第2話
少し時間を遡って、俺が神様に転生させてもらった時を思い出してみる。
そこは何もかも白い世界でとても暖かかった。何というかフワフワしていた。例えるなら、暖かな日差しが差し込む雲海のなか、ふかふかのクッションのような感触の雲に乗っているかのようだった。
そんな場所で俺の意識は覚醒した。
「あ、やっほー、目覚めた?」
俺の眼前には大きな白く発光する光球があった。あろうことかそれに話しかけられた。
(なんだここは…俺はどうなってんだ…?これは何だ?)
様々な疑問が頭の仲を渦巻くが目の前の光球の方から再び声がかかる。
「ここは神界。君たちの言う天国だよ。君死人。僕神。おっけー?」
(何だこのふざけた物体は…神?そしてここが天国?なら俺は死んだのか…ん?)
そこで自身の生前の記憶が思い出せないことに気付く。名前はおろか自分の死因さえ思い出せない。そのタイミングで光球から声がする。
「でさ、これから輪廻転生の波に乗って、次の転生を果たす君にちょっとお願いがあるんだ」
(俺に願い?というかこいつ、今さらながら俺が心に浮かべただけのことに返答してきてるな…)
「そりゃ神様だからね。声出しても出さなくてもいいけどお願いだけ聞いてくれない?そしたら次の人生はわりと楽しめると思うよ。君のちょっと変わった性癖も満たせるんじゃない?」
俺の変わった性癖。それは自分でも自覚している。…人ではない女の子が好きなのだ。前世では創作の世界にあふれている魔物っ娘、人外娘、いわゆるモンスター娘。それらがたまらなく好きだった。ちょっと人間離れした特徴を持つ者から、半分以上人間から離れているものまでなんでもござれだった。まあ完全な人外は女の子という要素が入っていないので対象外だったが。
なぜと言われても理由などない。現実の女の子にひどいトラウマを持っているだとか、二次元しか愛せないとかそんなわけではない。ただそういう性癖だからとしか言えない。そんな性癖を満たせると聞き、俺は少し神?の話に興味を持ったんだ。
「君が次に転生する世界は君たちで言う所のファンタジー世界だ。魔物の娘ももちろんいるよ。そこで君は前世の知識を持ったまま、魔物側の勢力に属して、世界をできれば平和に、最低限でも人と魔物の勢力を拮抗させてほしい」
(ん?どういうことだ。なんか魔物が負けてるみたいじゃないか。というか魔物の定義もわからんが)
「いやーその通りなんだよね。あ、魔物ってのは人類の敵対者で、まあざっくりいうと人類以外の者全部かな。君の知識にある通りの人類のくくりでいいよ」
(なんでその負けかけの魔物の支援が要るんだ?)
「いやさー、魔物って力は強いんだけど基本的に頭が弱いんだよね。馬鹿じゃないんだけど、個人プレーが過ぎるっていうかさ。で、この世界の神である僕としては人にも魔物にも滅んでもらっちゃ困るんだよねー。それで世界の均衡保ってるし」
この神は何だかあんまり俺に多くのことを説明したがっていない気がする。説明が雑だ。
「で、君に前世の知識、あ、記憶はダメだよ。もうないだろうけど。それとある程度の力をあげるから、何とかしてくれない?報酬は異世界ウハウハ魔物娘ハーレムってことで」
(そ、その報酬はどんな内容だ)
俺はもうこの依頼を受ける気だった。詳しい説明も求めずに。男は単純と言うがいや、これは実現するなら乗るべきだろう!
「いやさ、考えてよ。結構な力を持って綺羅星のごとく現れ、カリスマを発揮して魔物のピンチを救った大英雄なら人間側からは分かんないけど魔物側からしたら大人気でしょ?魔物娘の100人や200人軽く囲えるって。魔物だから一夫一妻制とかないしさ」
「よし乗った!」
「ここで声出すの!?しかも食い気味に返答したよね!?」
男なら乗るしかないだろう、このビックウェーブに!
「ま、まあいいか。承諾してくれるなら…。じゃあさっそく行ってらっしゃーい。あ、君にあげる力はねえ、君が昔やってたネトゲのキャラと同じにしといたから。じゃねー」
(え?もっと説明とかないの?)
それだけ言われると俺の意識は急速に沈んでいった…。