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3.現実は、そんなに甘いものじゃない

ついに、ついに来ましたこの日が!

あの悪役令嬢に逢い、犬になる日が! 見下した態度で接してくれるなら、下僕でもO.K.ですよ。


今から行くのは、ミルフィーユ公爵家。庭には、とってもきれいな薔薇の花が咲いているそうです。女王様に薔薇、なんて素敵な組み合わせなのでしょう。

お父様とお母様は、いつも以上におめかしをしています。気合の入れ方が半端ないです。馬車に揺られているうちに今後のことを妄想して思わず、涎が出そうになりました。あぶない、あぶない、侯爵家の娘としては恥ずべき行為をしてしまいそうになりました。


そしてついに来ました。別名、ブルーローズ・ガーデンと呼ばれるお屋敷に。庭に咲き誇るのはすべて青い薔薇。一面に咲き誇る青は圧巻というか悪趣味というかどう表現していいのか分かりません。こちらの世界で、かなり希少種で入手困難だったはず。 作り方は、白薔薇の蕾がつく前から用意し、純度の高い魔力を持つ者が薔薇に一定の魔力を注ぎながら育てる。熟練の職人でないと作るのが難しい言われている品種です。それに、希少種の魔力の持ち主だからといって、青薔薇を作れるとは限りません。私としては、女王様が住むお屋敷なのだから、赤薔薇を推奨したいですね。


通された屋敷の客間には、さすが悪役令嬢のお父様とお母様というべきなのでしょう。ものすっごく、美形です。お似合いすぎます。思わず、ボーっと眺めてしまいました。あれっ? でも、女王様がいない? 私の女王様は? 私が周りを見渡してキョロキョロしていると、お母様が挨拶をしなさいと言った。

「はじめまして。ミルフィーユ公爵。アイリス・ガレットと申します」

と言って、お辞儀をしました。

「はじめまして、アイリス嬢。すまないね。うちの娘は人見知り過ぎて、部屋から出てこないんだ。お客様が来ると、いつもこんな感じだよ」

悪役令嬢な女王様が人見知り? 人が傅くのが当たり前で、自分大好きな女王様が? ヒロインを蹴落とし、色仕掛けで王太子様を誘惑する女王様が? とあるルートではヒロインと攻略対象者を犬にする女王様が? うまくいけば、犬の中に私も入り込もうと思ってたのに! なんてことでしょう。 私の夢や野望は、どうなるの? 女の子の胸には、夢や希望が詰まってるって言ってた人がいたけど、もはや女王様の胸には、絶望しか詰まってないよ!

私の夢が叶えられなくて、絶望しているその時にお父様は、

「同じ年の女の子に会う機会がないから、楽しみにしていただろう。そんな風にたってままでいないで、会いに行こう」

と私の手を引っ張って、ミルフィーユ公爵を先頭に女王様のお部屋まで歩きだしました。

そうだ、まだだ、諦めるのはまだ早い。女王様になる片鱗が見れるかもしれないじゃないか。 お嬢様だから、高慢になってるかもしれないじゃない。私は意を決して、女王様の部屋に入っていった。

そこで、私は絶望をすることになる。女王様のお部屋にしては、女の子女の子しすぎている。部屋にあるアンティーク調のテーブルと椅子の方を見ると、テーブルの上にチョコレート菓子を広げて、口の周りをこれでもかってほど汚しながら、チョコレートを食べている女の子がいました。

私は驚きのあまり、思わずその女の子を指差して、声が出ないまま固まってしまいました。悪役令嬢は、幼い頃から同じ年の子どもに比べて礼儀が完璧だったはず。こんなはずじゃない。今この瞬間、私は乙女ゲーム系の小説で乙女ゲームの世界に転生して逆ハーを目論むヒロインが思い通りにならなかった時の気持ちを思い知った。彼女たちは、自爆してだけど。あの女の子を見ると、女王様になるお顔をしているのに、こんなのは詐欺レベルです。こんなのありえないと思い切り叫びたい!

思考の海に沈んでた私は気を取り直し、口を汚したままの女の子に挨拶した。

「はじめまして。アイリス・ガレットです。以後、お見知りおきを」

「こちらこそ、はじめまして。カトレア・ミルフィーユでしゅ」

恥ずかしさのあまり、思いっきり噛んだようです。もうなんかいいやと諦めの心境で、ハンカチを取出し悪役令嬢で女王様になるはずの少女の口周りを拭きました。

「ありがとう」と少女もといカトレアが言いました。あとは子どもだけでと言って、両親たちはカトレアの部屋を出て行きました。

それ以降は、カトレアの部屋にある絵本を読みました。彼女は文字が読むのが苦手のようで、私が絵本を読み聞かせました。前世の年齢と合わせると、【以下、自主規制】になるので、暇を持て余していた私はお母様とお父様に字を習って、本を自分で読めるようにしたのですよ。

数時間たってから、両親たちが来ました。お母様はどこか満足そうで、お父様はすごく疲れた様子でした。お父様は大丈夫なのでしょうか?


帰りの馬車の中では、お母様は終始笑顔で、お父様と私は魂の抜けたような顔で過ごすのでした。


今日は、ものすごく疲れた。夕食を食べた後に歯磨きして、即ベッドの中に入ろうと思います。

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