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懐かしい友人


「しかし、よく王都の学校にこれたねー。」


今までの話を聞いてる限り、そんな状況じゃ王都行きなんて到底無理そうだけど。

マジで幽閉とかされそう。


「二番目の兄だけが、私の気持ちをわかってくれてたの。学校に推薦された私を王都にやるように親と地主様を説得してくれたんだ。」

「よく説得できたねぇ。」

「『王都の学校で学問を収める程の女性を娶れば、ご子息にとっても箔が付く。』って。」

「んん?」

「『うまくいけば宮廷に有力なコネができるから将来的にこの町の発展のためにもなる』とも言ってた。」

「おお…。」



に、二番目のお兄さん、グッジョブ!!!!



「そのうえで兄に言われたの。宮廷魔術師を目指しなさい。って。宮廷魔術師の地位と、こんな地方の地主の権力なんて、比べるまでもないから。って。宮廷魔術師にとっては、田舎の地主なんか恐れるに足りない存在だって。」

「…いいお兄さんだね。」

「だね。」


今も昔も、私には兄弟がいないからうらやましい。

そこまでしてくれるなんて、そのお兄さん、よっぽどルゥナちゃんが可愛いんだね。


「ほんと…バレたら、兄の立場だって危ないのに。もし宮廷魔術師が無理なら、そのまま冒険者にでもなって、帰ってこなければいいとまで…。」


なるほど、宮廷魔術師になれば、家に戻らなくても不自然ではないうえに、その地位の高さから真っ向から相手の求婚を断ることだってできる。

冒険者だって、国中どころか世界中廻る人たちだから、別に家に戻る必要なんてない。

私の予想も結構いい線行ってたみたいだ。



しかし、宮廷魔術師や冒険者になって地元に戻ってこないとなれば、言い出しっぺのその兄が責められるのは目に見えている。

それほど田舎の村ならそれこそ針の筵だろう。



「ほんと…兄さんは……。自分は、才能が無かったからここから抜け出せなかったって。せっかくの才能をここで腐らせたらもったいないよって。」


それもルゥナちゃんは分かっているようだ。涙目になるのも無理ない。

しかし、凄い。自分にはない才能を持つ妹をそんな風に励まして送り出せるって、すごく視野が広い上に出来た人だと思う。なんていうか…言い方悪いけど、そんな閉鎖的な田舎にはもったいない人じゃね?


「確かに、兄には魔力の才能は無かったけど…でも、すごく勉強はできるんだよ。でも、ロメロには、それを生かせる場所がないの…。町を出るには、魔術学校か騎士学校しかないの…。」


ついにルゥナちゃんの目から涙が零れ落ちる。

ああ、お兄さんが心配なんだね…。他の兄弟は分からないけど、二番目のお兄さんのことは本当に大切なようだ。


「…ルゥナちゃんが、出世したらお兄さんを呼ぶって手もあるんじゃないの?」

「え」

「いや、王都なら、魔力がそう高くなくてもできる仕事も多いでしょ?それこそ宮廷魔術師になれれば、そういう口利きもできるんじゃないか、と。」


一言で言えば、コネだね。

それこそ、お兄さんが地主を丸めこむために言った事を実際にやってしまえばいい。


「そっか…それもありだよね…。」


その発想はなかった、と言った表情で目を見開くルゥナちゃん。

うん、選択肢の候補として頭の片隅にでも入れてもらえれば幸いです。



「しっかし、勝手に結婚相手決められるとか…。」

「ありえない。」

「ルゥナちゃんには悪いけど、今時…あるんだ、そんなの。」


と、そこで一通り話を聞き終わったクラスの女子集団から、次々とそんな感想が漏れる。


だよねー。私も全力で同意だわ。



転生してから私も周囲を結構見てきたつもりだけど、基本この国の結婚観とかは前世とそう大きく変わらないっぽい。

まあ、王族とかは分からないけど、少なくとも一般庶民についてはそうだ。お見合いとかはあっても、無理強いしたとか、親の命令で嫌々とか、そんなの少なくとも地元で見聞きした覚えはない。

まあ、子供に対して大人が本気で隠したらわからないかもだけどね。


「私だったら何も考えず逃げるわ。」

「しかも相手の性格がクソ。」

「ルゥナちゃん、苦労したんだね。」


一緒に来た同級生たちからしてもあり得ない、という件で一致しているらしい。

この反応からしても、やっぱり私の認識は間違っていない様子。


うん。それにしてもわだかまりはもうどっか行ったね。

むしろ、なんか団結力が強まった様子。

一部の子なんか、やたら気合入った顔しちゃってるよ。


「もうこうなったら、マジで宮廷魔術師目指そう。」

「だよね。流石にルゥナちゃん、気の毒すぎ。」


おお、ルゥナちゃんの態度に腹を立てていた子…エニーデちゃんとデボラちゃんだけど、彼女たちも今はもうそんなこと吹っ飛んだらしい。

まあ、あのツンケンした態度があまりの余裕の無さによるものだとわかれば(理由が理由だし)、同情の方が勝っちゃうよね。


「ごめんね、私、そんな事情もしらないであんなこと…。」

「う、ううん、私の方こそごめんなさい…。」


おお、ルゥナちゃんの態度が軟化した!

さっき怒鳴りつけた相手…メリッサちゃんと謝りあっている。

いい方向に進んだようで、本当に良かった。良かった。



うんうんと思わずうなづいてしまう。私はおっさんか。



「それにしても、サラちゃんよくルゥナちゃんが地元から離れたがってるってわかったね。」

「え。」


だが、気を抜いたところで、グレッチェンちゃんから唐突にそう声をかけられ、私は内心ギクリとする。


「え、なんで?」

「いや、私全然思いつかなかったからさ。」


ひいい、グレッチェンちゃん鋭い。

まあ、確かに不自然と言えば不自然かな。


普通は余裕がない→宮廷魔術師になるために必死→閉鎖的な田舎の町出身→(ピコーン)地元から離れたいのか!!

とはならないかな。


私だって、たぶん…彼女と友達じゃなければその発想には至らなかったと思う。

でも、当然ながらそれをそのまま話すわけにはいかない。


「む、昔父さんが言ってたの。」

「お父さんが?」

「うん。父さんの友達なんだけどね。その人、元々はどっか遠くの町出身だったんだけど、家族と折り合いが悪くて、若い頃にもう関わりたくない!って地元を飛び出したんだって。で、そのまま遠く離れた東ラクラエンに来て、そこで仕事探して、んでそのまま定住したんだって。」

「へー。」

「遠い町で仕事して、家建てて、結婚しちゃえばもう戻る理由なんてない、ってことらしいよ。」

「なるほどねー。確かにルゥナちゃんとちょっと状況似てるかもね。」

「でしょー?だから私もピンときたんだ。」


畳みかけるように言えば、グレッチェンちゃんも納得した様子。

それに内心ほっとする。

頼むからもう突っ込まんでくれ。



しかしまぁ、よくこうベラベラと口からでまかせが出たもんだ。



ごめん、これ嘘なんだ。

父さんの友達にそんな人はいない。



本当は……大学時代の友達。

前世で一番仲良くしていた子。




彼女は…地方から出てきた子だった。

授業をしっかり受けつつも、バイトにも精を出していた。


そして、長期休み。

私を含めた他の子が帰省する中、彼女は家には戻らず、バイトに明け暮れていた。


だから私はその時何の気なしに聞いたんだ。

家に帰らなくていいの?って。


彼女はその時曖昧に笑っただけだったけど、それからひと月くらいたった日の夜、彼女が私の部屋にいきなり訪ねてきたことがあった。


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