怖いのは苦手
夏休みも終わりまた学校が始まった。
1年ぶりに会う両親は、なんかもう……熱烈歓迎!!!!って感じだった。
連日のごちそうで正直太った気がする。
そんな私の右腕には、父が職場で扱っている素材で作ったというブレスレットが輝いている。
私には微弱な魔力しか感じられないが、一応魔道具の研究者である父が「役に立つから!きっと!」と念を押していたからたぶんなんかの役に立つのだろう。聞いてもお守り!とか答えてくれなかった。
精霊さんに聞いてみても「なんか癒される魔力ー。」とか非常に判断に困る答えしか返ってこなかったため、結局不明なままである。これが何かの追及はまた今度にしよう。
さて、今日の私達は、まる一日かけた校外での授業だ。学年が上がるにつれ、実践的な授業がどんどん増えている。
目的地は、学校から歩いて30分くらいの廃墟。かつて魔法研究所があったところである。
しかし今から300年ほど前、魔道具の実験中に魔力の暴走事故を起こしたため、施設は閉鎖したとのこと。
多数の死者、怪我人を出す大惨事だったとのことである。
「当時ここは、魔導王国ウィチードの支配下にありました。そのため、失われた魔法技術も使われていたようですね。」
魔導王国ウィチードの崩壊によって、多くの古代魔術が失われたのです。と実習担当のクラランス先生が締めくくる。
ウィチードって、隣の大陸に大昔にあった国だよね。この大陸の一部も領土だったって聞いてたけど、こんな王都に近い場所にまで領土があったのか。驚き。
「それほど長い年月が経った後も、事故の影響で大量の魔力が残っているうえに、アンデッドが発生するようになったため、まあ、ダンジョン扱いされていますね。」
「アンデッドって、元々はその犠牲者の方々なんですか?」
すかさずルゥナちゃんから質問が飛ぶ。
ちなみに、ルゥナちゃんはあれからすっかりクラスの皆と馴染んだ。
最初は当初の女子以上に距離を置いていた男子も、次第に打ち解けていったようだ。今では他の女子と変わりなく接している。
いや、一部の男子は急速に柔らかくなった雰囲気と、元々の優秀美少女っぷりからちょっと違った視線を向けているみたいだ。青春だね。
「おそらくそうでしょう。アンデッドは魂が魔力により死後も囚われてしまった状態から発生すると言われています。」
「とらわれる…。」
「とはいえ、詳しい原因や条件はまだはっきりとわかっていませんね。ここの魔力が尽きない原因も不明ですし謎は多いです。研究している人はいるのですがね。」
そうか。はっきりした原因は不明なのか。
前世のオカルト話とかだと、本人の未練だとか、悪霊に魂がとらわれたとか、はたまた怪しい儀式によってとか…そんなお話があった気がするけど、この世界はどうなんだろう。
というか、マジでアンデッドいるんだな。
本で読んで知識としては持っていたけど、改めて先生にそうはっきりと断言されると、マジでいるのか、と恐怖心が湧いてくる。お化けとか幽霊とか超怖い。私はビビりなのだ。
「死霊術は、それを人為的に行う術です。自らの魔力を魂に絡みつかせ、使役します。しかし、闇属性の魔力との相性が良くないと使えないうえに、下手をすると引っ張られます。しかもまだ本格的な研究が始まってから日の浅い学問なので、他の魔術より危険度は高めです。」
あっさり言われたけど、恐ろしいこと言っていないか?
「引っ張るって、術者自身の魂が引っ張られるってことですか?」
「サラさん、正解です。さらに言えば、自分どころか周囲の人間の魂を巻き込む危険性もある魔術です。だから死霊術師は数が少なく、国によっては迫害対象なのですよ。なので余計に研究が遅れています。」
迫害対象。ちょっとどころかだいぶ他の魔術とは毛色が違うということか。
「さて、アンデッドには聖属性魔法がよく効きますが一般魔法だと何が有効でしょうか。レベッカさん。」
「はい、火属性です。」
「正解です。聖属性魔法が難しい時はまず火の魔法を使うといいでしょう。」
聖属性魔法は、先日会ったルダ様を始めとした光の精霊が担当している。
むかーし、精霊さん達が言っていた。光の精霊は少ないと。だから聖属性魔法は難しいのかな?
ちなみに、普段私の周辺をふよふよしているのは水とか風の精霊が多い。次いで土、火だろうか。懐かしいな、RPGだと大体基本はその四属性だった。
「聖属性の魔力を浴びせると、アンデッドは死ぬんですか?」
「アンデッド自体はもう死んでいるので、浄化という表現が適切ですね。火も同様です。しかし、他の魔法や武器のみだと一時的に魔力を散らすのが精一杯なのでまたすぐに復活します。」
「うわぁ…。」
先生は慣れてるのかもしれないけれど、私も含め生徒たちはちょっと腰が引けている。倒しても倒しても復活されたらそりゃ怖いわ。
特に女子は顔色が悪いように見える子がちらほらいるようだ。たぶん私も。
「さて、皆気付いているでしょうが今回の実習は一歩間違えば命の危険性があります。そのため、今回は私だけでなく、ファジル先生と、カミーユ先生に来てもらっています。」
ファジル先生と、カミーユ先生はそれぞれ回復魔法と聖属性魔法の使い手である。
万が一の時でも安心ってか?
……やだ、マジで危なそう。今回の実習。
こういう実習があると、やっぱり地元の学校とは違うんだなぁ、と実感してしまう。
魔力の高い子を集め、その制御を教えたうえで正しい力の使い方を学ばせる。そしてそこから更に選抜を行う。
軍人の育成方法としては一番正しいのだろう。
しかしそれでも、キュミラスさんの話では稀に魔人化する人が出るというのだ。人の心と言うのは難しい。
「といっても、さすがに奥までは行きません。5人ずつの班を作って、あの建物のロビーまで行き、そこにある札を取って戻ってくるだけです。」
ね、簡単でしょ??と言わんばかりのクラランス先生だけど、いや、それまんま肝試しじゃん。
指さされた建物、いかにも出そうな場所ですよ。お化け屋敷ですよ。
しかし、私達に拒否権はない。
先生によって振り分けられた班で、私たちは恐る恐る順番に建物へと歩いていくのだった。




