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失われた神殿


「お待たせ。じゃあ行きましょうか。」

「はい。」

「……。」


キュミラスさんの言っていた通り、あれから2日後に外出禁止令は解除された。

待ってましたとばかりに、放課後に町へ向かう生徒たち。

私もそのうちの一人である。


しかし、今回のお仕事…と言っていいのか、これは一応内緒である。

だって、ただの生徒でしかない私が国の調査に関わるなんて知れたら、色々めんどくさいことになるだろうしね。私も質問責めはご免である。


だから、私は一緒に出掛けようと誘ってくる友人たちの誘いを丁重に断り、いつも通り図書館に向かい、そこから普段は使えない高等魔術研究所へ繋がる通路を通り、そちらの裏口から外へ出る……と、マスコミに追われる芸能人のような移動方法を取ったのだ。

非常にめんどくさく、気を使いました。流石にこの時ばかりは精霊さんに頼んで、人がいないか見てもらったりしたよ。


それにしても友達の誘いを断るのは地味に心が痛んだ。ごめんね……。でも流石に宮廷魔術師団長様から言われたら断れないですよ…。





「この上着着てね。」

「え、これって。」

「うちの研究所の上着。あと、この帽子かな。」


裏口を出る前に、ヒューナさんに色々着せられる。一応の変装のようなものだろうか。

ヒューナさん曰く私の身長なら、こういう格好をして顔を隠せば小柄な大人として周りは見るからだいじょーぶ!とのことだった。信じていいんですね、そのセリフ。



さて、現場までは、ヒューナさん所持の魔道具の車で向かう。見た目はまんま昔の自動車!って感じである。

通常の移動は以前使った馬車と言う名の魔獣車や人力車だけど、そこはさすが国立古代魔術研究所のエリート、マイカー所持である。お値段は知らないが、たぶん聞いたらぶっ飛ぶと思われる。


物珍しそうに通り過ぎる車を眺める通行人を車の中からチラ見しながら、私は滑らかに走る車のシートに座りなおした。ああ、シートも気持ちいいっすね。



「お疲れ様です。本日調査を担当するヒューナ・ロウ・ダーマです。」

「はっ!!!どうぞ、お通りください!」


魔人が暴れたという現場は、規制されているらしく魔力を纏った紐で囲まれている。なんか刑事ドラマとかで見た覚えがあるような光景である。

そこを警備担当の騎士さんに敬礼されながら迎えられるヒューナさん。あの態度からすると、ヒラじゃないな、この人。まあ、血筋もさることながら、いかにも切れ者っぽいこの雰囲気。納得である。


「さて、ここで降りましょうか。」


ゆっくりと車が止まり、やがてドアが開く。

自動でな。……ハイテクかっ!!!すげえな、魔道具!!


「……。」

「あ、ありがとうございます。」


恐る恐る、差し出されたカナハさんの手を取る。

ちなみに、乗るときもそうだったけど、カナハさんは降りる時もしっかり手を差し伸べてくれる。これが元騎士の団長さんが教えってヤツか。流石に様になってる。愛想はゼロだけどね。




「…やだ……この距離でも闇の魔力がわかるわね…。」


苦々しげにつぶやきながら、カナハさんの横に浮かぶルダ様が顔をしかめる。


「あ、確かに…。」


うん。先日の実習で味わった闇の魔力を感じる。

前回ほどのイヤな感じとか、ピリピリ感は感じないけど、やっぱり違和感はある。降りたとたんにこれでは、ルダ様じゃなくても文句を言いたくなる。


「どうしたの、サラちゃん。」

「あ、ルダ様がこの距離からでも闇の魔力がわかると。」


私の呟きに反応したヒューナさんに、ルダ様の言った事をそのまま伝える。

これが今日の私の仕事である。


「うん。結構強いでしょ……あ、気分悪くない?」

「大丈夫です。」

「よかった。闇の魔力ってあまり縁がない人が多いから、時々体調崩す人がいるんだよね。」


こういう仕事している人でもそうなんだ。ちょっと意外。

やはり闇の魔力を常に微量ながら浴びていたメメリアちゃんの方が珍しいのか。


「さて、例の噴水はあっちだね。」


指さされた方向にあるのは、最初に話を聞いたときに薄々感づいてはいたけれど、やっぱり先日カナハさん、ルダ様、アルフェ様に会った公園にあるあの噴水だった。

強力ではないものの、清浄な光の魔力を帯びた水を絶えることなく噴き出していた噴水は、現在淀んだような雰囲気を纏っている。


「うわー。呪いの噴水になってる。」

「うん。迷惑なことしてくれたよねぇ。」

「早いとこ、浄化しましょう。見てられないわ。」


ご立腹な様子のルダ様。光の精霊からしたらそりゃムカつくよなぁ。


「私たちは、この噴水の水源について調べてたんだけど、魔石があるのか、それとも精霊の力なのか。それの特定ができなかったの。」


ヒューナさん曰く、この噴水はこの地がウィチードの支配にあった頃からあるらしく、資料が残っていないらしい。

周りの建物などの整備はされているが、水脈自体はずっと変わらずあるため、どこから水を引いているか謎らしい。


「魔人がここから自分の闇の魔力を送り込んで、水源を汚したようなんだけど…。」


場所の特定もできなくて、とヒューナさんが悔しそうにつぶやく。

なんでも、召喚で魔力を消費した魔人が噴水にに手を突っ込んで自分の魔力を逆流させ、水源を闇の魔力で汚したとのこと。そして自分仕様に汚したその魔力で、消費した魔力の回復を図ったのではないかという推測が、現在一番有力な候補らしい。


「魔人がやったのと同じ方法で逆に浄化ってできないんですか?」

「…うちの部下と同じような事言うね、サラちゃん。でも、その方法は危ないからダメ。水脈を遡る間にも魔力を消費するでしょ?魔人の魔力を打ち消すだけでもかなりの力がいるから、それをやったらまず魔力が枯渇すると思う。」

「そ、そうですか。」


力業はさすがにだめらしい。というか、私と同じこと言った部下さんがいたのか。

ていうか、魔力の補給をしようと思ったってことは、その時点では魔力がかなり減ってたってことだよね。それでも反対となる属性を打ち消しなが逆流させ、その大元自体を汚しちゃうんだから、魔人の魔力量って満タンだと逆にどのくらい凄まじいものなんだろう。

まあ、それは今度調べよう。今はとにかくお仕事、お仕事。


「と、いうわけで、ルダ様、何か知ってます?」

「うーん、ウィチードの神殿があったところよね、ここ。」

「ん?」

「そうなると……霊山パッツェロが水源かな。」


パッツェロ…王都の西にある程々の高さの山だね。しかし…。


「霊山なんて呼ばれてましたっけ?」

「ん?」


ルダ様の言葉に疑問を口にすると、ヒューナさんが勢いよく振り向く。あ、すみません。


「あ、ルダ様が、霊山パッツェロが水源かもって。」

「霊山パッツェロ?パッツェロ山ってすぐそこのあの山だよね??霊山なんて呼ばれるほど重要視されてたの?昔は?」


ヒューナさんも、霊山なんて仰々しい呼び方をされていたとは知らなかったらしく、目を丸くしている。


「確かに、頂上には小さい神殿の跡があるけど…でも……。」

「ここにも神殿があったみたいですよ。」

「え!!?」

「あら、知らなかったの……まあ、跡形もないものね。ウィチードが崩壊した時に、色々失われたのかしらね。」


おおっと、いきなりの重要情報!!思いがけないその情報にヒューナさんはブツブツ呟きながら考え込んでしまった。たぶん周りの声は耳に入っていない。キュミラスさんも言ってたけどかなり研究熱心の人のようだ。


「まあ、たしかパッツェロの神殿は光の神を信仰してたはずだから、可能性は高いんじゃないかしら。」

「光の神様の神殿だったそうです。」

「光の神!!」


私がそう伝えると、ヒューナさんは更に目を見開き、大声で驚きの声を上げた。

クールな美女という印象のヒューナさんの意外な反応に、私は驚く。ついでに隣のカナハさんも驚いている。無言でビクってなった。ちょっと面白いと思ったのは内緒だ。


しかし、カナハさんマジ喋んないな。こりゃ、私ついてきて正解だわ。



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