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第二話 モンスターとの戦闘

 洞窟の中は薄暗く、ひんやりとしている。

 通路は大体大人五人が並んで歩いても十分余裕があるくらい広い。

 天井も高く、ここで武器を振り回してもぶつかることはないだろう。

 太陽の光は入ってこないので、松明に火をつけ壁の窪みに設置する。


 周囲の壁は石でできている。

 床はところどころから木の幹が出ており、足元に気を付ける必要があった。

 比較的入口に近い位置や、すでに何度も訪れたところは松明を置かずとも、あらかじめ光源を設置しておいたのでスムーズに移動することができた。


 俺たち以外にもここを訪れた者がいるのか、最初から人工的に手を加えられた形跡があった。

 松明を置くためのブロックも、最初からここに作られていたものであるし、そもそもこのダンジョン自体、自然にできたとは思えないような箇所がある。

 地下に続く階段やアイテムの入った宝箱まで存在していた。

 この不思議なダンジョンが、俺の冒険者魂に火を付けたのだ。


「効率重視でサクサクと行くぞ」


 腰に差した刀に手を置きながら、カイはスタスタと奥へと進んでいく。

 一方、俺は剣を背中に担ぎ、シーナは大きな鎌デスサイズを手に持ってカイの後ろに続く。

 真面目なカイは周囲への警戒を常に怠っていないが、正直この辺のモンスターなら不意打ちを食らうことはまずない。

 モンスターのレベルが低いので、攻撃されても先手を取れるからだ。

 油断しているわけではないが、気を張るほどではない。

 このエリアには何度も足を運んでいるので俺たちは経験上それが分かっていた。

 それに……


 俺はちらりと前方のカイを見る。

 カイがいれば大抵のことは何とかなるだろう。

 俺たちは頻繁に経験値やレベルという単語を口にするが、それは実際にステータスが可視化できるからだ。

 つまり、経験だけでなく数字上でも力の差をはっきりと見ることができた。

 ちなみに俺たちのステータスはこんな感じである。


【ユージ】レベル43 剣スキルC

 体力:740 魔力:560 筋力:672 耐久:610 敏捷:725

 装備:騎士の剣『剣スキルC以上で使用可能』『筋力が100上昇』『敏捷が100上昇』『獲得経験値が2倍に上昇』、村人の服『耐久が50上昇』、皮の靴『敏捷が50上昇』


【カイ】レベル72 刀スキルA

 体力:3,200 魔力:2,400 筋力:3,170 耐久:2,670 敏捷:4,300

 装備:伝説の刀ヴェルンド『刀スキルA以上で使用可能』『筋力が1,000上昇』『敏捷が1,000上昇』『即死効果』、ブランドスーツ『体力が300上昇』『耐久が500上昇』『高速自然回復能力付加』、韋駄天ブーツ『敏捷が1,000上昇』、金の首飾り『魔力が100上昇』『獲得金額上昇』、祝福の指輪『受けたダメージを半減する』


【シーナ】レベル39 鎌スキルD

 体力:708 魔力:681 筋力:620 耐久:530 敏捷:910

 装備:銀の鎌『鎌スキルE以上で使用可能』『筋力が100上昇』『敏捷が100上昇』、白いワンピース『体力が50上昇』『耐久が50上昇』『魔力が100上昇』、皮の靴『敏捷が50上昇』、加速の指輪『敏捷が200上昇』


 ここでは比較対象がいないが、この村でそこそこ戦えると言われているフィーアでさえレベル20であることを考えると、全員レベルは高い方だと思う。

 当然村の中では断トツだ。

 この周辺にいるモンスターなら一撃で葬れるし、攻撃を受けてもダメージは殆どないだろう。

 最初はレベル1のモンスターにも苦戦していたのだが、地道に経験値稼ぎを続けていたらいつのまにかお金とアイテムも手に入り、かなり強くなっていた。

 ちなみに今、装備している剣はこのダンジョンで手に入れたものだ。


 そして、カイは出会ったときから規格外に強かった。

 なんか装備も凄いし、ステータスも三桁だ。

 カイの強さに関しては俺も全面的に認めざるを得ない。


 こんなチートくさい存在が俺たちに付き合って経験値稼ぎをしているのが不思議だが、カイがいうにはずっとソロプレイをしていたから仲間が欲しかったとのこと。

 それなら別に俺たちじゃなくても良いような気もするが、カイ曰く、「初めて会った気がしない」らしい。

 なんだそりゃ。

 そのうち村を出るとは言っているものの、一向に出る気配がないのもそのためだ。

 しかし何だかんだ俺たちに付き合ってくれていることは感謝している。


 ずっとソロプレイをしていたのはシーナも同様で、俺たちと一緒に行動するようになったのは偶然この村にやってきたシーナと俺が出会ったからだ。

 その経緯は話すと少し長くなるので割愛するが、今では少々戸惑うほどシーナに懐かれているのだから人生とは面白いものである。


「ユージ、どうかしましたか? よそ見をしていては危ないですよ」


 俺の隣を歩くシーナが小さく首を傾ける。

 先程の密着状態はさすがにやめてもらったが、少々名残惜しかったりする。


「シーナの言うとおりだ。油断していたらやられるぞ」


 前を歩くカイが後ろを振り向かずに言った。


「これは油断じゃなくて余裕ってやつだ。冒険者を舐めるなよ」

「まだ村から出たことのない自称冒険者なのに随分と偉そうだな……」


 カイの呆れたような声が前方から聞こえてきた。

 くっ、人が気にしていることを。


「それをいうならカイだってまだ魔王を倒したことないんだから自称勇者だろ」

「失礼なことを言うな。こう見えて俺は数々の街でいくつもの伝説を残しているんだぞ。それを無暗に誇るつもりはないがな」


 立ち止まり振り返ったカイは、真面目くさった顔でそう言った。

 奴のレベルを見ればそれもすべて作り話というわけではないのだろう。

 もっとも、どこまで本当なのか分からないが。


「……ユージ、シーナ、俺が村を出る時は、お前たちも一緒に付いてきてくれるとありがたいんだがな」

「え?」

「お前らは強い。外に出たとしても十分に戦力になるはずだ。それに俺はまだ、この仲間と一緒に冒険したいと願っている。お前たちと旅をすればきっと退屈しないだろう」


 とても上から目線な発言だ。

 だけど、俺もカイの気持ちは理解出来る。

 俺もカイやシーナと過ごしたこの日々が楽しくて、ずっと続いたらいいと思うこともある。


「まあ……それもありかな。考えておくよ」


 俺もいつか村を出るつもりでいた。

 そのときはこいつらと行動するのも悪くはないと思う。

 ただ、村を出るとしたらフィーアは何と言うだろう。

 フィーアは悲しむだろうか。俺も村を出て旅をしたいと思う反面、フィーアの側にいたいという気持ちもあった。


「私はユージの側にいられるならどこまでもご一緒します」


 シーナはシーナでドキッとすることを平然と言う。

 くそっ、可愛い!

 そんなことを言われたら好きになっちゃうだろ!

 童貞舐めんなよ!


「そうか、これは楽しみだ」


 一方、カイは満足そうに頷いていた。


――


 しばらくダンジョンの中を進み、少し開けた場所に出たとき、そこでカイが立ち止まる。


「ユージ、シーナ、モンスターだ」


 カイが静かな声でそれを告げる。すぐに俺たちもその存在を確認した。


【スライム】レベル5

【スライム2】レベル5

【スライム3】レベル5


 俺たちの前に現れたモンスターは三体。

 ダンジョン内には色々な種類のモンスターが生息している。

 奴らは凶暴で、俺たちを見ると襲い掛かってくるのである。

 今、俺たちの目の前にいるのは、液状でねばねばした不定形のモンスター、『スライム』だ。

 低級レベルで今の俺たちなら片目を瞑っていても勝てる相手である。

 ここは省エネでサクッと倒してしまおう。


「敵はスライム三体か。一人につき一体だな」


 そう言うなり、カイは走り出す。

 そしてカイの動きに反応したスライム一体を引き連れて俺たちから距離を取った。

 わざわざ他のスライムを倒してしまわないようにあえて一体だけ自分に引き付けたのだ。

 これくらいの相手なら一人で倒しても文句は言わないのに律儀な奴だ。

 そして残りのスライム二体のうち、一体がシーナへと飛び掛かった。


「……」


 シーナはそれをじっと見つめる。

 そして自分の間合いに入った瞬間、その大きな鎌を両手で振った。

 鎌はスライムを一刀両断にする。

 小柄なシーナには不釣り合いな大きな鎌。

 それを振るう姿はまるで死神のようだ。


 さて、俺も狩るか。


 背負っていた剣を片手に持ち、残ったスライムに向かって跳躍。

 一歩でスライムの目の前まで迫ると、剣を振り下ろす。

 スライムを真っ二つに切り裂いた。

 斬られたスライムはその場で力尽き、煙のように消えてしまった。

 そして代わりに、そこには金貨が落ちていた。

 モンスターを倒すと一定の金が手に入るのだが、どういう原理なのか俺には分からなかった。


「このレベルだとたいして経験値は入らないな」


 カイも終わったらしく、涼しい顔でこちらにやってくる。

 俺は落ちていたお金を拾うと、腰に付けている袋の中へと入れた。

 それにしても、相手を倒して金を手に入れるなんてまるで盗賊みたいだな。


「しかし、狩っても狩っても出てくるよな。どこから湧いてくるんだ?」

「さあ、スライムの巣でもあるんじゃないか?」

「ならもしかしたら、今倒したスライムにも家族や恋人がいたのかもな」

「おい、狩りにくくなるようなことをいうな」


 カイが露骨に顔をしかめる。

 そもそもスライムにそんな概念があるのか分からないが、想像すると確かに気分のいいものじゃないな。

 その後もぐだぐだと軽口を叩きつつ、俺たちはダンジョンの奥へと進んでいった。



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