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おいでよ、最果ての村!  作者: 星野大輔
第一章 最果ての少女
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アリス

あてのない旅である。

急ぐ必要などない。

目的のために要する時間は果てしないのだ、いや、ともすれば永遠を費やしても達することは出来ないかもしれない。


しかしだ。

無暗に時間を弄する事は、ちりちりと背中に火を近づけられたような焦燥感を感じさせる。

何かをしてなければ、少しでも目的に近づいているという達成感がなければ。


アリスは果てなき道程の途中にいた。





「街に閉じ込められてもうひと月か」


最早見慣れた宿屋の部屋の天井を見ながら、アリスはぽつりと呟いた。

主要街道の関所を魔王軍に抑えられて一ヶ月。


孤立状態となった街の物資の輸送は滞り、徐々に疲弊し始めていた。


砂漠のオアシス・トトリ。

主要街道が一本北から延びており、街の背面、つまり南側は延々と砂漠が広がっている。

砂漠の中にポツンと街はある。


なぜこのような場所に街が立っているのかというと、砂漠の中に点々と埋もれている遺跡発掘を産業の要としているからである。


「何か手掛かりがあるかと思いやってきたが…。

 はぁ、まさかこんな目に会うなんて」


この緊急事態に多くの公共機関が扉を閉ざしていた。

流通が滞った街の中では、貨幣が価値を成さないのだから、当然であろう。

宿だってそうだ。

朝食や、部屋の清掃などあるべきサービスが今は止められている。

部屋を貸すだけ。

それだけの最低限の営業。

しかも料金は通常の5倍。


街から出れないのだから、宿から追い出されれば野宿。安全を考えれば高くとも払うしかない。


「はぁ、部屋にいるとため息ばかりでるな」


お金はたんまりある。

今の料金だとしても一年はゆうに泊まれる。

まぁ、一年いまの状態が続けば街は滅びているだろうが。





アリスは聖銀の軽鎧を身に纏い、代々家に伝わる魔剣ハクリを腰に携える。

名目上は世界を巡る冒険者のアリス。

剣技はそこらへんの中堅冒険者よりも、よっぽど極めている。


鬱憤を晴らすついで、食料確保のために街の裏側、つまり砂漠へと足を運ぶ。

砂が舞う一面の金色世界。

風が吹く度、その通り道を地面へ描く。


生命の姿はそこにないように見えるが、魔物というものは不思議なもので、どんな過酷な環境にあっても適応し生息しているのである。


アリスが軽快な足取りで砂漠を闊歩すること20分。

餌の匂いを嗅ぎつけたのか、一匹の魔物が地面の中から姿を現した。


「ウルルルルル!」

「デザートウルフか、うむ、食料にはもってこいだな」


物流が途絶え、まだ食糧難とは言い難い状態だが、いずれ底が尽きるのは目に見えている。

その為、高騰する食料や、何なら溜め込んで吐き出さない店々に人々はピリピリしていた。


自前で用意できるに越したことはない。

一部の腕利きたちは、自ら砂漠へと足を運び食料捕獲のため魔物を狩るのが、最近よく見る光景であった。

しかし砂漠の魔物は、虫系が多く当たり外れもある。

その中でデザートウルフはなかなかの当たりである。

アリスはにやりと笑い、狼に剣先を突きつけた。


「ストレス発散も兼ねて、倒させてもらおう!

 いい運動相手になってくれよ!」




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