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009 さっそくお仕事開始

 昨日、奏さんからもらったお金を手に、駅前にあったスーパーへと向かう。都心の一等地にある場所柄、スーパーも高級品を扱う店だった。普段、買わない値段の野菜に気後れする。でも、買わない訳にいかない清香は、奏さんにお願いされた和食を作るべく、買い物かごに食材を入れて行く。

 レジでお会計を済ませた清香は、その金額に驚いてしまったけれど、素直にお金を払った。自分の買い物は、遠くてもいいから絶対に安いスーパーを探そうと心に誓う。それくらい、普段自分が使っているスーパーとは価格帯が違っていた。


 一度、103号室の自分の部屋に戻って、電気が通っていることを確認する。確認したら水道も使えた。ただ、ガスだけは立ち会わないといけないので、午後の予約を取ってある。

 前に住んでいた住人が置いて行った、大きな冷蔵庫の中に、買って来た食材を入れて外してあったコンセントも差し込んだ。扉を開けると、中の電気がついたので動作確認もでき安心する。


「こんなに立派な冷蔵庫なんて贅沢。キッチンも作業台がしっかりあるし、コンロも三口だし、蛇口なんて手をかざしただけで水がでるオートだし、本当に凄い!」


 電気とガスが利用できることを確認した後は、持って来た旅行鞄を開けて荷解きをする。やるべきことを終えた清香は、そろそろ十時だと腰を上げる。次は、星志君の家に行く時間だ。


 星志君の家のインターホンを押すと、今日も扉がすぐに開く。


「おはようございます。土田で……うわぁぁぁぁぁ」


 出て来た星志君の姿に驚いた清香は、驚いて声を上げてしまう。咄嗟に顔を背けて、顔を手で覆う。だって星志君は、上半身裸でタオルを首から下げ、頭を拭きながら玄関に出てきたのだ。

(なんで成瀬さんといい、裸で出てくるの!)

 清香は、心の中で叫びつつ赤面する顔を仰ぐ。


「びっくりするだろう。いきなり大声だすなよ」

「す、すみません……。でも……」

「はぁーまぁ、いいや。中入って」

「はい。失礼します……」


 清香は、星志君の裸を見ないように中にはいる。さっき見てしまった体は、細身なのにしっかりと引き締まった綺麗な体だった。さすが人気アイドルと思ってしまったのは内緒だ。

 リビングまで入ってくると、今日はテレビがついていた。大画面のテレビがついていると、ついついそこに目がいってしまう。CM中だったテレビに、星志君の顔がアップで映る。どうやら、飲料水のCMみたいだった。


「あっ、あの、星志君ってアイドルだったんですね。びっくりしました」


 清香は、テレビを見ながらそう言うと、自分が写っていることに気付いた星志君は「ああ」と納得が言っている。


「人気アイドルも知らないなんて、遅れすぎだろ」


 星志君は、どこか得意げな顔で清香を茶化す。


「成瀬さんのお宅で突然テレビに映ったから、本当にびっくりでした。歌っている星志君、きらきらしてて格好良かったです」


 清香が尊敬の眼差しで星志君を見ると、まんざらでもなさそうな顔で「そうかよ」とぼそっと呟く。機嫌を直してもらったことに安堵するが、いい加減服を着て欲しい。さっきから、どこを見ていいのかわからずに視線が泳いでいるのだ。


「とりあえずさ、今日は洗濯してくれる? 俺は、もう仕事に行くから。あと、時間があるなら掃除機も、昨日と同じように掛けて欲しいんだけど」

「わかりました。食事の準備とかは大丈夫ですか?」

「今日はいい。夜も約束があるし」

「かしこまりました」


 清香は、ぺこりとお辞儀をすると、自分の部屋から持ってきたエプロンを取り出して素早く身に着ける。よしっと気合を入れ、さっそくランドリー室に向かう。このテラスハウスには、立派なランドリー室があり洗濯をするのがちょっと楽しみだったのだ。

 中に入ると、ドラム式の洗濯機とその上には乾燥機が縦に並んでいた。洗濯機の横には、アイロンをかけたり衣服を畳むのに使用するのだろう机も完備されている。

 天井には、洗濯物をかけるためのポールが設置され家事同線は完璧だ。壁の上部には明り取りのための、横に長い窓があって室内はとても明るい。突き当りには勝手口のような扉があって、試しに清香はドアを開けた。

 そこにはウッドデッキがあって、洗濯物を干せるようになっている。晴れで天気が良い日はこっちに干した方が、早く乾かせそう。


「本当に素敵なお家だなー」


 清香は嬉しくなって呟く。しっかり働こうと改めて感じ、洗濯機へと戻る。洗濯機の中を見ると、昨日入れた筈のシーツが入っていなかった。星志君が自分で洗ったみたいだ。

 ランドリーバックから洗濯機に衣服をどんどん入れていく。お洒落着はネットに入れるが、夏だからかTシャツなどが多い。

 そして、ある物を手にして止まってしまう。男物の下着が出てきてしまったのだ。それを見た清香の顔は、またしても赤面だ。すぐに洗濯機へと投げ入れ、見なかったことにする。


「昨日からこんなのばっかりじゃーん」


 自分ではドキドキなんてしたくないのに、勝手にドキドキ案件ばかり巻き起こる。大丈夫、これはただ単に男性慣れしていないからだから。きっとすぐに慣れるから。そう考えた清香は、無我夢中で洗濯物に取り組んだ。


本日、二回更新あります。

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