第1話 森のウサギ
「ここは...?」
気が付くと森の中にいた。見たことがない森だった。
自分が何故ここにいるのか思い出せない。
「俺は確か・・・死んだ?」
考えていると森の中から叫び声がした。
「誰かーー!助けてーー!」
若い女性の声だ。何かしらの情報が手に入るかもしれない。
声の聞こえる所に向かうと非常に驚いた。
「うさぎ...人間?」
人の形をしたウサギが植物の化け物に食べられようとしている。
どちらも見たことない生き物だ。自分は何処に来てしまったのか?
「そこの人‼助けてください‼何でもしますから‼」
切羽詰まった状況の様だ。
「承知した」
ウサギ人間に絡みついた根っこの様なものを引きはがそうと近付くと、他の根っこがこちらに襲い掛かってきた。
自分も食べるつもりなのだろう、捕まるわけにはいかない。
「凄い・・・」
無数の根っこを避けているとウサギ人間が一言発した。
だがそんな事はどうでもよく男はこの状況に興奮していた。
「もっと・・もっとだ!俺を捕まえてみせろ!」
このままずっとこの植物と戯れていたかったが、植物がウサギ人間を食べようとしていた。
仕方がないのでウサギ人間に絡みついている根っこを引きちぎり、うさぎ人間を抱え植物の化け物から逃げ出した。
「あの・・本当にありがとうございました」
安全な場所にウサギ人間を降ろすとお礼を言われた。
見れば見るほど不思議だ...人型のうさぎ...しかも服まで着ている。
「いや・・・気にするな」
「お前は人間なのか?」
うさぎ人間はキョトンとしている。
何か変な事を言っているのかもしれない。
「いや...すまない。実は記憶喪失で自分が何故ここにいるかも、この世界の事も何も覚えていないんだ」
こういう時は正直に言うより嘘をついた方がいいだろう。
「そうでしたか!すみません。」
「私はハナベ。ラビ族です。そしてここはベベリの森です。」
「この森は先ほどのような危険な生き物の多い森で、レベルの低い者は殺されるか食べられてしまいます」
「お前の様な?」
「あはは、そうですね。私にもまだ早かったみたいです。」
「入りたいギルドの参加条件が先ほどの生き物、スケアリーグリーンの討伐だったんです。」
「でもあなたは素手で触手を引きちぎり、全てを回避していた。」
「おそらくレッド級以上の実力があるんじゃないかと思います。」
「レッド?」
「レッドとはギルドの定める階級の事ですね。一番下がグレー級、上がパープル級でレッド級は上から5番目になりますね」
「そうだ!ギルドの街に行けばあなたの・・・ええと」
「すいません。まだ名前を聞いていませんでした」
「ニンジャだ」
「ニンジャさんの情報があるかもしれませんよ。」
「先ほどのお礼に私が案内します!行きましょう」
情報などある筈がないのだが、この世界の事を詳しく知ることが出来そうだ。
「よろしく頼む」
「はい‼」
ラビ族のハナベは嬉しそうに返事をした。
一体この世界はなんなのか?
何故自分がここにいるのかをニンジャはギルドの街に向かいながら考えていた。