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序・新人操者の初任務7





そそくさと家から出たミライだったが、森にでも行けばと言われたものの、どうしようかと思案していた。出来れば明日ゆっくり散策したいんだよな。


「お兄ちゃん変な服着てるね~」

「ん? これは隊員服で、主な仕事中はこれを着ているんだよ~」


ボーっと歩いていると、子供に絡まれた。平和な村なのか大分人懐っこい。まあ、この村に外部の人が来る機会自体少なそうだが。


「私も着てみたい!」

「あー、サイズが合わないから大きくなったら着ようね~」

「む、頑張る!」


変な服と言っておいて着たがるのか。子供の気持ちはミライには分かりかねる。周りに同じくらいの子供も大人もいないが、この子はここで一体何をしているのか。


「ところで、お友達とかと一緒じゃないの? 買い物とかの途中かな?」

「これは監視任務の途中なんだよ! 変な人が来ないように見張ってたんだけど、誰もいないから変な人を探しに来てたの!」


変な人……変な服を着てるから人ってことだろう、ととりあえず自分を納得させる。それにしても、監視任務ならきちんと見てなきゃダメだろう。


「ところで今は何かを監視してなくて良いのかな? 変な人を探しに来てる間に盗まれちゃうかもよ」

「盗まれる事はないから大丈夫! そもそもレティ姉ちゃんの物じゃないもの!」


なんとなく命令した子の名前が分かったな。


「それより、人の物の見張りを頼まれてたの?」

「そうだよ! 変な服の人が乗ってた大きい機械だよ!」

「えっ」


一応中には入れない仕組みだが、レティ? って子が一体何をするか分からない。ミライは物事がめんどくさくなる前に原因を解決しようと決めたのだ。


「監視任務ごくろうさま! 俺はこっちに変な人がいないか捜してくるよ! 変な人に着いていかないようにね! バイバイ!」


見知らぬ村で道をダッシュするのは気が引けるけど、気にしてる場合じゃない!


「ありがとね、変なおにーちゃーん!」


ちょっと凹む声援。

機体の状態を確認しに来たが、幸いもともと大きい村でもないからすぐに着いた。とはいえ、服がベトついて気持ち悪い上に着替えも無い。

問題の二機を見ると、近くをうろちょろしてる女の人がいる。


「あの、不用意に近付かないでください」

「うわ! あーもう、ソウったらちゃんと見ててって言ったのに……」


機体に近付いて見てもいたずらされた様子は無さそう。まあ、インスヴァイトは普通の人は開けられないから当たり前だけど。


「いや、あの年齢じゃ監視は無理でしょ」

「ソウちゃんしか近くに居なかったの!」


よくよく見ると彼女は思ったより大人びた風貌をしている。二十歳位か。ソウちゃん八歳くらいだったぞ……


「ところで何歳くらい離れてるんですか?」

「女の人のに年を聞くなんてね」

「あっすいまーー」

「二十三よ」


謝るのに被せて呆気なく答えられたけど、ミライよりは年上だった。キャップ帽を被ってるけど、肩まで露出してるので日に焼けて褐色だ。確かに身長も高い。


「ねえねえ、お姉さんを見とれてたの? 坊やがこの機械を開けてくれるなら、いいことしてあげるよ~?」

「見とれてませんよ! それに自分は十八なので、坊やではないです」

「ああ、そう……慣れない色気なんて使うもんじゃなかったわ……。でも、それなりにスタイルには自信があるのはホントなのよ? 身長の割に体重だって控えめだし? 」


この人と喋ってると他のことに割く余裕がない。一応インスヴァイトの中に、隊員用の予備の着替えが無いかも確認したいと思ったけど……


「はいはい分かりました。どいた、どいた~」

「ちょっと! 私は不思議な力で動くこの機体をもっとよく見たいの! 出来れば内部からじっくりと!」

「あなたは本当に厚かましいですね……」


こちらが止めようとするとじたばたして反抗する大人げない女の人。


「せめてワンタッチだけでも!」

「あ!?」


そう言ってイセンさんの乗ってた方にバシーンと手を叩きつけるレティさん。明らかにタッチではない音にびっくりして、拘束を緩めてしまった。しかし、好奇心旺盛な二十三歳児を捕まえるわけでもなく、インスヴァイトとレティさんを見つめる。音にだけでなく、今度はその光景に驚いた。


「コックピットが開いた!?」

「遅いわね!」


呆気に取られたせいで、咄嗟に乗り込むのを止められなかったが、ここで置いていかれたら後でイセンさんに何て言われるか分からない。


「ちょっと! 運転席どきなさいよ!」

「譲る訳ないじゃないですか!」


大事な席は死守するミライ。レバー配置がミライのとは大きく異なっていたが、資料で見たことはあるーー


「電源はこういれるのかしらね!」

「こら!」


思わず叱ってしまった。そう、今はこの人を何とかしないと! だけど、今やコックピットに入られインスヴァイトに電源もついている。電力以外でーーパイロットを動力として動く物にも電源と言って良いのか分からないが、それはそれ。

とりあえず、ここはもう適当に運転だけしてさっさとお引き取り願ーー


「ラジオとかないの? インスヴァイトでしょーこれー!」

「お願いだから落ち着いてください! 飛行しますから!」




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