良いことしてみよう!
「おい」
玄関で靴を履こうとしたら、うしろからソイツが声をかけた。
「オマエ、名前なんて言うんだ?フルネームで頼む」
…それが人に名前を聞く態度だろうか?
「山村 真」
心の中では若干ふてくされつつもちゃんと答えた。
「そうか。『オマエ』じゃ呼びづらいからな。マコトと呼ばせてもらう」
「あ、はい」
正直、悪口か「まーくん♡」じゃなければ「オマエ」でもかまわないんだけど。
ソイツはこう続けた。
「俺のことは『アルビノ』と呼べ」
強制かよ。
ま、こっちも名前があった方が呼びやすい。
ここでぼくは疑問をぶつけることにした。
「あの…アルビノさん…一ついいですか?」
「あ?何だ?あ、さん付けとか敬語とか別にいいからな」
「アルビノ…は何者なんだ?」(ここでためらわないぼくには自分でもびっくりした。)
ぼくが聞くと、アルビノは意外そうなカオをした。
「あぁ俺?んー…うまく説明できねぇけど…『一日一善』のサポーター…みたいな?」
「サポーター…?」
「そ」
アルビノが口角を上げた。
「一日一回良いことすりゃあいいって言われても、何が良いことなのかいまいちよく分かんねぇだろ?」
「あぁ~」
「良いことしてたつもりが実は誰の為にもなってなかった、とかを防ぐ役割、かな?」
なるほど。そういう感じか。
「じゃあ、アルビノがいてくれたら一日一善続けるのって簡単じゃん!?」
「ま、そうなんだけど…」
アルビノが一瞬真面目な顔をした。が、次の瞬間、
「俺様は嘘つくことだってできるんだ。オマエが生きるか死ぬかはこの俺様次第ってコト」
ニタリと黒すぎる笑みを浮かべたアルビノ。
ヤバい。コイツ ヤバいなんてもんじゃないくらいヤバい。
コイツ人の生死に関わる事なのに楽しんでやがる…。
ドSだ…。
「今日は…ゴミ拾いでもしようか」
アルビノがダッフルコートのポケットから軍手やゴミ袋やゴミ拾いのトングを次々と出してぼくに渡す。
四次元かよ、そのポケット…。
ぼくが軍手をしてからふと顔を上げると、アルビノも軍手をして、左手にトング、右手にゴミ袋を持って準備していた。ちゃっかりロングの白い髪も束ねてある。
「あ…アルビノも手伝ってくれるのね」
「もちろん」
さっきとは真逆に、さわやかにニッコリとアルビノは答えた。
少し周りを見回してからアルビノは指揮をとった。
「…よし、拾うぞ。マコトは燃えるゴミ拾えな。俺様はプラスチックのゴミとか缶とか拾うから」
「おう!」
ぼくは今日を生きるために意気揚々とゴミ拾いに取り組み始めた。
…黙々とゴミを拾い続ける。
これで今日一日生きられるなら、ゴミ拾いなんて安すぎる。そう思いながら、タバコの吸殻や紙クズを次々と拾い集める。
でも、ある程度ぼくの袋の中が溜まってきて、疲れ始めた頃に気づいたんだ。
チラッと横目でアルビノの袋を見る。
中身はそれほど入っていない。
ぼくが日頃から思っていたこと。それは、ここにはあまりプラスチックゴミや缶などは落ちていないこと…。
アルビノがキョロキョロしてなのはそれを確認してたからか…。
アルビノ…ズルイ…。
――Day 1 Clear――




