それは土曜日のこと 2
―――目をひらいた。
自分の部屋の床の上に横向きに寝ていた。
…………。
あぁ、そうだ。なんで倒れたのかを思い出した。
姿勢はこのまま、
天井見て、
身の周りを見て、
自分の体にさわれることを確認した。
「はぁぁ~…」
良かった。ちゃんと生きてる。
そのことを噛みしめながら、上体を起こした、
ら…
「よう」
ぼくのナナメ後ろに、不審者がいた。
「よう」
「言い直さなくても聞こえてます」
なぜかぼくは冷静だった。
目の前に不審な――長いダッフルコートを着た、白い長髪で赤眼の――人が立っていたのに。
「えーっと?不法侵入で訴えれば捕まえられますよね?」
「おいおい、そりゃあないだろ?命の恩人に向かってぇ!」
この不審者は悪びれる様子もなくこう言った。
…は?命の恩人?
「俺様は、オマエが死にそうになってたところを助けてやったんだぞ!?」
なんだコイツ。
てか今…
「『ぼくが死にそうになってた』って言ったか!?」
思わず不審者に詰め寄ってしまった。
「あぁ。死ぬ寸前だった。」
コイツはさらりと告げた。
「マジで?」
「マジ」
「本当に?」
「本当に」
参った。ぼくは本当に死にそうになっていたとは。(まだ完全に信じた訳では無いが。)
「クモマッカシュッケツっつったっけ?めちゃ頭痛くなったろ?金属バットでガーン!みたいな。」
…なんでコイツがそのことを知っているんだ。
このぼくだけのサンクチュアリにはぼくしかいなかったというのに。
「オマエは死にかけたの。んで、この俺様がそこを助けてやったと。」
「待ってくれよ、聞きたいことが山ほど出てきた。」
コイツはしれっと言っているが、だって、そんなの信じられない。
ぼくはまだ15歳だ。死にたくない。
さらに『くも膜下出血』?15歳のぼくが!?
そして、自称「命の恩人」。
どこをとってもおかしい。
これは一体何かの小説なのか!?
「あーもうウゼェな!いい加減信じろ!テメェは現に頭痛起こしてぶっ倒れたじゃねえか!」
えっ!!?何コイツ!?急にキレた!!?
「んで、そのまま逝っちゃう人もいんだよ!」
「はい…」
気迫に負けたのか、気づいたらぼくはソイツの前で正座していた。
「だけどオマエは今ここにいる。それはなぜか!?」
「…あなた様が助けてくださったからです…?」
「そうだ。なかなかもの分かり良いやつだな」
いや、なんだか満足げですけど、正直飲み込めてません。
「だがしかし、無条件で生きながらえさせる訳にもいかない」
…ん?どういうことだ?
目の前で不審な人物は人差し指を立てた。
「『一日一善』、だ。一日一回良いことをすれば、その日 一日生きることができる、という条件がついている」
…?
「つ、つまり、一日生きるためには一回良いことをしないといけないってことですか…?」
「流石だな。つまりはそういうことだ」
謎なシステムだな…。
満足そうな顔をしていたソイツは、次にニヤリと微笑んでこう言った。
「そしてその『一日一善』は今日から始まっている。さっそく良いことをしに行くぞ!」
この短時間のうちに現実味のないことがたくさん起こりすぎて、ぼくの頭は疑問符だらけだった。




