序・新人操者の初任務3
「ーーー繋がりましたね、サージュです。切らないでくださいね? えー、ミライさんは初めてなので伝えておきますと、今回の任務では……」
ミライは機体を起動させたが、その瞬間どっと疲労感に襲われた。任務はこれからなのに気力が吸われていく。と言っても物資を置いて帰るだけの簡単な仕事なのだけど。
とはいえ操縦席回りは割と快適。広いしペットボトルホルダーもある親切仕様。それにしても、荷物って言われてこんだけデカいヘリだから中に詰め込むと思ったのに、中には全く隙間がない。強いて言うならコックピット。もっと軽量化なり出来なかったのかと思うミライだった。
「ーーーふう、ここまで説明するのは少々疲れましたね。まあ、これだけ言えば十分ですよね。何か質問とかありますか?」
「いえ、特には」
会話に意識が戻った頃には大方終わった後だった。最悪、操縦方は事前の教習で教わったから大丈夫だけど。てか、内容を最初から最後まで聞いてなかったのに会話を切ってしまった。ここまで聞いてないと絶対怒られそうだったから……
「よし、また後で。なるべく問題起こさないようにして下さいね」
「あの、すいません、すいませーん? ダメか……」
仕方ない、イメージダウンされそうだけどイセンさんに聞いてみよう。
「ここからは、不肖イセンがお応えしよう! 流石によく分からん事も多いだろうからな」
「うわっと!」
「うわっと!?」
いきなりだったのもあり、ちょっと失礼な驚き方をしてしまったかもしれない。運転許可は出ているので、誤魔化すように空へ立つ。
「なるほど、話に集中して無かったのか」
「何か体が怠くなって……」
「まあ、最初だけだろう。中々ヘリ型は心を食うからな」
「心を食う!?」
「あ、いやちゃんと休みつつなら平気だから、そこは安心してくれて構わない。あと、右手元にある緑のレバーは絶対に倒さないでくれ。それである程度機械の出力を抑えてるらしく、最大にするとそれこそ意識まで飛びかねん」
言われて右手元を見るとレバーが一本と横にボタンが二つ。今は手前に引かれていて、奥にある緑のボタンは消灯している。間違って倒さないよう注意しなければと思いながら、ついでにミライが左を見ると、モニターのようなものが付いているのに気付いた。
「了解です、注意して行きます」
出発の前に、イセンに対してちょっとした違和感を持つミライ。
「そう言えば!」
「いきなり大声を出すな……」
「最初廊下ですれ違った際に、同行してくれると言ってくれれば良かったじゃないですか!」
「んー? そういえばサージュの奴が先週軽い自己紹介を……あー、聞こえてるかなミライ君。多分それはサージュのミスだ。後で言っておかなければな」
最初に先週なんちゃらと聞こえたが、あえて言ったのか何なのか。変な先輩と知り合ってしまった。
「まあ、別に良いです」
「それはこっちも良かった。他に質問があればどんどん聞いてくれるとよいよ」
「んじゃあ質問ですけど、イセンさんの機体って戦闘用ですよね?」
「うむ」
「なんでミニガンしか付いてないんですか?」
「それは……あれだ。きっと地上の奴を伏せさせる為の威嚇用ってことだろう。そもそも、盗賊なんてこの地方で聞いたことないぞ」
ミライが少し黙ったので、イセンは補足するよう説明を加える。
「この職は特殊な上に人手がないから、新人、特に飛行する機体のやつなんかは適当に言い訳つけて、ベテランと組ませることが多いのだよ。一応適当に武装も付けてな」
「そうでしたか……では、次の質問ですけど」
「質問が多いのだな! まあどんどん言いたまえ」