一日一善生活のルール
「おし!今日は何しようか?」
昨日はいろいろありすぎて夢だったみたいだけど、残念ながら夢じゃないことを証明しているのが隣のアルビノだ。
「分かってるな?テメェは一日一善しないと生きらんねぇんだぞ?」
「分かってるって」
ぼくは聞き飽きたように返した。
「あのさぁ、アルビノ」
「んぁ?」
アルビノが気だるげに返事した。
「ぼくが一日一善しなかったらどうなるの?」
この質問をした途端コイツは、待ってましたと言わんばかりに黒い笑みを浮かべた。
「知りてぇか?」
もちろんだ。どんな最後になってしまうのか、怖いけど心構えくらいはしておきたい。
ぼくは固唾を呑んで次の言葉を待った。
「オマエが一日一善をし損ねたが最後…それはもうこれ以上にないくらいの地獄のような痛みを味わいながら何度も何度も引きちぎられる」
「!?」
ぼくはぞっとした。地獄のような痛みとは想像もつかないがきっとかなりむごいのだろう…。
「まじで…?」
「う、そ(笑)」
…はぁ!??
目の前の美形がニヤニヤしている。
コイツ、ぼくが怯える顔を見て楽しんでやがる…。
やっぱりドSだ。
「嘘だよウソ(笑)。あー、ほんとマコトいじるの楽しい(笑)」
前言撤回。ドSという言葉では片付けられない。
鬼畜だ。鬼畜の所業だ!
「で、本当はどうなるのさ」
「あぁ、」アルビノが真面目なカオに戻った。
「『死神さん』が常にオマエを監視しているからな。オマエが一日一善をやめたらそこでGAME OVERだ。『死神さん』の手で、お前は本来の死因であるくも膜下出血によって死ぬ」
アルビノは身振り手振りつけて説明してくれたけど、よく理解できない単語が出てきた。
「『死神』…?」
「そ」
「監視…?」
「監視っつーのは、つまり、ずっと見てるぞってこと」
アルビノが両手で輪をつくりメガネの真似をした。
いや…さすがに監視の意味くらいは分かるよ…。
「ってことは…」
ぼくは考えてみた。
「一日一善をやめたら、またあの頭痛を味わわなきゃいけないの!?」
「そういうコト」
アルビノはあまり表情を変えずに言い放った。
そんなにサラリと言わないでよ…。
「なぁに落ち込んでんだよ。一日一善つったって、なにも大それたことしろとは言ってない。ゴミ拾いみたいに地域への貢献じゃなくても、誰かの落し物を拾ってやるとかちぃせぇコトでも一善は一善だからな」
「そ、そうなの!?」
『善』って言うくらいだからもっと大きなコトしなきゃいけないのかと思ってた。
なぁんだ、一日一善は思ってたよりもずっと簡単じゃないか。
「ほら!今あの人ハンカチ落とした!」
アルビノが女性を指した。
「拾ってやれ!」
ゲシッ
いった。なにもケツを蹴らなくてもいいじゃないか…。
ぼくはケツをさすりながらハンカチを拾って持ち主の影を追った。
「よかったな」
家に戻ってぼくの部屋に入るなり、アルビノがにやけながらぼくに言った。
「え?何が?」
長い白髪を波立たせながら興奮したように喋り出すアルビノ。
「だってあの人、すげぇ美人だったじゃん!」
…何を言い出すかと思えばそんなコトかい。
「ぼく勉強したいんだけど」
コイツのこのテンションに半ば呆れつつ、ぼくが机に向かっても喋りは止まらない。
「すげぇ清楚な雰囲気でさぁ〜。俺ああいう女性 好きだよ」
「あー?アルビノぉ、もしかして女好きなの?」
振り返ってニヤニヤしながら言ってやった。蹴られたお返しだ。
「おう。男だからな」
…あっさりと真顔で返された。
さらにアルビノが反撃してきた。
「オマエは胸をガン見してたじゃねぇかよ。あー?マコトぉ、もしかしておっぱい好きなの?」
「ぐっ!」
改造ブーメラン…。痛すぎる。
し、仕方ないじゃないか…。
だって…男の子だもん。
そんなこんなでぼくは今日の一善もクリアした。
これで明日を迎えることができる。
明日の一善は何をしようかなって、少し楽しみにもなってきた。
明日は月曜日。
明日から学校。
また一週間が始まる。
この一週間は、もしかしたら来なかったかもしれない。
でもこの「ドSな女好き」…もとい アルビノがぼくを救ってくれたから、今を生きることができるようになったんだ。
ちゃんと生きなくちゃ。
…ひとつ気になることが増えた。
今日アルビノが言っていた「死神さん」というワード。
「死神さんが常に監視」って言ってたけど、ぼくのことを常に監視できるのってアルビノくらいなもんじゃない?
でもアルビノがぼくを救ってくれたんだもんなぁ…。
「死神さん」は遠いところで何か道具でも使って見てるのかな。
…ファンタジーかなこれは。
謎だ。
――Day 2 Clear――




