第2話 実は
昇降口へと行き、2人は外用の靴へと履き替える。健太が先に行き真由美を待った。付き合っている訳でもないのになぜ一緒に帰ろうと言ったのか真由美は自分でもわかっていなかった。ただ、健太の事が気になっていただけで、好意は今の段階では無かった。真由美は靴を履き替え健太の元へと向かう。
「ごめんね。待たせちゃった」
「あ…ううん。大丈夫。行こっか…」
2人はほぼ同時に歩き出し、高校の正門へ向かう。正門の近くには駐輪場があるがそこにはほとんど自転車は無い。2人は徒歩通学で自転車は家にはあるが通学には使っていなかった。正門を抜け学校前の歩道を2人は並んで歩いていた。
2人は並んで歩いているがお互い話しかけたりはしなかった、というよりも話しかけられなかった。学校前にある田んぼの横の歩道を進む2人。無言のまま信号のある交差点へと着いてしまった。押しボタンを押し、しばらくして歩行者用信号が青に変わり2人は渡る。
「健太くんって、家、どっち?」
「え?あー…こっち」
真由美が差している方向とは逆の方向を指した健太。健太と帰る方向が一緒で心の中でガッツポーズをした。しかしうまく話すことが出来ていなく、内心ムズムズとしていた。
車の通る数もまばらになるこの時間帯。田舎ともありこの時間帯は人すら歩いていない。そんな中2人は並んで歩いて行った。小さな橋を渡りちょっとした住宅街に2人は入って行った。
「健太君の家ってこの辺なの?」
「うん…。 この辺だけど…なんで?」
「私の家も…近いの。もしかしたら隣?」
「え?もしかして、あのオレンジ色の?」
「そうそう!もしかしてその近く?」
「確か、斜め右くらいだった気がする…」
2人の家がかなり近い事を、2人は今知ったのだった。健太は部活に入っておらず真由美も生徒会などがあり2人は今まで会う事は無かったのだった。
謎の親近感を感じた真由美。思い切って健太にある事を質問した。
「健太君ってさ。今、付き合ってる人とかっているの?」
「え!?つ、付き合ってる人!?い、いるわけないじゃん。出来た事もないし…そもそもなんでそんな事聞いてくるの?」
2人は歩いているうちに、2人の家のある住宅街に来てしまっていた。近くに田んぼもあり虫の声が所々から聞こえて来た。
「え?それは秘密!じゃあね〜!」
真由美は微笑みながら健太の方を見て、そして小走りで自分の家へと走って行った。まだ、告白をするタイミングでは無い、そう思っていた。
健太はそれを少し驚きながら見ていた。離れて行く真由美に手を振り2人はそれぞれの家へと向かって行った。