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第十話 同盟

 大国アースガルズの崩壊は瞬く間に世界中へと広まり、どの国でもそれなりに混乱が起こった。

 しかし、やはりというか、ロキの武力による支配への反発は大きかったらしく、動揺とともに歓迎する声が多数だった。

 世界の情勢は一気に変化し、大きな転換期を迎えることとなる。


 そしてアースガルズの隣国、ヴァナヘイムにも動きがあった。

 ヨトゥンヘイムと新たに同盟を組みたいとの要請だった。

 俺たちとしてもその申し出はありがたい。

 段取りはとんとん拍子で進んだ。


 ヨトゥンヘイムの宮殿で、俺たちは早速ヴァナヘイムの国王と対面することとなった。

 玉座の間で椅子に腰かける俺の前に、従者を連れてその人物がやってくる。


「初めまして、ユージ皇帝陛下。私はフレイ。ヴァナヘイムの国王です」


 ヴァナヘイムの王、フレイさんが俺の前で恭しく頭を下げた。

 見た目は若い。

 しかし聡明そうな顔立ちをしていた。

 俺なんかよりよっぽど一国の主として相応しいように思える。


「よろしくお願いします、フレイさん。同盟の申し出、ありがとうございます」


 俺はお礼をフレイさんに告げる。

 するとフレイさんはぽかんとした表情で俺を見ていた。


「……どうされました?」

「いえ、あまりに意外だったもので」

「意外?」

「ロキを倒した人物と聞いて、もっと武闘派な豪傑を想像していたものですから」

「あまり貫禄がなくてすみません」


 皇帝としてもっと威厳のある態度でいるべきだと思ってはいるのだが、年上の、しかも偉い立場の人に対して敬語を崩して話すのはいまだにどうも抵抗がある。

 必要以上に偉ぶる気もないので、俺は自分の話しやすさを優先した。


「いえ、悪い意味ではありません。人当たりが良く誠実な対応をしてくださるところに非常に好印象を受けました。だからこそ誰もがあなたに付いてくるのでしょう」

「それならフレイさんも似たようなものかもしれませんよ」

「ありがとうございます」


 フレイさんは丁寧に頭を下げた。

 この物腰の柔らかさは演技とは思えない。

 それに丁寧だが嫌味がない。

 単なる俺の第一印象でしかないが、そういう感覚もときには大事な判断材料となる。

 アースガルズともうまくやっていけたのはフレイさんの外交能力があったからかもしれない。


「ユージ陛下、我々はこれまでアースガルズの侵攻の脅威から身を守るためにアースガルズと同盟を結んでいました」

「ええ、ですがアースガルズとの同盟は他の国から身を守る役目も果たしていたのでは?」

「そのとおりです。しかし、アースガルズの王、ロキが死んだ今、それは意味のないものになりました。我々はロキを倒したヨトゥンヘイムと同盟を結びたいと思っております」


 ヴァナヘイムが同盟を結ぶメリットは今フレイさんが言ったことそのままだろう。

 俺たちと同盟を結ぶことで軍事力を強化し、周辺国から身を守る。

 その相手がアースガルズからヨトゥンヘイムに変わっただけだ。

 シンプルな分、変に裏を読む必要もないのでこちらもやりやすい。


「わかりました。我々も周辺国とは仲良くしていきたいと常々思っているところです。同盟国として、これからは共に助け合いましょう」


 俺たちとしても敵対する国が一つでも減るのであればありがたい。

 そして、ヴァナヘイムと同盟を結ぶうえでもう一つ、最大のメリットがあった。


「ありがとうございます……」


 そこでフレイの側に控えていた従者が、俺の前まで来ると膝を付いて手を差し出す。


「これは我々ヴァナヘイムに古くからある国宝です。どうぞユージ陛下へ献上いたします」


 従者の手には短刀があった。

 これが『伝説の短刀リジル』。

 9つの秘宝の一つである。

 これが同盟を結ぶうえで俺が出した唯一の条件だった。

 俺は従者から短刀を受け取る。

 ヴァナヘイムの秘宝がヨトゥンヘイムへと献上された。

 これで残る秘宝はあと2つ。

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