制御することの難しさ
シャルロッテ&ディアンに再会してから四日後。
「今日は実技の日ですよ。皆さん外に出てくださいな。」
イリヤ先生の言葉に、皆ちょっと浮足立つ。私も含め。
だって、魔術学校の実技だよ?
そりゃぁ、魔法をどっかーんとぶっ放す…。
「人差し指に意識を集中して…。ほら、そこもうちょっと火力を抑えて。」
うん…。まあ、そりゃそうだよね。
まだ一年生だもんね。
魔法をぶっ放すのはとりあえずお預けで、私たちは人差し指にわずかな炎を生み出す実技を行っています。
ただ火をともせばいいだけじゃなくて、安定した火力をどれだけ長く保つことができるかが大切とのこと。地味にむずい。
「サラさん、火がブレてますよ。」
「あ、はい。」
気を抜くとすぐに火力が不安定になる。そしてイリヤ先生からの指導が飛んでくる。ほら、グレッチェンちゃん、こんなもんですよ。別に上手くないです買い被りです。
「ルゥナさん、火が大きすぎます。もっと魔力の出力を抑えて。」
「はい。」
黒髪美少女ことルゥナちゃんはなんかすごい真面目です。しかも人を寄せ付けないタイプの真面目さんです。見た目が美少女なので周りも気軽に近づけないであります。
ぶっちゃけ、クラスでもちょっと浮き気味です。話しかけても無視はされないけど、話しかけるなオーラが出てるのであまりしつこくしないようにしています。
「このように、イメージが上手くいけば詠唱はいりません。」
そう言って、両手の指一本一本に火を灯して見せる先生。なるほど、先生レベルになるとこれくらいはお手の物ってことか。
「しかし、上級魔法になるほどイメージは難しくなります。魔力を司るのは大気中に満ちる精霊達です。精霊たちにイメージが通じなければ魔法は使えないのです。」
火や水みたいに身近でイメージしやすいものはokでも、複雑になるとうまく精霊に伝わらないってことか。
精霊さん達は、口に出さなくてもわかるって言ってたけど、意思は通じても、それが合ってるかどうかは怪しいってことなんじゃ…。なら、やっぱり口に出して指示するのは間違いではないってことでは?
そんな疑問を抱いてしまう私なのであった。
「まあ、精霊が見えないのに、そんな存在と意思疎通をしろと言うのがなかなか無茶なのだ。」
「ああ…。」
さて、その日の夕方。
また、図書室で偶然キュミラスさんに会った訳だけど、ちょうどいい機会なので授業で感じた疑問をぶつけてみた。
そして言われたキュミラスさんの言葉にちょっと納得。
「だから、皆、言葉で具体的に指示を出すんですね。」
「そうだ。」
「はぁ。」
その結果が「我の求めに応じ!」か…。
「それに、やろうと思えば精霊に頼らずとも自ら魔力を変換することは可能だ…が、まあ、これも感覚がわからないと逆に効率が悪い。」
「一応、技術としては確立されてるんですよね?確か昔読んだ本に載ってました。」
「一体どんな本を読んでいるのだ、お前は。だいたいその年で昔読んだ本って……まあいい、確立されているといえばいるが…決まった用途に使うなら、同じ精霊に頼らない魔力変換でも、自分でやるより魔法道具を使った方が効率がいいし、安全だ。」
「人間がやると、ブレる?」
「ああ。お前も経験はないか?感情で魔力の制御はブレる。」
「…ああ。」
うん。身の程を知った例の出来事で痛いほどそれは感じています。
「魔法道具の多くは、決められた量の魔力を自ら、または魔石から供給されることで動く。万が一その量が多すぎても、自動的にその余剰分の魔力を散らす仕組みが設けれらている。まあ、けた違いの魔力を注がれてはさすがに壊れてしまうがな。」
「はー、うまく出来てるんですね。」
こういう話を聞くと、ますます魔力が電気と近いものに感じてしまう。
前世で電気がない生活なんて考えられなったように、この世界では魔力がない生活など考えられないのだろう。
「魔力の制御を失敗した者の末路は悲惨だ。私の同僚でも今まで2人ほど魔人化したものがいる。」
が、そこで言われた言葉に私は思わずぎょっとする。突然すぎるだろ!
「ま、魔人化って。」
「誤魔化さなくてもいい。気づいてるんだろう?精霊達から聞いてるぞ。」
「口軽!!」
あいつら……まあ、なんかその辺の感覚はやっぱり人間と違うよね。
今回のことに限らず、私のことも色々キュミラスさんに筒抜けな気がする。不用意な発言は慎もう。
「それにしても、二人って結構いるんですね。」
気を取り直してそう聞き返すと、キュミラスさんの表情が少し沈む。
「私の場合、15で宮廷魔術師団に入ってるからな…30年間で二人。まあ、少なくはないかもしれないな。」
「で、その人たちは?」
「…魔人は有無を言わさず討伐対象だ。」
そこでキュミラスさんの表情が更にずーんと沈み込む。き、聞くんじゃなかった!!




