第二章その4
「あったあった……ここで働いて下さい」
「え? 働け? ここで……?」
ナユタが連れてこられたのは、酒場の前だった。
一見すると、高級という程ではなさそうだが、かといって場末といった感じでもない、ごく普通の酒場だ。
もっとも、田舎者を自認するナユタの印象ではあるが。
「この酒場で働けって? 大丈夫なのよね? 見た目は普通の酒場だけど、裏ではいかがわしい商売をしている、とかじゃないわよね?」
「ナユタさん、店のご主人に失礼ですよ。まっとうな商売をなさっているのに」
ルイスが苦言を呈する。
「えーと、なになに……? 給仕求む……? 住み込み可……?」
ナユタは壁の貼り紙にぐっと顔を近付けて読み上げる。
「おや? 字が読めるんですか?」
「うん、まあ何とかね。うちの村では何人かしか読めないけど」
ナユタは答える。
「まあ行ってみるけど……そもそも雇ってくれるかな?」
「大丈夫ですよ。ここのご主人は優しい方ですから、野盗に襲われて逃げてきたって正直に言えば雇ってもらえますよ」
「はあ……本当かしら……?」
ナユタはもうどうにでもなれ、という気分で酒場のドアを開いた。