「ご協力ありがとうございました!では、私は報告があるので、これで!!」
深々と頭を下げた後、ヒューナさんはダッシュで去っていく。
…報告も嘘じゃないだろうけど、たぶん調べたいことが増えて居ても立っても居られないんだ。きっとそうだ。
しかし、私はそこでハッと気づいた。
確認しておかないといけない事がある!!
「ヒューナさん、ちょっと待ってください!」
「ん?」
「学校にはどういった説明をしてあるんですか!??」
これ重要!
だって、どんな尤もらしい理由でも、当の本人がなんのこっちゃ状態じゃぁ周りから色々聞かれた時にボロが出る。特に私みたいなポンコツじゃ絶対ボロが出る。
予習復習、大事。これ、重要。
「あー、そうだったね。忘れるとこだった。えと、サラちゃん、魔人が暴れるちょっと前に例の噴水の近くに行ったよね?」
ヒューナさんの言葉に私はうなづく。
たぶんアルフェ様かカナハさんから報告が行ってるんだろう。騎士団と傭兵団は非常に近い関係らしいから。報連相ってやつか。昔教わったぞ。
「その時、魔人と偶然接触してしまった可能性があるから、魔術師団で念のため検査をする……そういうことになってるよ。」
「ほ、ほう。」
感染症の検査みたいなもんかな?パンデミック対策思い出す。いや、魔人の魔力が他人にどう影響するかは知らんけど。
「一応言っておくと、闇の魔力に中てられて体調不良になった近所の人もいたから、まるっきりの嘘ってわけでもないからね。その辺は抜かりなし!!」
「…さすがっす。」
「ありがと!!ふふ、本当に今回は皆さんにはお世話になりました。改めてお礼を言わせてもらいます。何か面白いことがわかったらお知らせするからね。じゃっ!!」
最後の方はほぼ早口状態である。
私達にお礼の言葉を告げた後、今度こそヒューナさんは走り去っていった。
足早っ!!!!
「……なんか、嵐のような人でしたね。」
「……だな。」
「ふふ。私も楽しかったわ。」
ルダ様がクスクスと笑う。
まあ、ルダ様にとっては懐かしかったり驚いたり、ちょっと切なくなったり…色々濃い三日間だっただろうな。
私も色々気になることが増えた……ただ、今はまだ聞く段階じゃない気がする。
「さて、じゃあカナハ。学校まで送ってやりなさいな。」
「…そのつもりだ。」
当然だ、とルダ様の言葉に頷くと、カナハさんは私を学校まで送ってくれた。
相変わらず、歩く時も紳士である。馬車や車からさりげなく庇ってくれるのがわかる。
さて、今回は前回とは違ってアルフェ様がいない。
そのせいだろうか。以前より少しカナハさんの口数が多い気がする。
それともこの三日間で慣れたのかな?
まあ、色々話してくれるのはうれしいのだけれど、その中で私は衝撃的な事実を知ってしまう。
「え、カナハさん、18歳!?」
「……もうすぐ19になる。」
カナハさんがまだ10代だったってことにぶっ飛び驚いたんだよ!!
しかも、前世の私とほとんど同い年だ!!
……マジで?
「へ、へぇ~~。」
「ふふ、カナハって若々しさに欠けてるのよね。」
「ル、ルダ様!」
私の微妙な表情と、ルダ様のあんまりな一言のせいでカナハさんが目に見えて落ち込んでる。
いやいや、老けてない、老けてないよ!ただ…。
「背が高くって、落ち着いてるからっ、それで…。」
「大丈夫だ。よく言われる。」
少し情けない表情をするカナハさん。初めて見る表情だ。
思いの外、ショックだったようだ。
カナハさん、意外と気にしているんだな。
「私なんかも、よく言ってることがおばちゃんみたいとか言われますし。」
これは本当だ。しっかし、失礼な話である。確かに私の最終目標はおばちゃんどころかおばあさんっぽいのかもしれないけど。
普通の子供は安定した職に就き、そこそこ稼いだら引退して、のんびりとした余生を送って長生きすることを目標にはしていないだろうしな。
「確かにサラは見た目こそ子供だけど、中身がね。老成とまでは言わないけど、カナハと同じかそれよりちょっと上くらいの印象を受けるわね。」
ギクッ。
ルダ様、さっきからズバズバ来ますね。
ま、まあ、前世からの年齢を加味すると、そうなる…のか?果たして自分がそこまで内面成長できているとは思っていないのだけれども。
しかし、流石精霊の親玉。見てるなぁ。
「いやいや、そんな。私はただ色々枯れてるだけです。」
「…?」
「ぷっ、あははは、サラ、あなた本当に面白い!!」
訳が分からない様子のカナハさんとバカ受けのルダ様。
…不本意ではありますが、楽しんでもらえたようで良かったです……。
「「サラッ!!!」」
「ぐっ!!」
寮に戻ったとたん、ロビーで何かにぶつかられた。
……いや、突進…まあ、どっちも同じか。
「こらこらこらこら、二人とも!!」
身動きの取れない私の視界に、あきれ顔のルカちゃんが映る。
首と視界を無理やり下に向けると、茶色のクルクル巻き毛と、サラサラの金髪が目に入る。
と、言うことは。
「カリナちゃん、グレッチェンちゃん!?」
名前を呼ぶと、恨みがましくも潤んだ目を二人に向けられた。
カリナちゃんはともかく、グレッチェンちゃんがこういう行動に出るのは珍しい。
驚いていると、二人は私をがっしりと抑えながら、深いため息を漏らした。
「いつも通りのサラだぁ……。」
「良かったぁ…。」
「え、あの、なんというか……ご心配をおかけしました。」
何故か口調が硬くなる。
なおも私にしがみつく二人を引きはがしながら、ルカちゃんもため息。
「ほんとだよ。先生が、サラが念のためだけど検査入院したって聞いた時はもう……教室中大騒ぎだったよ。」
「……。」
確かに…確かに、言い訳としては完璧なんだろう。
でも、物凄い大事になってるじゃないか!!!!
なんでそんな言い訳にしたんだ!!とキュミラスさんにツッコミを入れたくなったけど、すぐに冷静になった。
……まあ、ヒューナさんに無茶振りをされたキュミラスさんの苦肉の策だったんだろう。
実際検査を受けている人がいるならバレる危険性もぐっと減るだろうし。
うん、キュミラスさんも、苦労したんだろうなぁ。
あとで、ねぎらいの言葉をかけよう。
私はしみじみと、そう思ったのだった。




