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3話「そして鳥は導いた」

 僕は彼によって街に連れて来させられた。

 そして、僕達が居る街の名前は“翔天”。僕が滅ぼした国の街だ。

「うっわあ、人っ子一人居ねえや」つまんねえの。彼は呟く。

 確かにこの街には人気が無く、空気が澱んでいる。敗戦国の街というのはこんなにも……

「僕が……滅ぼしたから……」少し居心地が悪くなった。初めて、敗戦国の街に来て、自分がした事に罪悪感を感じた。

「そうだ。これはお前がやったことだ」彼の言葉はあまりにも的確で、僕は胸が痛んだ。

 二人はそれ以来話すことなく、街を歩いていた。すると、

「ちょいとそこのお二人さん」上から女の声が聞こえた。声の主は屋根から飛び降り、僕達の目の前に姿を現した。

 長く黒い髪を後ろで一つに括り、黄色い民族衣装のような、ゆったりとした服を着た十代半ばぐらいの少女だった。

「何の用だ?」彼が少女に問いかける。

「あんた達どっから来た?」少女は彼ではなく僕の方を見て言った。

 僕は目を逸らし、代わりに彼が答えた。

「瞑雲と翔雲が戦をしてた所からさ」瞑雲、という言葉に少女は反応した。

「あんた達瞑雲の人間か?」少女の表情が険しくなる。

「んー、今は瞑雲に居るけど……元々は翔雲に居た」彼は表情を一切崩さず薄く笑みを浮かべて言った。

 少女はその言葉に目を見開き、途端に戦闘態勢にはいり、後ろに差した短刀に手をかける。

「おいおい、俺達はここに戦いに来たわけじゃあない」彼は笑みを浮かべたまま困った表情で手を挙げ降参のポーズをとる。

「あんた達が翔雲を滅ぼした! あんた達の所為で父様が!!」


 この少女も……あの男と同じ……。僕は……


「おいおい、まじかよ……」

 少女は短刀を構え、彼めがけ走る。



   ザク、と肉を斬る鈍い音が聞こえた。

 地面に血が滴り落ちる。


「ちょっとあんた何してんだよ!」少女が叫ぶ。

 彼に向けられた短刀は庇って前に出た僕の腹部に刺さった。短刀は引き抜かれ、傷口から血が溢れ出す。

 僕は短刀が引き抜かれると同時に意識を失った。

「おい奏鬼! しっかりしろ!」意識を失い、力の入らなくなった奏鬼の身体が倒れる寸前、紅典が奏鬼の身体を抱き寄せた。



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