第二章その3
「すごい! 人がいっぱい!」
ようやく街に着いたナユタは子供のようにはしゃいでいた。
石造りの建物がひしめく通りの両側には露店が軒を連ね、買い物を楽しむ人々で賑わっていた。
小さな村に生まれ育ったナユタにとって、目に映るもの全てが初めて見る新鮮な風景だった。
「ねえアリス! これ美味しいよ! 食べてみて!」
「いや、私は必要ない……」
「ナユタさん、あんまりはしゃがないで下さい。いかにも田舎から出てきたお上りさんですよ?」
「いいじゃない。お腹空いてたし、こんな美味しいの初めて食べるし! ……ねえアリス、これ何?」
「海で採れた貝殻で作ったアクセサリーね……」
「海……見た事ないけど聞いた事はある! いつか行ってみたいなあ……」
「ああもう……手が付けられない……」
ルイスは呆れ顔でため息をつく。
「ナユタさん、そろそろ行きますよ。遊びに来たんじゃないんですからね?」
「ああ、ちょっと待って! あのパンも美味しそう!」
「はあ……」
「………」
嬉しそうなナユタを、アリスは目を細めて眩しそうに見ていた。