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異世界

「さて、行くか!」

斉藤(さいとう)(たくみ)は高校に登校していた。今日は国数英の三教科のテストがある。

(今日こそオール100点を目指すぞ!)

「お兄ちゃん!今日もおはよう!」

そう挨拶するのは近所の小学生の女の子の茉莉(まり)。登校時間と途中までのルートも同じため、毎日会っている。活発的な女の子でいつも小学校と高校の別れ道になっている信号まで競争している。

「お兄ちゃん、いくよ!よーい、ドン!」

茉莉が走り出す。巧はハンデで三十秒後にスタートした。差は段々縮まり追い抜き、今回は先に巧がゴールした。だが、巧はあることに気づいた。信号は青。茉莉に何の落ち度はない。しかし、

「(居眠り運転…!)茉莉ちゃん!危ない!」

トラックが壁を擦りながら突っ込んできていた。トラックが追突しようとしたのを巧は茉莉を突き飛ばして庇った。

「お兄ちゃん!?」

これが巧が聞いた最後の言葉だった。




「ああ、夢の中か…。」

巧は辺りを見渡し、溜め息を吐く。そこには草原が広がっていた。

「ここは生死の狭間の世界とかなんだろうか?俺は死ぬんだろうか…。」

巧はただボンヤリとまっすぐ草原を歩く。もちろん、行く当てもない。ひたすら歩いていった。




「ふーん?魔物か…。」

巧は森を歩いている最中にスライムとゴブリンの群れに遭遇した。数は五十を下らず、普通の冒険者なら即座に逃げる。だが、夢だと思い込んでいる巧は、

(まあ、夢だしな。)

群れを素通りする。たまにスライムが体当たりしてきたり、ゴブリンの棍棒が振り下ろされたりするが、物理反射(カウンター)のスキルが作動して返り討ちにしてしまう。物理反射は自分がもらったダメージを相手にも与えるのではなく、ダメージを無効化し、その攻撃力分の数値を相手の防御力を無視してダメージを与えるスキルである。

巧は自分の非常識さに気づかぬまま森を抜けた。




(あっ、町?国?があるな。あれ?この世界どこかで見たことがあるような…、気のせいか…。それとも、俺の見たことのある何かの小説やアニメがモデルの世界なのか?所詮、俺が見てる夢の世界だからな。十分あり得る。)

一人で納得する巧。その前にずっと何とかしたいことがあった。

(一人は寂しいな…。)

かれこれ一時間が経過していて、話相手もずっといない。さっきから独り言ばかり言っていて、孤独感を感じている。

巧はこの世界を分析していた。魔物が存在し武器や防具、回復アイテムなどが置いてあることから何かのRPGゲームがモデルなのではないか?と考えた。

(とりあえず宿?かな。夢の中とはいえ、休みたい…。)

巧は少し休むことにした。




何となく宿の位置がわかった巧は難なく宿にたどり着いた。夢だから勝手に休もうかとも考えたが、夢と現実が混同してしまうと困るので、ちゃんと受け付けをすることにした。

(この世界…なんだったかな…。まあいいか。)

「すみません、一泊したいんですけど…。」

「%#%&=?」

『人間語を覚えました。』

「えっ!?何!?」

まさかアナウンスが聞こえるとは思っていなかった巧は聞き逃した。

(やば、何言ってるか全くわからない…。)

「すみません、上手く聞き取れなかったのでもう一度お願いします。」

受け付けの女性()不思議そうな顔で巧に言った。

「(あっ、今度はわかった。)一泊お願いしたいんですけど。」

「一泊ですね?お食事の方は?」

(お腹空かないよな?)

「無しで。」

「無しですね。一泊100sです。」

(えっ!?sってお金の単位!?)

巧は困っていた。夢の中だと思っているので、自分の都合の良い世界にできていると思っていたのだ。

(どうしよう…、食事無しの一泊すら払えないと思われると夢の中とはいえ…念じれば出てくる?)

巧は簡単に念じてみる。するとお金が出てきた。丁度100s。その様子に受け付けの女性が少し驚く。

「アイテムボックス持ちなのですね。」

「(アイテムボックス?まあ、そういうことに…)はい、持ってます。こちら100sです。」

「はい、確かに100s丁度いただきます。」

巧は女性にお金を渡し、部屋に案内してもらった。




巧はついにこの世界の正体に気づいた。

(そっか、この世界は俺が唯一ハマっていたRPGゲームの世界だ。名前忘れたけど…。)

巧は基本ゲームが嫌いだ。だが、唯一気に入ったゲームがあった。名前はディメンション・ロード。武器や防具、技や魔法、ジョブの熟練度を上げたり、仲間の友好度を上げたり、武器や防具を合成したりなどやることが多すぎて一般ではクソゲーとされていたが、巧はかえってそれが気に入っていた。バグは存在しないが、幾つか裏技が存在しそれを発見するのも好きだった。

(まあ、そのうち目も覚めるだろう。)

巧はそのままベッドに潜り込み眠りについた。

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