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第十一話 ダンジョンの最深部

 どれくらい地下で過ごしていただろう。

 正確な時間が分からないが、潜ってから一日は確実に経過しているのは間違いない。

 歩いては休憩を繰り返し、ついにはダンジョンの中で仮眠まで取った俺たちはひたすら最深部を目指して進み続ける。

 こういう一日中太陽の当たらない場所にいる生活も慣れている。

 ここまできたら全容を解明するまで戻る気はなかった。


 そして、とうとう地下十階へと降り立った。

 現れるモンスターのレベルも楽観できないものになっていた。

 現在、俺たちは、棍棒を持った大柄のモンスター『オーク』と戦闘を繰り広げていた。


【オーク】レベル210


 カイの振り抜いた刀がオークを切り裂く。

 ついにオークは倒れた。

 そこで俺はほっと息を付く。


「そろそろ何か見つからないと面白くないな」


 経験値稼ぎにはもってこいだが、そろそろゴールが見えないと辛くなってきた。

 地下十階という切りの良い数字であるし、何かボーナスがあってもおかしくないはずだ。

 そんな願望を持ちつつも迷宮の奥へと進んでいく。


 しばらく歩いていると、狭い通路を発見した。

 壁に穴が開いたようにできたその入口は、人一人がようやく通れるくらい狭い。

 まるでダンジョンの中にもう一つ洞窟があるように見えた。

 その洞窟の奥から不気味な唸り声のようなものが聞こえてきた。


「……何の音でしょうか?」


 シーナが俺に尋ねる。


「単なる風の音じゃあなさそうだ」


 俺たちは警戒しながら先へと進む。

 次第に大きくなる鳴き声。

 狭い通路に不気味に響く。

 そして、俺たちはその声の正体を目撃する。


【ファーフニル】レベル300


 それはドラゴンだった。

 鱗に覆われた体。

 背中には大きな翼。

 そして鋭い爪と牙を持った、二足歩行の魔物。

 それが俺たちの目の前に姿を見せる。


 狭い通路の先に地下とは思えないほど広いスペースが広がっている。

 上を見上げれば天井も遥か上空にあった。

 さすがにこのドラゴンが自由に飛び回れるほどではないが、それでも翼を大きく羽ばたかせる余裕は十分にある。

 この部屋の奥に通路や階段は見当たらない。

 そして部屋の奥には大きな宝箱が置かれていた。


「ようやく終点ってわけか」


 あの中に俺たちの期待に応えるだけの財宝が眠っているのかどうかは開けてみないとわからない。

 だけど、ここまで来たらそれだけの価値があると期待せざるを得ない。

 俺たちの二倍の大きさはあるドラゴンは、鋭い眼光で俺たちを見下ろしていた。

 地下迷宮の王。

 財宝の守護者。

 それともこのダンジョンがドラゴンを封印するために造られたものなのか。


「相手にとって不足はないな。迷宮の最後に相応しい」


 カイが嬉しそうに、腰に差した刀に手を掛ける。

 他のみんなもそれぞれ戦闘態勢になった。


「みんな、危険だと思ったらすぐに通路へ退避してくれ。無理をする必要はない」


 相手はこのダンジョンから出ることはない。

 絶対に一度で倒す必要があるわけでもない。

 大切なのはいかに負傷者を出さずに勝つことだ。

 レベル的には厳しい戦いになりそうだが、全員で挑めば勝てない相手ではない。

 この程度のモンスターに苦戦しているようでは、ロキ軍を相手にすることなど夢のまた夢だ。


「ユージさん、終わりました」

「ありがとう、ユキ」


 ユキが俺たちのステータスを強化してくれる。

 今のユキは相手に直接触れなくても強化することが可能になっていた。


「……三人だけじゃあこんなに早くここまで辿り着けなかったな。ここまで来ることができたのはユキたちみんながいてくれたおかげだ」


 気付けばユキに自分の胸に秘めていた思いを吐露していた。

 ユキだけじゃない。

 ここにいる八人誰一人が欠けても駄目だ。

 俺たちがここまで旅をしてこられたのはみんながいたおかげだ。


「いえ、私の力なんて微々たるものです……でも、私がユージさんたちのお役に立てたのなら、それはとても嬉しいことですね」


 ユキはそう言って、はにかんだ。


「確かにユキは見違えるくらい成長したよね。はい、これ」


 レンはポーションをユキへと放り投げる。

 ユキは慌てて両手でキャッチする。

 レンの複製能力も大変重宝するため旅の要所要所でお世話になった。


「ユキばっかり褒められてずるいから、次は僕たちが役に立つところをみせなきゃね」


 にこりと微笑むと、レンはドラゴンの前に立つ。


「はい、私もユージに褒められたいです」


 そして鎌を持ったシーナもレンの隣に並んだ。

 ドラゴンは二人をじっと睨みつけると、突然体を捻って尻尾を振り回した。

 二人は跳躍してそれを避ける。

 レンは着地すると、ドラゴンに向けて一直線に走り出す。

 同時に、空中にいたシーナはドラゴンの頭上へと瞬間移動した。

 シーナの鎌がその翼を切り裂く。


「ギャォォォォォォォ!」


 ドラゴンは雄叫びを上げて体をのけ反らせる。

 さらにドラゴンに接近したレンが、ナイフをドラゴンの喉元へと突き刺す。

 そして引き抜いた。

 ドラゴンは苦しげに暴れ、両手を振り回す。

 ちょうど側にいたレンへと爪が迫る。


「俺も混ぜてもらおうか」


 カイは刀でその爪を弾いて軌道を逸らす。

 そしてドラゴンの右腕を切り裂いた。

 切断されたドラゴンの右腕が地面に落ちる。


「一応お礼を言っておいた方が良いのかな?」

「不要だ。どうせ避けていただろう?」

「まあね」


 レンとカイは暴れるドラゴンから一度距離を取る。

 シーナもすでに俺の隣まで移動していた。

 代わりにアキラがドラゴンの懐まで潜り込む。


「おらおらおらおらぁっ!」


 アキラの拳による連打に、ドラゴンの巨体が堪らず後ろへよろけ、ダンジョンの壁に体をぶつける。

 それでもアキラは連打を止めずに続ける。

 衝撃でドラゴンの背後の壁に亀裂が入っていく。


「ギャォォォォォォ!」


 だが、そこでドラゴンも反撃する。

 アキラの攻撃を耐え、頭を前へと突き出し、その鋭い牙でアキラに噛み付こうとする。

 咄嗟にアキラは後ろに跳んでそれをかわした。


「危ない危ない……追撃は任せたぜ、フィーア」


 そこで、ドラゴンの右目に矢が突き刺さった。

 続けてもう片方の目にも矢が刺さる。

 フィーアの弓だ。

 両目を潰されたドラゴンはその痛みのせいか我を忘れたように滅茶苦茶に暴れ回り、ダンジョンの壁を破壊する。

 そしてドラゴンはその口から炎を吐き出した。


「っ!」


 アイが結界を張り、火炎を防ぐ。

 俺たちはアイの後ろに下がり、炎から逃れた。


「アイ、助かった。あとは俺が何とかする」


 結界を張るアイの後ろから跳躍。

 炎を吐き続けているドラゴンの背中に乗ると、その背中に剣を突き刺す。


「ギャォォォォォォ!」


 ドラゴンはその巨体を大きくのけ反らせる。

 炎が止んだ。

 そこでドラゴンの首元に剣を振り下ろす。


「ギャォォォォォォォォッ!」


 それでも一撃ではドラゴンの首を切断することは出来ず、ドラゴンは俺を振り下ろすために暴れる。

 仕方なく俺はドラゴンから飛び降りて距離を取った。

 そこですかさずカイがドラゴンの足を切り裂く。

 ドラゴンは立っていられず、ドシンッと大きな音とともに地面に倒れた。


「これで終わりだっ!」


 そして俺は両手に力を込め、ドラゴンの首に剣を振り下ろす。

 ドラゴンの首を切断した。

 するとドラゴンの亡骸は粒子となって消え、その場にアイテムとお金が残った。


「やったね、ユージくん」

「ああ、何とか倒せたな……」


 これで後は宝箱の中身を確認すれば、ダンジョンは完全に攻略したといっていいだろう。


「さて、あのドラゴンが守っていたものはなんだろうな?」


 一応周囲に罠がないか確認しつつ、俺たちは宝箱へと近づく。

 そして俺は宝箱を開いた。


 そこには剣が入っていた。

 俺はそれを手に取る。

 ステータスでその名前を確認すると、『伝説の剣グラム』とあった。


「ほう、これは思いがけない収穫だな」


 剣を見たカイが呟く。

 こんなところに9つの秘宝のうちの一つが隠されていたのか。

 9つの秘宝が絡んでいるのであればこの難易度も納得だ。


「良い武器が手に入りましたね、ユージ」

「もちろん使うんだろ?」


 アキラが俺に尋ねる。

 剣をメインの武器にしているのはこの中では俺だけなのでそれが自然の流れだろう。

 俺もこの武器を使うことに異論はない。


「ああ、これでステータスの大幅なアップが期待できるな」


 それに、ここまで来るためにモンスターとの戦闘を重ね、経験値も多く入った。

 そして俺の目標であったダンジョンの攻略も達成することができた。

 今回の探索は大成功といっていいだろう。



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