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第四章 初クエスト

 ギルド支部を出ると、クエストの準備を済ませ、俺たちは名もなき森へと向かう。

 街で馬を借り、イェロヴェリルから馬で三時間ほど進んだ先にある森。

 そこが今回のクエストに書かれていた場所だ。

 辺り一面天高く樹木が伸び、森の中は太陽の光があまり届かないのが薄暗かった。

 森の入口で俺たちはその険しい大自然に息を呑む。


「この奥に魔物がいるんですね……」

「どこからモンスターが襲ってくるか分かり辛いな。レベル差があるとしても油断は禁物だ。注意して進むぞ」


 カイの言うとおり、いくらレベル差があったとしても戦闘になれば何が起こるか分からない。

 予想もしない事態が起こることだってありえる。

 俺も気を引き締めなければ。


 森の入口に馬を繋ぎ、俺たちは隊列を組んで慎重に歩を進める。

 カイが先頭。

 その後ろにレンとシーナが続き、さらに後ろにフィーアとユキが付いていく。

 そしてしんがりは俺が務める。

 この中で最もレベルが高く近接戦闘が得意な俺とカイで前後を固め、後方支援担当となるフィーアとユキを守りつつ進む。

 機動力のあるシーナと補佐役にも優れるレンは遊軍である。

 森の中は足元が悪く、生い茂る草が足に絡みついて行く手を阻む。

 なるべく踏み均された道を進み、時折現れるモンスターを倒しつつ、時には刃物で草を切り裂きながら前進していく。


 すると、途中で開けた場所に出た。

 そこは今までのじめじめした雰囲気とは打って変わって長くて鬱陶しい草も生えておらず、樹木の隙間から日差しが差し込んでその場所を照らしていた。

 俺たち以外にも以前に旅人がここを訪れたのか、中央には焚き火の跡が残っていた。


「ちょっと休憩していくか」

「そうだね。僕もカイに賛成かな」


 カイが後ろを振り返ってそう言うと、レンが頷く。

 俺もその意見に異論はない。

 そういうわけで俺たちはしばし休憩することにした。


「はい、今のうちに複製しておいた薬草を渡しておくね」

「お、サンキュー」


 レンが俺たちに薬草を配る。

 これからさらに体力を消耗する戦闘が起こる可能性は高いので備えあれば憂いなしだ。


 レンの能力はアイテムの複製である。

 薬草のような回復アイテムや武器も複製できる。

 レンがナイフを何本も出すことができるのもこの能力によるものだ。

 ただし、複製には魔力を消費し、しかもアイテムによって消費する量が異なる。

 珍しいアイテムほど消費する魔力は大きくなり、中にはカイの刀のように複製できないものもある。

 しかし、それを差し引いても便利な能力だ。


「はー、疲れたー」

「下が悪いので余計に疲れますね」


 樹木に背中を預け、フィーアとユキが地面に座り込む。


「このような障害物の多いフィールドでは鎌の扱いは気を使うんじゃないか? この機会に別の武器を使ってみたらどうだ?」

「いいえ、鎌が一番使いやすいですから。カイこそ鎌を使ってみたらどうですか?」

「それはありだな。別の武器を開拓してみるのも面白そうだ」


 カイとシーナの二人は戦闘談義に花を咲かせていた。

 それからしばらく各々で疲れを癒していると、途中でレンの姿が見えなくなった。

 何となく俺は気になってレンの行方を探す。

 少し森の奥の方へと進むと、そこにレンが一人佇んでいた。


「一人で何をしてるんだ?」

「森林浴……っていうのは冗談で、ちょっと一人になりたかっただけだよ」


 レンは振り返ると寂しげに微笑む。

 その微笑みに俺はデジャヴを感じた。


「こうして森の中で二人きりでいるとユージ君と初めて会ったときのことを思い出すね」


 どうやらレンも同じことを考えたらしい。

 俺はレンの側まで近付く。


「ああ、あの時はこんなに木ばかりじゃなかったけどな」


 俺が冗談めかして言うと、レンも苦笑した。

 それからレンは真面目な顔で俺に言う。


「ユージ君たちには感謝してるよ。僕の復讐に付き合うって言ってくれたときは嬉しかった」

「むしろ俺たちの都合で遠回りさせて悪いな。本当はすぐにでもアースガルズに行きたかったんだろ?」

「まあね。でも、一度失敗して実感したけど、今の僕じゃロキは殺せない。だから焦らずに君たちの旅に付き合うのが正しい選択だと分かってる。それに、みんなとこうして旅をするのも結構良いものだと思ってるんだ」


 レンは少し恥ずかしそうに笑った。

 その答えに俺も自然と笑みがこぼれた。


「そうか。それなら良かった。何となくレンは今の旅に退屈してるんじゃないかと思ってた」

「そんなことないよ。本当に僕は今の生活に満足してる。君たちに会えて良かった。それに……」


 そしてレンはぽつりと呟いた。


「……たぶん僕は君のことが好きなのかもしれない」


 俺は驚いてレンの顔を見る。

 レンもじっと俺を真剣な表情で見つめていた。

 俺の方が耐え切れなくなって視線を逸らした。


「そ、そうか……」


 突然の告白に言葉が見つからず、俺はただあさっての方向を見ていた。


「でもフィーアさんたちのこともあるから抜け駆けするつもりはないから安心していいよ」


 一体何に安心しろというのか。

 俺は動揺を隠せずにいたが、レンはそれ以上この話題に触れるつもりはないのか、フィーアたちが休憩している方向へと歩き始めた。


「ほら、そろそろ戻ろうか。みんなに誤解されたらいけないしね」


 レンは冗談めかしてそう言ったが、俺にはとても冗談には聞こえなかった。



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