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DGエンジェルズ あなたは、天国を目指せますか? ー地獄から脱獄した咎人と戦う魔法少女の生を追い求めるための戦いー  作者: 瀬名川匠
七章 もう戦わない! クライム&パニッシュ! って今度はこっち!?

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第十八話 超能力者

「ん?」

「なに?」


 ≪人間≫達は、その音の事をこう称している。蛇がのたうち回るような音。何か大きなものが引きずられるような音。それから、この世の物とは思えないような悲鳴に聞こえると言う者もいた。

 そして、ある物は≪幻視≫という言い訳によってその姿をも観ていたと言う。

 そう、トガニンの姿を。しかし、そのトガニンは地面を這いずり回っていて、すぐさま死角に入ってしまって視界から消失してしまったため、ソレがこの世のものではないと言う事に気がつくのもできなかっただろう。

 そして、ソレがこの世を守る人間達の新たなる仲間によるものであることを、知ることができる人間など、いなかったのである。


「超能力者の天使!?」

「はぁ、はぁ、そんな子もいるの……!?」


 と言いながら走るのは牟六、鳴、そして幽霊の姿となって飛んでいるララとホコリ、その上にはカナやミズキ等天使達の姿があった。

 その途中で、牟六達は聞いた。超能力を操る天使がいる、と。


“その子の名前は港郁。この前の地獄門事変の最重要人物よ”

「あの事件の……!?」


 あの、ララ達から後日聞かされた重大な事件の最重要人物が、超能力者だったのか。牟六は、驚きながらも聞く。


「それで、その子がなにしたの!?」

“えっと、話は長いんですけど、そもそも事件の発端は前世は催眠術師のトガニンで……”

「そっちじゃなくて今!」

“ヒッ、ごめんなさい!”


 と、過去の話を掘り返そうとするララに向って、牟六が怒鳴るように叫んだ。別にここで彼女に叫んだところでどうとでもなるわけないと言うのを知ってはいたが、何だろうか、もう何十メートルも走らさているが故の怒り、とでもいおうか。

 ともかく、その子が今回のこの事件の一体何に関わっていると言うのか。

 少し怯えた形になっているララに変わってホコリが答えた。


“ミナトの超能力はね、死んだ後も使えるらしいの。その力を使って送迎班の天使も追っ払ってこれまで成仏、つまり天に行くことも拒んでいたんですって”

「天に行くことを拒むって、どうして?」


 という鳴の疑問に対して、ララや一部の天使は苦笑いをし、ホコリは頭を抱えた様子で言う。


“輪廻転生で違う自分になるのが嫌だった、そうよ”

「へ?」

「それってつまり……」

“駄々をこねたって事。生まれ変わるのも、天国や地獄に行くことも拒否したの、結果彼女は地縛霊となってこの街のあちらこちらで過ごしていたそうよ”


 ホコリは駄々をこねた、と言うがしかし牟六や鳴にとってはそれは当たり前の反応、というような気がした。

 そもそもの話、今の自分とはまた違う別の自分になると言う感覚がどういう物なのか、そうなったことがないためによく分からない。

 自分が持っている記憶、それが全部がいい物であるとは限らないが、しかしそれでも全て悪い物ではないと断言できる。

 自分の持っている記憶、経験、そして感じた思い。ソレら全部が、自分という人間を形作っている。そう断言していいのかもしれない。

 けど、もし死によってそれらが全部リセットされてしまったら。もし自分という記憶を失ってまた別の自分になってしまうことになったら。もしも、今の自分とは全く違う人間になってしまうとしたら。

 そんなの、恐ろしすぎる。だから、その子もまたソレを危惧して天に昇ることはしなかったのだろう。輪廻転生と言う輪に乗って、別の人生を歩むことを拒否したのだろう。二人はそう考えていた。

 そして、ララもまた同じくそうだと思っていた。

 自分の人生だって、順風満帆であったわけではない。父を早くに亡くし、友達を助けなかったと言う罪悪感に苛まれ、そして突如としてその命を奪われると言うこの人生の経験は、全てやり直したくなんてない記録。でも、その記録が自分を形作っている。自分という存在を城道楽楽という一個人にしてくれている。

 そんな記憶を失う覚悟何て、ないに決まっている。もしかしたら、それが理由なのかもしれない。彼女が、生き返りたいとそう、願った理由の一つに。


“まぁとにかくそんなこんなしている時に例の事件があって、天や地獄の存在、それに天使の存在しって、その子は天使になって天国に行けば輪廻転生の輪から外れられるって、閻魔大王に天使になることを直訴したそうよ”

「そ、それはまた随分……」

「自分勝手というかなんというか……」


 自分の欲望を果たすためだったら天使と言う神聖なる職業すらも利用する。この辺りの豪胆さ、どこかライクやホコリに似ているような気もするな。そう二人は考えて居たような。


“とにかく、その子の超能力は天使になった後も使えるみたいでね、その子は独自に送迎班の天使としての役割を果たしていたそうよ!”

「超能力を使った送迎班の天使としての役割?」

『幽霊釣りよ』

「……へ?」


 幽霊釣り、なんか不穏な言葉がミズキから聞こえてきたのだが、一体なんだその不吉極まりない言葉は。


『つまり、その子は霊体で作った釣り針と糸と釣り竿に超能力を送って、近くにいる幽霊を釣り上げてるの。そんなの、普通の天使にはできないわ。おかげでこの街に残っていた幽霊十数体を天に送ることに成功しているけどね』


 つまり、幽霊釣りというのは、その子が超能力を使うことによって近くにいる幽霊をひっかけて、釣り上げるという、遊びの様で実は仕事である、という事なのだろうか。

 というか、だ。


「霊体で作った釣り竿って、そんなのできるの?」

『あの子は元々超能力者だったから普通にできるけど、天使になった私たちも少なからず……生前のイメージを具現化して……』


 というと、ミズキの目の前には割れたビール瓶の上部分が現れた。ソレを手に持ってミズキは。


『ほらできた』


 と微笑んだ。牟六と鳴はそれに対してどう反応するべきか困った。なぜなら、話に聞いたところによると彼女の直接の死因となったものは溺死、であるがそもそもの原因は―――。

 ソレを考えると、飛んだブラックジョークである。


「と、とにかくその子はその釣り竿にさらに超能力を掛け合わせることで幽霊を釣ることができるってことだよね!?」


 このジョークをさらに引きずるわけにはいかない。そう考えた鳴により無理やり話を転換させようとする。すると、ミズキはビール瓶を消して不満そうに言う。


『そう、でもその子にとっては幽霊は小物らしいわ』

「小物? それじゃ大物は……」

“決まってるわ……そんなの”


 その時だった。


≪グオォォォォォォォ!!!!≫

「!?」

「あの、咆哮って……まさか」

“だいぶ近づいたようね”


 そう、小物が幽霊だったら大物は、トガニン。彼女の幽霊釣りの目的は確かに成仏できずに現世の世界に残っている幽霊を回収する事。しかし、それと同時に彼女はその力を用いてトガニンを釣り上げることも可能であるのだ。

 見つけると、自動的にその身体に括り着き、自分の元へと寄って来させるそんな釣りが。

 ともかく、咆哮の大きさから言ってトガニンが近いのは間違いない。ララは牟六や鳴の前に出ると言った。


“二人はここで待っていてください”

「え、でも……」

“二人を巻き添えにしたくありません。ここからは、私たち。エンジェルズの出番ですから”

「……」


 牟六は、その言葉に残念そうに顔を背けるだけだった。

 そう、例え自分達が駆け付けたとしても何のメリットにもならないことは承知していた。自分たちには、彼女たちの戦いの力になることができないと、そう理解していた。でも、それでもトガニンが≪ミナト≫という幽霊の釣り針にかかったことを察知したカナたち天使や、その後をついて言ったホコリたちを放っておくことができなかった。

 だから、彼女たちは自分たちに何もできないことを承知で、邪魔になることしかできないことを理解したうえで、着いてきた。ただただ、彼女たちの正義感が勝手に体を動かしてしまっていたのだ。残念なことに。


“そう言う事、と言っても……ライクが来なかったらララちゃん一人に任せるしかないけれどね……”

“……”


 その言葉を聞いたララは唇をかみしめて、覚悟を決めた様相を見せた。いまだにどこに行ったのか分かっていないライク。もしかしたらこの咆哮を聞いてこちらに向かっている可能性もあるかもしれない。だが、そんな彼女を待っていたらどれだけの被害が出る事か。

 ミナトの釣り糸も、普通の釣り糸と同じように耐久性という物がある。いつまでもトガニンを縛っておくことはできないはずだ。だから、せめてララだけでも現着しなければならない。

 こうなった時、自分とライクのエンバーミング・グロスが二人一組でなければ使用できない制限が煩わしくなってくる。

 そう、ホコリが思った瞬間だった。


“ッ……”


 頭に浮かんだのは、あの事件の時に一緒に戦った少女たちの顔。そして―――。


『行こう、パニッシュ!』


 別れた後、非常に清々しい顔を自分に見せる、ライク、クライムの姿だった。

 そして、その猛々しい姿は―――。


“ハァァァァァァァ!!!!”

“え?”

『あれって……』


 今もまた、目の前に。

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