第6話
俺、降☆臨!いやーあっという間だったね。さすが俺の持つ最高の転移スキル。ちょっと移動中しんどいのがたまにきずだけどな!さてここはどんな状況なのかね。俺は周囲を見渡した。
(おうふ、何この状況。俺めちゃくちゃ目立ってない?)
周囲の状況を認識するとともに、少し戸惑った。ボロボロの黒いマントをまとった魔物の少女と煌びやかな白い鎧をまとった騎士軍団。その二つの存在に挟まれるようにその場にいる俺。いやー参ったね、どうしよう。
俺もどちらになんと声をかけていいのかわからないので、少しの間沈黙が続く。まあ、自分から声かけなくてもいいかとも思ったけども。そのなかで震え声になりながらも、俺に真っ先に声をあげたのは白い騎士団の先頭に立つ女騎士だった。
「こ、高名な騎士の方とお見受けする。名と所属を教えていただけないだろうか?」
「お、最初に声かけてくるのはやっぱ人間か。おら、そっちの魔物の君もこのコミュ力の高さを見習いなさいよ」
女騎士の問いかけにすぐには答えずに、魔物っ娘のほうを向き小声で忠告する。うん、力が強いのに魔物の方が負けてるのってやっぱ言葉が足りなかったり、連繋できてなかったりするからなんじゃないかと思うわけよ。魔物っ娘はポカンとした表情でこちらを見上げていた。うん、かわいい。その後女騎士の方に向きなおる。
「ふむ、我が名と所属か…。所属は…神の遣わした平和の使者と言ったところかな。名は……ショク」
やっべ名前とか考えてなかったわと思いながら、あえて偉そうな口調で触手から思いついた安直な名前を応える。
「ショク殿か…不勉強で恥じ入るばかりだが、私は貴君の存在を知らなかった、申し訳ない。それで此度はどのような目的でこの場に?平和の使者とのことだが…?」
この娘ええ子やで。こんな得体のしれない存在とよく対話しようと思ってくれた。神が遣わしたとか言う胡散臭い奴、俺なら会話しないもん。
「いや何、そちらの少女が不憫でな。保護させてもらおうと思うのだ」
そう口にした瞬間女騎士と魔物っ娘がどちらもとても驚いた顔をする。え、どしたの…ま、まあいいか、貴重な第一魔物っ娘を犠牲にするわけにはいかん。
「ま、待って欲しい。貴殿が力ある者であることは分かるがそれを連れて行ってもらっては困る。我が軍の最終目標なのだから」
「ならば力で私を倒せば良い。こればかりは譲れんな」
そう言って俺は魔物っ娘を抱え上げる。ん?抵抗しないな。まあいいか。好都合だし。攻撃スキルの練習もしとくかね。やばそうだったら転移で逃げればいいし。
「な、ならば仕方ない。こちらとしても悪の親玉を逃がすわけにはいかんのだ。小隊進めッ!」
ん?と俺はここで違和感を覚えた。悪の親玉?頭の弱い魔物たちが人間に対してそんな組織犯罪みたいなことできるのだろうか。いや、できないだろ。なんかの勘違いじゃね?ま、いいや、あの娘だけにはちょっと声かけとこ。
そこで俺は向かってくる騎士団員達に対して右の掌をかざす。
「<瞳の掌握>!」
掌に目玉が現れカッと一瞬光を放ったか思うと、無数の光線が騎士たちに対して殺到する。それらの光線一本一本は直線ではなく不気味に曲線を描きながら騎士たちに命中した。いやいつ見てもえぐいよねこの技。全部急所にあたるもん。魔法使いなら喉が焼けるし、剣士なら利き腕に当たるし。見た目もキモイし。
俺は呻きながら崩れ落ちた騎士たちの合間をぬって、玉座の間を後にした。またその際、先頭に立っていた女騎士にはひと声かけた。