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第十三話 ドラゴン討伐隊

 傾斜の緩やかな石の階段を上がり、街の上の方へと進むと、そこに広い平らな土地があり、町長の住む大きな家があった。

 街から避難中だった住民に教えてもらったとおりの場所だ。

 その周囲には他にも民家が立ち並ぶ。

 そして、そこでは現在、兵士とドラゴンの戦闘が行われていた。


 剣を持って戦う人間の部隊と、主に弓を使うエルフの部隊。

 それぞれが協力して暴れるドラゴンの集団に立ち向かう。

 ドラゴンは全部で五匹いた。

 何人か犠牲者も出ているようだが、それでもドラゴンの進撃を辛うじて食い止めている状況だった。

 それを見て、俺たちも加勢する。


 エルフたちの弓矢での攻撃が止んだところを見計らって俺はドラゴンの懐へと潜ると、その胸元を切り裂く。

 さらに、シーナが瞬間移動してドラゴンの頭上後方に現れ、ドラゴンの首を上から下へと切断した。

 ドラゴンの一体を撃破する。


「あ、あなた方は?」


 側にいた兵士の一人が目を丸くして俺たちに尋ねた。


「偶然この街を訪れた旅の者です。とにかくこのドラゴンたちを何とかしましょう」

「は、はい!」


 俺の言葉にその兵士が頷く。

 ドラゴンの一体をあっさり倒したことで士気が上がったのか、兵士たちも雄叫びを上げながら、機敏な動きで残りのドラゴンへと立ち向かう。

 エルフの兵士たちも空を飛ぶドラゴンに対して弓で迎撃を試みる。

 俺たちも負けてはいられない。

 俺は一番近くにいたドラゴンへと目を向ける。


 ドラゴンは兵士の剣を何度も受けるが、その分厚い皮膚に殆ど傷を付けることができていなかった。

 それだけ兵士たちとドラゴンの間にレベルの差があるのだ。

 全くダメージを与えていないわけではないが、この分ではドラゴン一体を倒すのに時間がかかり過ぎる。

 その間にもドラゴンは近くにいる兵士を蹴散らし、周囲の建物や樹木をなぎ倒す。


「好き勝手しやがって。人間を舐めるなよ」


 俺はドラゴンの背後に回ると、ドラゴンの尻尾を真っ二つに切断する。

 さらに何度も剣で斬り付け、体の至るところを切り裂いていく。

 そして最後には頭からその体を一刀両断した。


「す、凄い……」

「なんて速さだ!」

「あのドラゴンを一瞬で倒すとは……」


 側にいた兵士たちから驚くような声が聞こえてきた。

 俺も村にいた頃ならとても歯が立たなかっただろう。

 だが、ここに来るまで何度も戦闘を経験し、レベルが上がった今だからこれだけやることができたのだ。


 そして数分間の戦闘の後、俺たちはその場にいた全てのドラゴンを倒した。

 とりあえず倒したドラゴンが消えた代わりに出現したアイテムを拾っていると、俺たちのところへ年配の兵士がやってきた。


「本当に助かった。ありがとう」


 そう言って兵士は頭を下げる。

 どうやらこの討伐隊のリーダー格のようだ。


「いえ、力になることができて何よりです」

「君たちはまだしばらくこの街にいるのかな?」

「そのつもりですが」

「それではしばらくこの辺りで待っていてくれないか? 君たちにお礼をしたいので町長と掛け合ってこよう」


 そして兵士は町長の家へと入っていく。

 それからしばらく、俺たちは負傷した兵士たちを運ぶ手伝いをしながら待っていた。

 その際に他の兵士に聞いた話によると、俺たちがここにいたドラゴンたちを倒してからまもなく、街に現れたドラゴンは全て倒されたらしい。

 だが、ドラゴンによる被害は深刻だった。

 綺麗だった街並みも、ドラゴンによって壊され、今では辺りに戦火の爪痕が残っていた。


 ふと俺たちの故郷、ギムレーのことを思い出す。

 あのときも同じだった。

 俺たちの村が突然姿を変えてしまった。

 現実はとても非情である。

 だが、だからこそいつまでも嘆いている暇はない。

 すぐにまた次の困難がやってくる。

 だから、その現実に打ち勝つためにも、俺たちはもっと強くならなければならないのだ。

 俺たちが待っていると、先ほどの年配の兵士が戻ってきた。


「待たせて悪かったね。一緒に来てくれ。町長が君たちと話をしたいそうだ」


 その言葉に俺たちは顔を見合わせる。


「分かりました」


 俺が頷くと、そこで兵士は歩き出す。

 その後ろに俺たちも付いて行く。

 そして町長の家の前まで来たところで兵士は振り返って俺たちに言った。


「お礼をする前に、一つ頼みごとをしても良いだろうか?」

「なんでしょう?」

「これから町長と会うわけだが、どうやら町長は今回の活躍で君たちの腕を見込んでドラゴンの討伐隊に参加してほしいとのことらしいんだ。我々としても、ぜひ君たちに力を貸してほしい。どうか協力してもらえないだろうか?」


 そう言って兵士はもう一度俺たちに頭を下げた。

 もちろん俺はその依頼を請け負うつもりだ。

 俺たちは元々ドラゴン退治をするつもりだったので今さらその頼みを断るつもりはない。

 むしろその提案は渡りに船だ。

 単独でドラゴンの討伐に行くよりも、街の後ろ盾があった方が何かと都合が良い。


「ええ、もちろんそのつもりです。こちらこそよろしくお願いします」

「そうか、ありがとう」


 俺は右手を差し出すと、兵士と握手を交わした。


――


 町長の家に入ると、兵士に奥の部屋へと案内され、広い廊下に敷かれた赤い絨毯の上を通って奥へと進んでいく。

 そして兵士が奥の部屋の扉を開けると、続いて俺たちも中へと入った。

 入ってすぐに、部屋にいた年老いた男性の存在が目に入る。

 その老人は部屋の奥にある長い椅子に座っていた。


「……あなた方がこの街を救った旅の方々ですね。どうぞこちらまで来てください」


 老人は俺たちを自分の側へ来るように促す。

 俺たちは言われたとおり彼に近づく。

 俺たちを案内した兵士はそのまま扉の近くに立ったまま控えていた。


「初めまして、私がこの街の町長をしております、ヘズと申します。この度は街をドラゴンから救って頂きありがとうございました」


 町長は穏やかな表情で俺たちにそう言った。

 話す度に町長の白い口髭が上下する。

 そして気付いたが、町長はずっと目を閉じたままだった。

 それに町長の側にある杖。

 ひょっとして町長は盲目なのかもしれない。


「俺たちは力を貸しただけです。街の兵士の皆さんの尽力があったからこそだと思います」

「ふむ、謙虚な人ですね。お若いのに出来た方だ」


 町長は一瞬だけ微笑を浮かべると、すぐに真剣な表情になる。


「ここに来て頂いたのは私から直接お礼を言いたかったこともあるのですが、あなた方にお願いがあって呼んだのです。お話は彼からすでに伺っていますか?」

「はい、俺たちにドラゴンの討伐隊に参加してほしいということですよね?」


 すると、町長は重々しく頷いて続けた。


「ええ、以前からドラゴンとの戦闘は何度も繰り返されてきました。我々も多くのドラゴンを倒してきたのですが、ドラゴンは個々の強さもさることながら数も多く全滅させるまでには至っておりません。それでもドラゴン退治しようと何度も討伐隊を派遣していました。ですが、今回ついにこの街の中に奴らは侵入してしまいました。これはドラゴンが現れてから初めてのことです。我々は改めてドラゴンの脅威を目の当たりにしました。街が破壊され、住民の生活は脅かされ、今後ドラゴンが再び襲ってくるかも分かりません。もはや一刻も早くドラゴンを退治しなければならないのです」


 町長のその声には、それが町長の使命だと言わんばかりの強い決意が籠っていた。

 この街の平和がドラゴンによって脅かされた。

 その事実に強い憤りを感じているのが俺にも分かった。


「どうか、我々の力になってください」


 そんな町長の言葉に、俺はすでに決めていた自分の気持ちを伝える。


「お気持ちは分かりました。俺たちもドラゴンの討伐隊に参加させてください」

「おお、本当ですか? ありがとうございます。本当に感謝します」


 町長は何度も俺たちにお礼を言ったのだった。


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