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第十七話 機械都市

 俺たちの旅もここまでは順調と言っていいだろう。

 様々な経験をし、順調にレベルも上がり、9つの秘宝のうちの一つ、伝説の弓ミスティルテインも手に入れることができた。

 そしてアイという仲間も増えた。

 このペースでいけば残りの国を回り、さらに9つの秘宝を全て手に入れることも不可能ではないように思える。


 アルフヘイムを出てからどれだけの月日が経過しただろう。

 俺たちは新しい国、『スヴァルトアールヴヘイム』にある街、『スキールニル』を訪れていた。

 ここは自然に囲まれたアルフヘイムとは打って変わって、機械技術が発達し、街中に工場が立ち並ぶ。

 通称、機械都市と呼ばれている場所だ。

 世界で一番文明が発達した場所とも言われている。

 街の至る所にある煙突から灰色の煙が上り、上を見上げると煙と区別がつかないどんよりとした雲が空を覆っていた。

 この街は一年を通して天気の良い日が少ないらしい。

 街の様々な場所からガチャンガチャンと機械の音が聞こえてくる。

 どこか異質な街だった。


「ほえー、凄く大きな建物がいっぱいですね……」


 アイがぽかんと口を開けたまま上を見上げる。

 その隣に並んで、ユキも興味津々に建物を眺めていた。


「本当ですね。見たこともない機械がいっぱいあります」

「なんだか圧倒されるねー」

「ああ、まるで異世界に来たみたいだ」


 俺はフィーアの言葉に頷く。

 初めて見る技術に圧倒されると同時に強い関心を持った。

 いずれ俺たちの暮らしが大きく変わるような予感。

 この街にいると、ついそんな期待をしてしまう。

 だが、俺たちは観光に来たのではない。


「とりあえず街に着いたことだしギルドへ行ってみよう。新しい情報が手に入るかもしれない」


 そういうわけで、俺たちはさっそくギルド支部を訪れた。

 街外れにあるこの建物も、油の臭いでも染みついているかのように全体的に薄汚れており、それがまた周囲の景色に溶け込んでいた。

 どこの支部もその街にあった形をして当たり前のようにそこに存在している。


「いらっしゃいませ、本日はどのようなご用件でしょうか?」


 受付にはいつものようにエルフの女性がいた。

 どこの支部にも同じ顔をしたエルフの受付嬢がいるのだが、実は全員姉妹なのだという。

 見た目も口調も同一人物としか思えないほどそっくりなので今でも信じられない。

 そんな受付嬢の出迎えを受けた後、俺たちはギルドの許可証を見せ、受付嬢にクエストの一覧を見せてもらう。


「ユージ、何か良いクエストはあったか?」

「とりあえず一番高いランクの中から選んでいるんだけど……」


 今の俺たちなら多少高ランクの依頼でも構わない。

 さすがにSSSランクはまだ簡単にクリアできるようなレベルではないが、Sランク程度なら苦労せずにクリアできるほどになっていた。

 しかし、俺たちの目的はSSSランクだ。

 簡単にクリアできる依頼に興味はない。

 俺たちがギルドを作った目的は9つの秘宝のためだ。

 9つの秘宝が手に入ると思われるレベルの依頼となるとSSSランクに挑まなければならない。


「この『とあるドワーフの依頼』っていうのは?」


 俺が気になったのはSSSランクの『とあるドワーフの依頼』というタイトルのクエストだった。

 依頼内容を見ると、アルヴィースという名前のドワーフが、ある道具を作るための素材を集めてくれる人を探しているらしい。

 クリアすれば100万ゴールドとレアアイテムがもらえる。


「アルヴィースさんはこの街に住んでいるらしいし、ちょうどいいんじゃないか?」


 ギルド支部によってそれぞれクエストの内容は違っていて、依頼内容は近隣の町や森、ダンジョンなどで解決できるものになっている。

 しかし、依頼によっては遠くまで行かなければならないものも多々ある。

 そういう点でこの依頼は依頼人がすぐ近くにおり、手を付けるには好都合なクエストだった。


「それじゃあこの依頼で決定だな」

「分かりました。ギルド名『スクウェイダー』、依頼内容は『とあるドワーフの依頼』、確かに受付いたしました。条件をクリアしましたら最寄りのギルド支部までご連絡ください」


 笑顔の受付嬢に見送られてギルドを出ると、俺たちは受付嬢からもらった地図を広げる。


「とりあえず、まずはこの地図に記された場所へ行けば良いみたいだな」


 地図上のある一点に印が付けられていた。

 ここがアルヴィースさんの住居らしい。

 そう遠くはない場所なので今日すぐにでも会いに行けそうだ。


「SSSランクのクエストか。どんな素材を僕たちに集めさせるつもりなんだろうね?」

「無理難題を吹っ掛けられるかもな」

「そういうわりにカイ君は楽しそうだね?」

「当然だ。難しい依頼ほど強い相手と戦えるんだからな」

「君は相変わらずだね。ま、僕もそっちの方が燃えるけど」

「……二人とも、いつも言ってるけど無茶はしたら駄目だからね?」


 呆れたようなフィーアの声に俺は苦笑を浮かべる。

 俺もレンやカイに近い考えを持っているのでフィーアの忠告は耳が痛い。


「俺たちも気を付けようぜ? シーナ」

「安心してください。ユージなら多少の無茶でも何とかできます」


 そして同じくバトルマニアのシーナにも注意するように声を掛けると、なぜかそんな見当違いの返事をされたのだった。


――


 アルヴィースさんの家は小さな工場だった。

 いや、工場というよりは工房の方が近いか。

 アルヴィースさんもドワーフの多くがそうであるように鍛冶屋であった。

 ずっと炉に火を焚いているからなのか、扉を開けた瞬間に部屋の中から凄い熱気が顔へと吹き付ける。

 家の外壁に何本も取り付けられている太いパイプから蒸気が噴き出ていた。


「すみませーん、アルヴィースさんはいますかー?」


 工房の入口から声を掛けるが返事はなかった。

 しかし中から金属を叩くような音が断続的に聞こえてくる。

 その音を辿っていくと、奥の方で座って、細い鉄にハンマーを打ち付けて作業をしている男性がいることに気付いた。

 俺は近寄ってもう一度声を掛けると、その男性も俺の声に気付いて作業を中断し、俺に顔を向けた。


「あ? なにか用かい?」


 小柄だが体格の良い中年の男が、頭に付けたゴーグルを外しながら顔を見せた。

 ただしドワーフなので性格な年齢は分からない。

 中年というのは見た目の印象だ。

 とにかく彼がアルヴィースさんらしい。


「ギルドの依頼で来た者です。あなたがアルヴィースさんですよね?」

「ああ、お前さんたち、俺の頼みを聞きに来てくれたのか。ちょっと待ってろ」


 するとアルヴィースさんは再びゴーグルを付けると、そのまま鉄を打ち続ける。

 俺たちは黙ってそれを見ていた。

 そして、しばらくしておもむろに手を止めると、アルヴィースさんは立ち上がった。

 それから俺たちは工房の奥へと案内された。

 そこに別の部屋へと通じている扉があるからだ。

 進められるまま中を進むと、工具や何かの部品が大量に棚に並べられた倉庫のような場所に出た。

 部屋の中央には木製のテーブルと、同じく木製の椅子が4脚置かれている。

 ここは休憩所でもあるらしい。


「あそこだと暑くて敵わんからな。生憎と椅子が足りないから残りは立ってもらうことになるが勘弁してくれ」


 そう言ってアルヴィースさんは俺たちに椅子を進める。

 鍛冶屋という職人気質な職業と厳つい見た目から、失礼だが俺はもっと厳格な性格の人物をイメージしていたが、意外と人当たりの良い人物らしい。


「それじゃあ、さっそくで悪いが俺の依頼を聞いてくれ」

「たしか、とある素材を集めれば良いんですよね?」

「ああ、この街から北へ50キロほど進むと辿り着く森、通称『迷いの森』。そこで『硬質の羽根』を持ってきてほしい。数は、加工品しか見たことがないから実際の大きさは分からんが、これくらいのを10枚ほどあれば良い」


 アルヴィースさんは右手の親指と人差し指を広げて見せる。

 大体10センチくらいか。


「硬質の羽根、ですか?」

「ああ、『硬質の羽根』は俺が今製作している武器、『グレイプニル』を作るためにどうしても必要な素材なんだ。俺は『グレイプニル』をどうしても完成させたい。そいつが俺の夢だ。だが、『硬質の羽根』は迷いの森にいる魔物からしか採れないことが分かった。俺は武器を作ることに関しては自信があるが、腕の方はからっきしでな。仕方ないから腕の立つ奴に頼んだってわけだ」


 アルヴィースさんはそう熱く語りながら、部屋の隅に置かれたヤカンを掴むと、その注ぎ口から直接、透明な水を一気に飲んだ。

 そして空になったそれを勢いよくテーブルに置くと、彼は俺の顔を真剣な表情で見つめた。


「どうだ? 俺の代わりに行ってくれるか?」

「ええ、もちろんです。任せてください」


 話を聞いたところ断る理由はないように思える。

 大体予想外の出来事が起こるのが高ランクのクエストだが、それも織り込み済みで俺は依頼を受けることにした。

 それに、アルヴィースさんの言葉の節々から感じる作品を完成させたいという熱意に、俺も協力したいという気持ちが湧いてきたのだ。


「ところで、その『硬質の羽根』とそれを持つ魔物について教えてください。それらにはどんな特徴がありますか?」

「羽根の方はそうだな、羽根なのにとにかく鉄みたいに固いんだ。色は黒い」


 アルヴィースさんは腕を組んで考えながら言葉を続ける。


「魔物は……確か名前はフレースヴェルグと言ったか。巨大な鷲の魔物だよ」



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