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これ、デートでしょ

優花の世界で。

「荷物持ってくるからここで待ってて」


優花に言われてその場で待つシルマ。

頭の中で、

「なぜ天使のシャワーが効かない」

と思案する。


でも、「天使のシャワー」で優花が交流大使だった時の記憶を思い出したとしても、

それは束の間のことだ。

自分のここでの滞在時間が過ぎれば、また記憶は消えていく。


それなら、留学生のシルマとして優花の記憶に残りたい。

そう思い始めていた。


「お待たせ。じゃ行こう」

しばらくして優花がバックを持って戻ってきた。


歩き出した優花について行くシルマ。

どうやらこの敷地から出るようだ。


「どこに行くの?」


「このあたりのお店でも行こうか、ここらへんにはおしゃれなお店がたくさんあるんだよ」


優花の隣で歩きながら周囲を見渡すと、確かになんだか人気のありそうな店が並んでいる。

こちらの世界、なかなかにぎわっているじゃないか。


優花がある店の前で止まった、

「まず、ここは入ろう」

そう言って、中に入るとそこには幾つかのテーブルが並んでおり、

静かな音楽が流れていた。


そのうちの一つの丸いテーブルに向かい合って座る二人、

「じゃ、私はケーキセット、紅茶とチョコムース、シルマは?」


いつの間にかメニューを見て、いつの間にかテーブルの側にいた店員に注文している優花、


「じゃ、同じで」

言語自動変換魔法が全く追いつないシルマ。


「ケーキセットってなんだ」

内心、ここが何で、何が出てくるのかもわからなかった。


しばらくして、二人の元に紅茶とケーキが運ばれてきた。

これは、知っている、甘いお菓子と飲み物だ、シルマは少し安心した。


「さっき飯食ったばかりじゃない?」

先ほど、カップ麺を完食したばかりの優花、また食べ物かとシルマは思った。


「甘いものは別腹、知らないの?

それに私、あなたの事よく知らないから、まずは少し話がしたいなって思って」


「じゃ、自己紹介でも」

シルマはそう言って、ねつ造した自分の話をした。サラっと、少しだけ、そして

すぐに、

「次は、君の事が聞きたい」

そう優花に話をふった。


「私ね、中学生くらいまで難病にかかっていて、入退院を繰り返しいたの、

奇跡的に治療方法が見つかって、病気は治ったんだけど、

今こうして大学生になっていることが夢みたいなんだよ」


「それは、お前が望んで叶えたことだ」

シルマは心の中で言った。


「病気だったころは明日がどうなるかわからない、だから出来ることは出来るときにやる、

そう思っていて、それは今でもそうなんだ。

いつも行動早いねって言われるんだよ」

そう言って笑う優花。


後回しがお得意の、ペア(バディ)の誰かさんに聞かせてやりたい。


優花は自分の事、家族の事、これからの夢、たくさんの事をシルマに話した、

まるで前からの友人に会っているかのように。


「病気だったころ、よく昏睡状態になったの、その時必ず夢を見ていた。

いろんな世界に行って旅をする夢。魔法使いになった夢もみたんだよ」


優花の夢、としてまだ覚えている。

シルマはなんだか嬉しくなった。


「ねえ、シルマの事も話してよ、さっきから私ばかりしゃべってる。

写メとかないの?」


優花に言われて、念のため準備しておいたスマホを取り出すシルマ。

スマホに表示されるのは優花に見られても差し支えない画像ばかりだ。


楽しそうに覗き込む優花。

かつての優花からは、なんとなく消毒液のにおいがしたが、今では香水なのか化粧品のにおいなのか、

甘いいい香りがしていた。


画像を見ていた優花が、

「あれ、このマーク」

と声を上げた。


そこには西の魔法学校カムイの制服を着たシルマが映し出されていた。

制服の首元にカムイの校章が付いている。


「私、これ知ってる」

そう言いながら自分のバッグをあさる優花。


そして取り出したのは、

シルマが優花との別れ際に手渡した、第2ボタン、だった。


「ほら、同じマーク。

これ、私が退院するときに何故か持っていたの。

それからずっとお守りみたいにいつも持ち歩いているんだよ」


その第2ボタンからいまだに魔力が発せられていることにシルマは気付いた。

しかし、これは癒しの力、優花を守る力だ。


「自分の国では、学校の校章はすべて同じ、だから誰かファンワールドの学生のものかもしれない、

そのボタン、持っているといいことがあるって言われているからこれからも持っていてほしい」

シルマは咄嗟にこう言った。


「そんなんだ、なんかこれ持っていると安心するんだよね、だからずっと離さずにいたの」

優花がボタンを眺めながら言う、


「でも、これがボタンってなんでわかったの、私にはボタンには見えなくて」


確かに、この世界でのボタンとは少し形状が違う。

一目見ただけではボタンとはわからない。


「いや、母国のものだからすぐにわかるよ」

と、ごまかすシルマ。


それからも話は尽きることはなく、二人は話し続けた。


「なんか、あなたのこと、前から知ってるみたい」

優花が言う。


あの旅の途中、優花とシルマは何度か二人で話し込んだ。

その頃と変わらない、たわいもない会話。


「なんか、私たちデートしてるみたい。

そう思わない?」

優花が笑いながら言った。


「デートか」

シルマの自動変換魔法が、

「互いに好意をもった男女が、外出を楽しむこと」

と表示した。


互いに、好意をもった。

その言葉にシルマは有頂天になるのがわかった。


「ここでも、優花は俺にぞっこんだ」


しかし、別れの時間は刻刻と迫っていた。




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