王都に迫る密かな脅威
「あら、もうこんな時間だねー。……さて、二人とも。」
「わかってる。サラちゃん、学校まで送るよ。」
「え。」
日が落ち始めた頃、お茶会はお開きになったのだが、サラリと言われたその申し出に、私はぎくりとする。
「どうしたの?サラ。」
ルダ様が疑問の声を上げるけど、そりゃ戸惑うよ。
だって二人とも有名人じゃん。
しかもイケメン。派手。
「……目立ちませんか?」
「え、気にするとこ、そこ?」
「はは、ちょっと気持ちわかるー。うーん、二人とも違った意味で目立つんだよねー。」
アルフェは派手だし、カナハはでかくて派手だし。と納得した様子のレヌールさん。
「でも、一人はダメだよ。この辺ではまだ出てないけど、最近王都も物騒なんだよー。」
「物騒?」
え、なにそれ、初耳。学校でもそんな話出てないと思うんだけど。
前世の学校と同じように、泥棒とか、変質者が頻繁に出没している場合、当然ながら学校でも注意喚起がされる。場合によっては外出制限もあるのだ。
「あ、サラは知らないのね。カナハ、説明してあげて。」
「…前、会った時、ロックベアが出ただろう?」
ルダ様に促され、相変わらず小さい声でカナハさんがつぶやく。
「あの、森みたいなところですね。」
「…ああ。最近になってから、町に近いところでも魔物に遭遇するケースが増えている。」
「そうなんですか?」
そういえば、ちらっとそんなこと言ってたな。
冒険者が今手薄だから、傭兵団が呼ばれたとも。思い出した。
「あれからも調査してたんだけどね。ここみたいな大都市だと普通防御壁がのおかげで魔物なんて町の中はもちろん、周辺にも近づかないんだよ。それじゃなくても、人、しかも冒険者が多い所には普通魔物は警戒して寄ってこない。」
王都の防御壁は、さすがのラクラエンも比較にならないほど立派なものだ。
物理的に強固な壁、三重に掘られた堀、更に更に魔法結界も張り巡らされている……と習った。
「それなのに、町、しかも王城付近で魔物が出たんだよ。小さいやつだけどね。」
「え!?流石にそれっておかしくないですか?」
「そーなの。おかしいよねー。」
「詳しいことはまだ調査中だから、大々的に注意喚起はしていない状態なんだけど、そのうち何らかの警戒情報も出ると思うよ。」
「……ああ。」
成程、レヌールさんは、それを心配して二人に私を送り届けるように言ってくれたのだ。なんて優しい人なんだ。
「私のカンではだいじょーぶそうだけど、万が一もあるし。それにもしサラちゃんに何かあったら…。」
眉を下げるレヌールさん。可愛らしいお姉さんにこんな表情をさせているのが自分だと思うと、なんだか心が痛む。
「……わかりました。お願いしてよろしいですか?」
そこまで言われれば、断るのも逆に失礼だ。
それに確かに怖い。魔物は夜に活性化するものも多いと習っている。
「それじゃあ、ありがとうございました。」
「またねー、サラちゃん。二人とも頼んだよ!」
「ああ。」
「…任せておけ。」
頼もしい二人の言葉を耳にしながら、レヌールさんに手を振る。
有名傭兵団の幹部クラスに護衛してもらいながらの帰路だなんて…と思ったけれど、町はまだ人通りも多く、しかも二人がやたら目立つせいでその足元にいる目立たない私に目を向ける人なんていない様子である。
むしろ、一緒に歩いているとは認識されていないんじゃないか?そう考えると自分の地味さを痛感して残念な気持ちになる。
そんな気持ちになりながらも、学校の門が見えた時にはさすがにホッとする。あまり感じていなかったけど意外と緊張していたようだ。
「無事着いたね。」
「ありがとうございました。」
前世仕込みの90度の礼をすれば、かしこまりすぎだろ!とアルフェ様に笑われた。
その横のカナハさんは相変わらずの無表情だけど、肩のルダ様は楽しそうだ。
「今日は楽しかったわ、あなたのおかげで。」
「…ルダ様……そりゃよかったです。」
彼女の言う楽しかったは、たぶんカナハさんにとってはいい意味ではないだろう。
気付いた様子のカナハさんが何か言いたげだが、言っても事態は好転しないと思ったのか、口を噤む。ルダ様相手だもんね。
「それじゃ、おやすみなさい。」
「はい。本当にありがとうございました。」
最後にもう一度お礼を言って今度こそ別れる。
二人ともスタイルいいから、なんか絵になっていて悔しい。
ちなみにその時、イケメンチャラ男らしく、別れ際に私の頭をひと撫でしていったアルフェ様。
それだけなら流石に慣れてらっしゃる…という感想しか持たなかったのだが、よりによって、その様子をグレッチェンちゃんに見られて色々聞かれる羽目になってしまった。
全く、イケメンはこれだから!!!
まあ、ラディエルさんに見られたんじゃないだけまだマシだと思うようにしよう……と、質問攻めにあいながら私はそんな風に考えたのであった。




