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時には吐き出したいこともある


あ、この距離になれば私にもわかる。人の気配…っていうか、人の魔力。

伊達に2年生になったわけじゃないのよ。


「みつけた。」


中庭の隅っこの方。

植込みの陰にルゥナちゃんはいた。


「…ルゥナちゃん。」

「……。」

「教室、戻ろ?」


横にしゃがみこめば、ルゥナちゃんが身を縮こませる。

なんか、いつもきりっとしてるルゥナちゃんのこういう子供っぽいしぐさ、初めて見たかも。


「ルゥナちゃん。」

「…して…。」

「ん?」

「どうして、来たの?」


腕からわずかに顔を上げたルゥナちゃんの目。

赤くなっているのを見れば、今まで泣いていたのがわかる。


ただ、表情を見る限り、怒りで泣いていた風ではない。

困惑と言うか、そんな表情に見えた。


「あ、ルゥナちゃん!」


と、そこで私達の背後から、他の子達も走ってくる。

そしてその中から一歩進み出たメメリアちゃん。タオルをすっと差し出しながら近寄ってきた。


「ほら、目、冷やして。」


うわ、メメリアちゃん、男前!!

ていうか、いつの間に用意したんだよ!!


「あ、ありがとう…。」


半ば強引にタオルを受け取らせると、そのままメメリアちゃんは反対側の手を取って立ち上がらせる。ルゥナちゃんも素直に従った。


「ほら、教室戻るよ!」


そう言うと、メメリアちゃんは余計なことは言わずにぐいぐい引っ張ってくれる。

いや、ほんとウサミミの可愛らしい見た目とは裏腹に、イケメンすぎるよ、メメリアちゃん!


「放課後に、話聞かせてね。」

「…うん。」


歩きながらそう言えば、ルゥナちゃんは案外素直にそう答えてくれた。

――彼女も実は思いっきり、吐き出したいのかもしれない。


その端正な横顔を見ながら私はそう思った。






その後教室に女子全員でゾロゾロと戻り、通常通り授業に専念しました。

様子がおかしいことに気づいた数人の男子がチラチラこっちを見てたみたいだけど、数人の女子が睨んで黙らせていました。ちょっと怖い。

ただ、後で説明しないとね。集団いじめと思われたら敵わん。





そして放課後。



女子寮のルゥナちゃんたちの部屋に私たちは集まっていた。

四人部屋だからそれなりに広いはずだけど、さすがに15人以上いると狭いぜ。



「さて、ルゥナちゃん。」

「うん。」


ルカちゃんの言葉にルゥナちゃんは大きく深呼吸すると、ゆっくりと話し始める。





「私の村は…ロメロでも内陸の方。山の麓にあるの。貧しい村で…目ぼしいものがないから、外部から全然人が来ない場所なんだ。」


ロメロ。


メメリアちゃん曰く結構田舎の町。

どうやらルゥナちゃんの家のあたりはその中でも更に田舎らしい。


「だから、学校もすごく規模が少なくて…ここに来たのも、騎士学校と併せても三人しかいないの。」


少なっ、と誰かがつぶやく。

まあ、私も同感。


「実家も、畑で何とか生活している感じ。」

「何人家族なの?」

「11人。祖父母と両親と、兄が3人に姉が2人、あと弟が1人。」

「多いねー。」

「他の家もそんな感じだから…もっとも、家自体は少ないから、村の人口は大したことないんだけどね。」

「そうなんだ。」

「それにしたって、王都にくる子少なくない?」

「あまり皆、外に出たがらないの。だから学校も王都に行かせることにあんまり積極的じゃない。一番上の兄も10歳以上年上でもう結婚してるけど、村から出る気はなさそうだし。他の兄弟もそう。村の人たちも。」


え、それ、本来の主旨からすると不味くないか?


魔力の高い子供が、その制御の仕方も知らないまま、言い方は悪いけど野放しになるってことだよね。

というか先生や親の方がむしろ王都に行くことについて乗り気だったイメージがあるからこれには驚いた。先生とかも地元の人なのかね。


「へー、騎士になりたいとか、冒険者になりたいとか言わないんだ。」

「私たちの学校だとみんな結構そういうこと言ってたけどねー。」


皆口々に驚きを口にする。だよね。

前世だって、小学校の時くらいは皆結構将来は歌手になりたいとか、野球選手になりたいとか、漫画家になりたいとか言ってたぞ。子供ってそういうもんじゃないのか…。


「私はむしろ、ここに来てから皆がそう話してるの聞いてびっくりした。でももしかしたら、地元の皆も思ってても言いづらかったのかも。私の村だと、基本皆地元に残って、そこで結婚して細々暮らす感じだから。」

「でも、ルゥナちゃんは嫌だったんだ。」


私の言葉に、ルゥナちゃんはうなづく。


「うん。絶対残りたくない。」


絶対ときたか。

こりゃ、結構な理由がありそうだ。


「どうしてか聞いてもいい?」

「うん。」


ルゥナちゃんは黙り込む様子はない。

どうやら、ある程度吹っ切れた様子だ。



「私の家は農家だけど、自分ちの土地じゃなくて、大地主様の土地で畑をやってるの。」


なるほど、小作人ってやつか。

昔習ったな…世界が変わっても人のやることとかはあまり変わらないものなのか。


「で、その大地主様に一人息子がいるんだけど……同級生なんだけどね、そいつがすっごく嫌な奴なの。」

「あー。」


なるほど、なんか、読めてきた気がする。

そんなク●野郎がいる地元に居られるかってんだ!って話か。確かにそんな奴が幅を利かせてる場所に居たくないわな。


「凄くいじめられた。逆らっても、大地主様はすごくそいつを甘やかしてるから…逆に私が親に怒られた。」

「はぁ?」

「なにそれ…。」


グレッチェンちゃん、すごい顔してる…。まあ、想像するだけで腹立つよね。理不尽にも程がある。


「でもね…町の学校を卒業するころ、親に、お前はあの家に嫁に行くことに決まったって言われたの。」

「は????」


思わず皆の声がそろう。


えええええ!?マジかよ!!!

いや、町の学校卒業するころって、7、8歳だろ!?

何考えてるんだ、親!!!

しかも本人の意向完全に無視かよ!!



「…なるほど、そいつが嫌いすぎて地元に居たくないんだね。」

「当たり前じゃない!だって、散々私や他の子のこと、小作人の子供ってバカにしてたくせに、いきなりお前は俺のところに嫁に来いとか言うんだよ?」


ルゥナちゃんの語気が強くなる。まあ、感情的にもなるよね。


あー、たぶんその地主の息子、大きくなるにつれ美少女化していくルゥナちゃんに目を付けたに違いない。

他の子もなるほど、と言った様子でうなづいてる。


「でも、親は…。」


うつむいて言葉を切るルゥナちゃん。


まあ、小作人の子供が大地主様の跡取りの嫁になれば、万歳ってとこか。本人の意思など関係なく。

…反吐が出る話だな。



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