まるで日本代表・・・ってだけでない
宮崎県内でキャンプに打ち込むアガーラ和歌山は、Jリーグの新しい風物詩といえる「サウスカップ」に臨んだ。宮崎、鹿児島、沖縄といった各地でキャンプを張るクラブ同士がプレシーズンマッチである。和歌山と戦うのは大宮、千葉、栃木の3クラブ。カテゴリーの垣根を越えてぶつかり合うので、ある意味シーズンよりは面白いかもしれない。
さて和歌山の所詮は「今年こそ・・・」と言い続けて、未だJ2から抜け出せない千葉と戦う。
GK1天野大輔
DF38結木千裕
DF3内海秀人
DF50ウォルコット
DF19寺橋和樹
MF2猪口太一
MF10小宮榮秦
MF15ソン・テジョン
MF5緒方達也
FW9剣崎龍一
FW16竹内俊也
試合会場に和歌山のスタメンがアナウンスされると、集まった観衆はどよめいた。実に7人がリオ五輪の本選メンバーであり、2トップの剣崎と竹内、復帰した結木と移籍加入の内海の4人に至っては現役のA代表メンバーだ。その驚きは千葉の選手も同じで「おいおい・・・。俺達は日本代表と試合でもすんのかよ」と絶句する選手もいた。
なにより周りを驚かせたのが、メンバーの連携の良さだった。早くもDFリーダーの地位を確立した内海が的確なラインコントロールを見せ、結木はソンとの好連携を見せてサイドを制圧。攻撃面も小宮が2トップを自在に操り、剣崎と竹内が面白いように決定機を迎える。元々の質にこの時期では桁違いの完成度を見せた和歌山は、前半だけで4得点(剣崎2、竹内、猪口)を挙げた。
選手交替の制限が5人と、通常のリーグ戦より緩いこの大会で、和歌山は後半はこんな面子に切り替える。※カッコ内は交代選手
GK1天野大輔
DF38結木千裕
DF3内海秀人
DF4エデルソン(ウォルコット)
DF40吉原裕也(寺橋和樹)
MF17近森芳和(猪口太一)
MF10小宮榮秦
MF18塚原直人
MF5緒方達也
FW9剣崎龍一
FW11櫻井竜斗(竹内俊也)
さらに移籍組を投入して臨んだ後半。さすがに攻撃の組み立てや、マークの受け渡しでミスが見られたが、天野が冷静なコーチングとセービングでカバー。さらに内海のロングキックが剣崎と櫻井のゴールを呼び、最後はエデルソンがセットプレーで得点を挙げてみせ、千葉相手に7−0と完勝してみせたのだった。この結果に、特にマスコミは大いに興奮。翌日のスポーツ紙には「あるぞ、和歌山タイトル」と、優勝のダークホースとして持ち上げられた。
挨拶がわりに千葉をたたきのめして中1日。栃木との試合では、メンバーをがらりと代えた。
GK25野本淳
DF38結木千裕
DF20外村貴司
DF23沼井琢磨
DF19寺橋和樹
MF2猪口太一
MF31前田祐樹
MF46脇坂レイモンド
MF5緒方達也
FW9剣崎龍一
FW33村田一志
ズラリと若手で固めてきた布陣に、栃木サイドは「明らかになめられてる」と憤ったらしいが、だからといって和歌山の若手は単なる若手ではない。緒方、前田、村田の三人は、高卒ルーキーだった昨年は二桁以上の試合に出場し、特に緒方はあの栗栖をベンチに追いやって左サイドのレギュラーとなった逸材だ。寺橋にしても長らくチームのアキレス腱だった左サイドバックの一番手として奮闘しており、単なる若手よりも遥かに実戦慣れしていた。
「タツ!」
ゴール前で剣崎はクロスを要求。緒方は相手を切り返して鋭いクロスを放つ。要求通りのボールが来て剣崎はそれを頭で押し込むがクロスバーが跳ね返す。だが、こぼれ球を村田だ素早く回収してキープする。
(ぬぐぐ、誰か来てくれ・・・)
「ヘイ!」
そこに脇坂がフォローに駆けつけ、ボールを受け、それを狙いすましてループシュートを放つ。
村田のボールを奪わんと人が集まった結果、キーパーには脇坂のボールは死角から突然飛び出したように見え、反応できずに棒立ち。鮮やかに決まった。
「ナイスキープ!セカンドもよく拾ってくれたぜ〜」
ラテンの血が混じってる脇坂は、はしゃぎながら村田を称えた。
一方でベンチから一連のプレーを見ていた菊瀬は戸惑っていた。
(あ、あれが高卒2年目かよ・・・すげえ落ち着いてるじゃん。とんでもないとこに来たかもしれねえな)
前半途中には、前田が直接フリーキックを叩き込み、2−0で後半に臨む。
GK25野本淳
DF38結木千裕
DF50ウォルコット(外村)
DF23沼井琢磨
DF32三上宗一(寺橋)
MF2猪口太一
MF8栗栖将人(前田)
MF46脇坂レイモンド
MF7菊瀬健太(緒方)
FW9剣崎龍一
FW16竹内俊也(村田)
この大型補強が行われた中で、生き残りをかけて並々ならぬ気迫を見せているのが、猪口だった。
昨シーズンは、開幕からレギュラーでプレーし、オリンピック本戦にも出場したが、帰国後はユースの二学年下の根島雄介(今季から京都)の台頭でベンチに追いやられてしまった。
迎えた今シーズンも、ボランチやセンターバックにライバルが大量に加入し、ベンチに入れるかすらわからない状況で迎えた。
だからこそ、この実戦の機会に、ここぞとばかりにアピールする。
「だっ!」
「うお!?」
自分よりも一回り大きい選手に身体をぶつけながらボールを奪い取る。そしてそのまま前線に蹴り出す。裏を取った竹内にボールは届き、ゴールに繋がった。
試合では再三のインターセプトと執拗なマーキング、さらにはカウンターの起点としての展開力もアピールするし2点に絡んだ。
(今年は絶対にレギュラーを取り戻してやる!)
猪口の眼光は鋭かった。




