プロローグ2
「一番いいのは、もう一度焼き清めることなんだけど…。燃え盛る炎の中に飛び込めって言われて貴方できる?」
「あ、無理です。」
即答である。
「そうよねー。」
「いや、わかってるなら聞かないでくださいよ。」
「いえね、不具合が起こること自体は初めてのことじゃないのよ。あ、こちらの名誉のために言わせてもらえば、ごくごく稀なんだからね。」
慌てて取り繕うお姉さんだが、すぐに表情を曇らせる。何事!?
「ただ…前にね…忌まわしい思い出を抱え続けるくらいなら、いっそもう一度焼き清めて全てリセットしてほしい!って子もいたから。」
「え」
なにその人怖い。いったいどんな人生を歩んできた人なのだろうか。
「ただ、ここにとどめられる時間は短いのよ。本来人の魂があるべき場所じゃないから。速やかに次の人生を歩めるようにしないと。」
「生まれ変わるってことですか?」
「そうよ。ああ、でも、前と同じ世界ではないわね。」
お姉さんがあまりにあっさり言うもんだから、私は反応が一瞬遅れた。
「え、世界がいくつもあるんですか?」
「そうよー。」
なにぃ!?平行世界とか異世界とか異次元とかいうやつか?
まるでファンタジーとかだ!
「ぐ、具体的には…?」
「そうねぇ、貴方たちの世界には無かったけど、魔法の力が支配する世界もあれば、貴方たちの世界より科学技術が進歩した世界もある。逆に荒涼として、人が細々と暮らす世界もあるわ。」
「マジか…。」
「残念ながら、二度連続で同じ世界には生まれることはできないけどね。魂の質が偏るから。」
そうか…魂の質云々はよくわからんが、とにかく皆にはもう会えないのか。
「落ち込まないで…というのが無理よね。全部覚えてるってある意味辛いことだから。まあ、代わりと言ってはなんだけど、大まかな希望くらいなら聞くわよ。もちろん無理のない範囲でだけど。」
なんかどっかで聞いたような話だな。しかし、望むことなんて、いざこういう風になってしまうとこちらもパっと思い浮かばない。
「荒涼としたところはちょっと。うーん、うーん、私みたいなポンコツでも、頑張れば生活できる…世界?」
「ポンコツって…貴方なら正直どの世界でもなんとかやっていけそうだけど。」
「今度はできるだけ、長生きしたいもんで。平和第一。」
「……じゃあ、生活自体はそう変わらないけど、魔力のある世界にしましょうか。若い子はそういうの好きよね。」
お姉さんはそう自己完結すると、後ろのおじいさんを振り返る。
「それでよろしいですか?ダーナ様。」
「うむ!!」
おじいさんはうなづくと、手で大きく○を作る。ノリ軽っ!!
「あら、もう時間ね。」
「おお、では達者でな。」
「すまなかったな。」
「……がんばれ。」
最後は、今までずっと黙ってたショタの人も声をかけてくれた。
いやー、しかし、この展開あり得無くないか?
通常の死後の世界とも違うようだけどさ。
だから私は気づくのが遅れたのだ。
あまりにも、ドタバタと訳の分からないことが起き、考える間もなく物事が進んだから。
手を振る彼らの姿がだんだん薄れていき、やがて視界が白一色になった頃になって気づいたのだ。
落ち着いていたつもりでも、やっぱりどこか混乱していたようだ。
そのくらい、真っ先に気づきそうなこと。
…もしかして、あの人たち、神様じゃね???
とりあえずプロローグはここまでです。
次回から本編に入ります。