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第十七話 大きな犠牲

 その姿は水の中へ沈んで見えなくなる。


「カイっ!」


 俺は橋の下を見下ろすが、上がってこない。

 河の流れはそこまで早くはない。

 だが、国を二つに分ける河は広くて深い。

 飛び込んで探すことは自殺行為だ。


「カイさんが、そんな……」


 ユキが蒼白な表情で呟く。

 カイがやられた。

 その事実にみんなが動揺していた。

 それは俺も同じだ。

 いつも冷静で強くて頼りになるカイの存在は大きかった。


「ユージ、あなたは下がっていなさい」


 俺の前に立つサクヤがアサシンに銃弾を放つ。

 だが銃弾を軽々と避けていくアサシン。

 いくらアサシンも手負いとはいえ、まだ圧倒的な力の差がある。

 個人の力ではアサシンには勝てない。

 カイを失った俺たちに勝機はあるのだろうか。


「ユージ、しっかりしてください。あれくらいでカイは死にません」


 俺に寄りそうシーナが珍しく強い口調で言った。

 根拠のない希望だが、俺を励ましてくれているのがわかった。


「……そうだな。カイなら大丈夫だ」


 ここで俺が弱気になってはいけない。

 アサシンも確実にダメージは受けている。

 疲弊はしているはずだ。

 アサシンを倒す。

 そしてフィーアを守らなくては。


「ユキ、シーナ、もう大丈夫だ」


 治療をしてくれたユキと俺を支えてくれたシーナに礼を言うと、俺は剣を再び握る。


「駄目ですっ! まだ傷は塞がっていません!」


 ユキが俺を止める。


「大丈夫だ。見た目ほど重症じゃない」


 俺はそれを制してゆっくりと歩き出す。

 体が悲鳴を上げる。

 回復用のアイテムも使うが、焼け石に水だ。

 それでも少しでも早く戦線に復帰しなければいけない。

 今はサクヤとアイが持ちこたえてくれているが、二人だけでは危険だ。

 俺のせいでシーナとユキの手まで止めてしまっている。


「シーナ、サクヤたちのサポートを頼む。ユキ、俺にもう一度強化を頼む」

「わかりました」


 シーナが戦線に復帰する。


「……やめてくださいとは言いません。だからお願いです。死なないでください」


 ユキは俯いたまま俺の胸にそっと手を置く。

 すぐに体の中から力が沸いてきた。

 良い子たちだ。


「アサシンを倒しましょう」


 顔を上げたユキの目にはもう涙はなかった。

 俺は頷き返すと、サクヤたちのもとへ走った。

 俺を見るなり目を丸くして驚くサクヤ。


「相変わらず無茶するわね。本当に大丈夫なの?」

「これくらいたいしたことない」


 半分自分に言い聞かせるように言うと、俺はアサシンに突っ込む。


「サクヤ、援護を頼む」


 みんな消耗しているこの状況で長期戦は不利だ。

 俺はアサシンに接近すると、全力で剣を振り抜く。


「はあああああっ!」


 連続で剣を振るう。

 アサシンは剣を避け、あるいはナイフでそれを受け止める。

 攻撃一辺倒だが決め手を欠く。

 傷口が開き、痛みが激しくなる。

 それでも手を休めない。

 ここで引けば勝機はない。

 俺は最低でもアサシンと刺し違えるつもりでいた。

 しかし、一瞬の間にアサシンの放った拳が、俺を剣ごと吹き飛ばす。


「ユージさんっ!」


 アイの声で何とか気絶しかけた意識を保つ。

 そこで、アサシンが近くにいたアイへと標的を変えた。

 一瞬でアイへと接近するアサシン。


「あっ――」


 ナイフがアイの腹部に突き刺さる。

 そしてナイフを引き抜く。

 アイの胸元から血が溢れた。


「アイ!」


 アイが膝を付き、地面にうずくまる。

 俺はアイに駆け寄る。


「っ、私は、大丈夫です!」


 そこでアイは自分の左腕に血だらけの右手をやる。

 アイの腕に付けていた腕輪が光りを放った。

 すると、不思議な現象が起こった。

 俺の全身から痛みが消えた。

 体力がすべて回復している。


 俺はそこで気付いた。

 それはアイの持つ『魔女の腕輪』の効果だった。

 自分の受けたダメージの分、誰か一人の体力を回復させる。

 それがそのアイテムの効果である。


「ユージさん、アサシンを倒してください!」

「っ!」


 アイの意志を無駄にしない。

 これはチャンスだ。

 俺はアサシンへと向かうと、再び連続して剣を振るう。

 ついにアサシンのナイフを弾き飛ばす。

 しかし、俺も剣を弾き飛ばされていた。

 お互いに素手になる。

 だが、そこで声がした。


「ユージ?%

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