表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/17

 ショムーブの町では、セクハーラ・トウゴウの魔の手から解放されたことを喜び、そして俺たちを称える宴が一晩中繰り広げられた。


 俺達の行動が、これほど感謝されたということに、少しの照れと、そして大きな達成感や喜びを感じることができた。


 しかし、これで満足してはいけない。

 この世界には、まだまだ闇に『堕ちた』俺達の元同僚や、諸悪の根源たる『邪鬼王』が存在しているのだ。


 宴の日だけは夜更かしをしたが、翌日の昼過ぎには、もう次の戦いに備えて、拠点としているアイザックの館に戻らねばならなかった。


 老魔術師による転移の魔法にて、俺たちが姿をかき消すその瞬間まで、町人達は手を振り続けてくれたのだった。


 館に戻った俺たちは、さっそく次の戦いに備えて、会議室へと集まった。


「皆、よくやった! 特に、劣勢を逆転させたユウの行動、そしてセクハーラ・トウゴウにトドメを刺したヒロの殊勲はすばらしいものじゃ!」


 アイザックが、珍しく絶賛してくれた。


 シュンも攻撃を当てていたのだが、やはり、妖魔化しているとはいえ、元同僚にトドメを刺すことの精神的な負担はかなり大きい、それを成し遂げたからこそ意義がある、と、連続で褒めてくれた。


 あらためて、各々のステータスを確認してみた。


 名前:ヒロ

 称号:勇者

 戦闘力:1300

 生命力:1400

 魔力: 680


 名前:ミキ

 称号:魔術師

 戦闘力:200

 生命力:490

 魔力: 700

 

 名前:ユウ

 称号:聖治癒術師

 戦闘力:250

 生命力:420

 魔力: 600


 名前:シュン

 称号:弓使い

 戦闘力:800

 生命力:800

 魔力 :210


 名前:フトシ

 称号:商人

 戦闘力:3

 生命力:1401

 魔力: 0


「あ……なんか私、『聖』っていう文字がついていますっ!」


 ユウが、嬉しそうにそう叫んだ。


「ふむ……『聖治癒術師』か、これはめずらしい」


「……えっと、『聖』が付くと、どうなるんですか?」


 称号が変わった彼女は、少しだけ不安そうに尋ねた。


「確か、同じ魔力量で、同じ魔法を使ったとしても、効果が2から3割増しになるはずじゃ。デメリットは特にない」


「……すごい、今までよりずっと魔力を節約できるんですね!」


「同じ魔力でより高い効果を得られる、とも言い換えることができるのう」


 アイザックも、最も年齢の若いユウが成長著しいことを喜んでいるようだ。

 ミキも、シュンも、相応に成長している。


 フトシの攻撃力については……これはもう、突っ込むまい。

 生命力、俺より1だけ高いのが無性に腹が立つ。

 

 そしてアイザックは、次に戦うべき敵を教えてくれた。


「商業都市カイケーイが、恐ろしく強力な口撃力をもつ女妖魔の侵攻を受け、犠牲者を大勢出しているという。そやつは、セクハーラ・トウゴウと同じく、異世界から召喚された元人間。元々は同じ職場の人間ということになるじゃろう」


 彼の言葉に、どうしても重い雰囲気となってしまう。


「そやつの名は、『ヒステリック・モラハーラ』、ヒステリックもモラハーラも人格の一種を現したものだと思われる。そして固有の名前を当てはめた、『ヒステリック・ヤマモト』という別名も持つ。ハラスメント四天王の一人じゃ」


 この言葉にも、「三人しかいないだろ」と突っ込む者はもういなくなった。

 まあ、一人倒されて、残り二人になったし、今更だ。


「ヤマモト……ヒステリック……まさかっ!」


 ミキが口元に右手を添え、目を見開いて立ち上がった。


「……会計課のヤマモト係長……」


 ユウは、青ざめていた。


 ヤマモト係長は、ちょっとしたことでもすぐにヒステリックに喚き散らす、アラフォーの独身女性だ。

 書類にミスでも見つけようものなら、鬼の首を取ったようにその社員がいるフロアに乗り込んで来て、大勢が見ている前だろうが容赦せず、徹底的に叱責する。


 その様子から、社内でも彼女の登場を恐れ、おののく者は多かった。


 新入社員のユウも、一度被害に遭ったことがある。トラウマになっていなければいいが、と思っていたが、今の様子を見れば、しっかり恐怖が刷り込まれているようだった。


「……ふむ、今の皆の表情……それほどの強敵なのか?」


「「「「「はい……」」」」」


 俺たちの声は重なり、そしてそれ以上続くことはなかった――。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ