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一応の解決



「カナハ!」

「……。」


ギースの呼びかけに、待ってましたと言わんばかりのタイミングで光の柱が現れる。

転がってその場を離れたギースとは違い、男はその光の柱に完全に飲み込まれた。


「……!!!!」


声にならない声を上げ、膝から崩れ落ちる男は、すでに瀕死の状態だ。

抵抗できるような状態にないのは一目瞭然である。だが、彼らはそれ以上男に攻撃を加えることはしない。ただ、男を囲むようにして警戒を続けている。


数分程度たった後だろうか。暗闇から正規軍の鎧を付けた女性が現れたことにより、三人はようやく緊張を解く。


「おっと、やっとご到着ですか。」

「……ああ。よくやってくれた。」


イヤミのようなアルフェの言葉に眉一つ動かさないまま彼女はぽつりと一言だけ礼を言うと、それ以上何も言わずに腰の剣を抜き素早く光の魔力を纏わせたかと思えば、次の瞬間一振りで男の首を落とす。



王都を恐怖に陥れた魔人の最後としては、驚くほどあっさりとしたものだった。



「…知ってるやつか?」

「第三騎士団の、下士官だった男だ。」

「ほ…なるほど、だからこそのあんた直々の登場ってわけか。団長さん。」


団長と呼ばれた女性は、アルフェを一瞥すると、無言のまま一緒に来た騎士に目配せする。彼らも無言でうなづき、素早く男の遺体を回収する。


「ご協力感謝する。」

「ああ。」

「それでは、私たちはこれで。」


ギースの言葉に、騎士団は素早くその場を後にする。

残された三人はその姿を見送った後、ため息をついた。



「妙に人手が少ないと思ったら、そーゆーことか。」

「騎士団から魔人が出た…おっと、魔人が紛れてたなんて、一般人には明かせないもんね。」


わざとらしく訂正するアルフェに視線を一瞬向けると、ギースはゆっくりと首を振った。


「まあ、どちらにせよ、あまり大きな声で言えることじゃないだろう。明日は我が身だ。」


力の入ったその言葉に、アルフェとカナハは顔を見合わせる。そして同時に思い出した。


「俺たちが入る前でしたっけ?うちでもあったのって。」


アルフェの言葉にギースはうなづく。

彼にとっても強烈な出来事だ。

仲間一人が魔人化した事は。


「ああ。俺もあの時はガキだったが、今でも覚えてる。団長の右腕だった人が変わっていく様を。」

「…。」

「あれは恐怖だった。二十年近く経った今でもはっきりと覚えてる。しっかりした、面倒見のいい人だったが……。」


深く、沈み込むようなギースの言葉に、流石のアルフェも黙り込む。


「あっけないもんだったなぁ……。」



最後に吐き出すようにギースは呟き、目を閉じる。それは魔人に変貌してしまうことを指してるのか。それともその団員の最期についての事なのか。




「誰でも魔人化する可能性はあるからね…。どんなに信念を持っていようと、どんなに思いやりを持っていようと。」



カナハにしか聞こえないルダの言葉。

誰を思い出していたのだろうか。その呟きは、寂しげに暗闇に溶けて消えていった。










「あ。」

(んあ?)

「怖いの、消えたよー!」

「やったー!!」



寮の自室、眠れなくて布団の中でもぞもぞしていたら、唐突に周囲の精霊さん達が騒ぎ始めた。

いや、内容としてはいいことなんだろうけどさ、余計眠れなくなる予感しかしない。


(魔人、倒されたってこと?)

「うん!」

「ルダ様たちー!」


達ってことは…まあ、ルダ様が直接魔人を成敗!!…はしないと思うから、カナハさん達かな?

そうだとしたら、あの人達大活躍じゃね?凄いな。


しかし、私には気になってしょうがないことがある。


(倒された魔人って、どうなるの)

「わかんない。」


はいはい、聞いた私がアホだった。

正直、昼間抱いた疑問……魔人として討伐されたらその後の扱いはどうなるの!!家族は??周りは????がマジで気になるんだよ!魔人討伐の報を聞いてもイマイチスッキリしない。

ああ、これ、納得できる答えが出ない限り、モヤモヤし続けるヤツだ。


(まあ、でも明日になれば、ちょっとは分かるかな?)


今、これ以上のことは分からないだろう。

魔人討伐が本当だとすれば、明日になれば学校からも何らかの発表があるだろうし、そのうちキュミラスさんにも聞けるだろう。


そう自分に言い聞かせて、私は無理やり目を閉じた。


やっぱりあまり眠れなかったのだけど。






「魔人は無事、我が国の騎士団により討伐されました。」


さて、朝一で先生が明るい表情で、そう私達に宣言した。

そりゃめでたい、そりゃ安心……だけど、あれ?


(え、騎士団がやっつけたの?)


精霊さん情報とは違う。おいおいガセネタか?

1人こっそり戸惑う私だったが、間髪入れず耳元で精霊さん達が大ブーイングを起こし始める。


「ちがうよぉ。ルダ様たちだよー。」

「ねー?」

「騎士の人は、首落としただけだよー。」

「っっ!!」


不意打ちの首落とした表現に、ちょっとめまいがする。あの、あまり生々しい表現とか、ちょっと…。

ああ、でもそれで納得。


(そりゃ、騎士団がちゃんといるのに、傭兵団の人が討伐しましたじゃあ、色々問題だよねぇ。)


たまたまなのか、そういう作戦だったのかはわからないけど、魔人を倒したのは傭兵団……とうか、ルダ様含むカナハさん達で、とどめは騎士団の人が刺したってことだろう。

メンツとか、建前とかそういうのかね。やだやだ、大人の事情ってやつかい。



「ただ、すぐに通常通りということはありません。これから魔人の侵入経路等の調査があるので、外出禁止令はあと一週間ほど続きます。」


先生の言葉に教室の一部から「えー」という声が聞こえる。まあ、すぐに解除してほしいよね。気持ちはわかる。


しかし、一週間で決定的な何かが出ない場合はどうするんだろう。期間延長とか…「なにも出ないわよ。」


ん?


(る、ルダ様。)

「はぁい。」


いきなり念話で話しかけないでほしい。ビビるから。しかし、どこにいるんだろう。精霊の格や魔力の関係上、あまりに離れてると念話もできないはずだけど。

ただ、今はそれ以上に気になることがある。


(で、出ないって。どういうことですか。)

「ん、隠された侵入経路も何もないってこと。」

(え。)

「騎士団の人間だったのよ、今回の魔人。」

「っ」


声が出そうになるのを必死で抑える。

だから不意打ちは勘弁してほしいんですってば。


「だから余計に騎士団が片付けたことにしたかったの。」

「……。」

「で、私たちは調査の一環で呼び出されたの。会議室の関係で学校にね。」


ルダ様が近くにいるのはそういう訳か。

精霊の親玉であるルダ様にとって、私の居場所の特定くらい楽勝だろうし。


「それで、さっき説明されたんだけど、どうやら今回の魔人化した人は故郷の事で国に恨みを持ってたみたいね。」

(故郷?外国出身だったんですか?)

「ううん、三年位前かな、国境の村をリレグラが襲ったんだけど、その村がかなりの山間でね。軍を出すのが難しかったのよ。んで、モタモタしてるうちに村は皆殺し。」


あ、あっさり言わんでくれ。ビビるわ。

というか、今日私ビビってばかりじゃないか?いい所がまるでない…。


(皆殺し…)

「そのことで軍や国自体を恨んでたみたいね。」

(…。)

「一応、表向きは軍に魔人が潜んでたってことにするみたい。まあこれも生徒には言わないけどね。混乱を招くだけだし。」


ルダ様の言葉に、私は少しだけ、今回の魔人化した人に同情する。

だって、想像してしまったんだ。


もしも、前世の町やラクラエンが襲撃されて、みんな殺されたら。

両親や友達、同級生にお隣さん…好きな人とか、皆、一人残らず殺されたら。


そんな状態で助けを求めたのに、国は何もしてくれなかったとしたら。



そりゃ、冷静でいられないどころか、正気じゃいられないよ。




「サラー、魔力が乱れてるぅ~。」



あ、想像だけで魔力が乱れたらしい。精霊さんが文句を言ってくる。

だけど、今想像しただけの私ですら魔力が乱れたんだ。実際体験してしまったら……。


私は耳元で文句を言う精霊さん達を無視して、教室を見回す。

魔力の暴走は、怒りや悲しみで簡単に起こってしまう。そして今、この教室にいる子達みたいに魔力の量が多い人ほどそれは激しい。


だからこそ、魔人化のことは秘密なんだな。

思ってるよりずっと身近に潜むその危険を。


(もしかしたら、確証とまでいっていないのかも。検証のしようがないし。)


悶々と考えているうちに先生の話は終わり、皆がやがやと話し始める。



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