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   秘密が段々増えていきます。

精霊に会い、見知ったことを物語として書いてくれればいい

そう言いませんでしたか、クロノスさん。


何故、私が世界を改造することになっているのでしょうか?


『冥府』という死者の世界を造って、新しい精霊を造って、

休日を使うことになるとは言われましたが、クロノスさんのおっしゃる限りではこの先数年の私の休日は無くなってしまうようですね。私に休まる日はないということでよろしいでしょうか?




土建屋さん人形の姿をしたクロノスがサラッと言った内容があまりにもブラックな仕事量だった為、私は無意識の中でクロノスの体を握り占めようと両手に力を込めています。

一体、私は幾つの物語を書くことになっているのか、足元に広がる灯の光景に、今さらですが了承した事を後悔し始めています。


「いたったたた!」

自分の体を握り占めようとしている私の手をバシバシと叩き、ギブアップと言いたいようですね。


「いやいや。お前は、本当に物語を書いてくれればいいんだ。

 それを元に『冥府』の中身を造ろうと思ってるだけでさ。」


開放するとクロノスさんは空高くに飛び上がり、私の手が届かない高さに止まっています。

「お前たちの世界には『冥府』に関わる神話が幾つもあるんだろ?

 それを参考にしたいって言ったらタグたちはあまり知らないっていうし、どうしたもんかとただ闇雲に空間を広げて魂を保管するだけだった。後少ししか時間も無いけどなぁっていう時に見つけたのがお前だ、リリーナ。タグがお前なら、そういう神話とかにも詳しいだろうって言うしよ。」

なんか、そこだけ杜撰じゃありませんか?

そりゃあ詳しいですよ、神話。中二病発病した時とかに詳しくなりました。

でも、私を見つけなかったらどうするつもりだったんでしょうか。


「そん時は地道に、こういう伝承があるって認識を広める広報活動する予定だったんだよ。計画を考え始めてからの、精霊でも長いって感じる時間を掛けて少しずつ浸透させてきて、当初の予定の3割くらいは出来上がってる。世界の崩壊を回避する事柄を優先してきたから、ギリギリ回避出来るか出来ないか辺りだろうってくらいにはな。

お前が現れてくれたおかげで、回避した後に少しずつ進めていこうと思った事がのんびりやっても数年で終わりそうだし、なんだったら諦めかけてた計画も遂行出来そうでな。

感謝してるよ、お前には。」


素直に疑問を口にすると、悪どい笑い声が上空から降り注いできました。

つまり、私が年に二回の祭典前以上の修羅場を経験しそうな原因は、貴方が計画を増量したからですか。世の中、仕分けの時代ですよ?諦められるものなら諦めたままでいて下さい。


「そういえば、『闇の精霊王』様はどちらに?」

アニメとかの敵の幹部のように暗闇で笑い続けているクロノスを止められそうなのは彼しかいないと、ヘクスへと問いかけた。我関せずと後ろの方で息を潜めていたヘクスが、この場所に向かう前にクロノスと一緒に先に行っていると言っていたはずです。なのに、待っていた人影はクロノスただ一人。

「あぁ!リリーナちゃんがどんな事言ってもいいように空間拡張中っす。」

「拡張?地の精霊じゃなくて『闇の精霊王』様が、ですか?」

ここが地下深くなら、大地を操る力を持つ地の精霊の力を借りた方が早い筈。

「地の精霊に協力してくれる奴も居るんっすけどね。

 あんまり大規模に力使ってもらうと、『地の精霊王』にバレちゃうんっすよね。」

バレたらヤバイんですか?

「リリーナ。お前も他言無用だぞ。

 まだまだ、明かす時ではないからな。邪魔される訳にはいかねぇ。」


「邪魔って、世界を救うのに邪魔をするような人がいるんですか?」

「脆弱で短命な人間如きに己の存在を左右されるなんてって考える馬鹿がいるんだよ。そっちに関しても、対策は考えてある。お前にもちゃんと協力してもらうからな。」


はっははははは!!


なんだか、悪の組織に属した気分ですね。

悪どい高笑いを続けながらも、こちらの会話を聞いていたのでしょう。

クロノス様の声が再び空から降ってきました。


ですが、上から見下ろされて高笑い声を聞くって、ちょぉぉぉっとイラッとしてきました。きますよねぇ?

「ちょ、リリーナちゃん何す」

「『冥府』が出来たら、基本的な管理は『闇の精霊』たちにして貰う予定だ。お前の考える話次第では、他の精霊たちにも協力させるが、な。あぁ後は、ここに保管してある死者たちから使えそうなら『冥府の住人』にして仕事をさせても構わん。死者たちの保管は、プルートに任せてあるから奴にどんな人間だったか聞けばいい。精霊にして欲しい死者に関しても、プルートに任せてある。

じゃ!後は頼んだ!!」


あんまりにもイラッと来たので、何か投げつけて落としてしまおうかと足元を探りました。

岩を削ったような地面には丁度いい感じの小石がコロコロと。

人形サイズの彼には丁度いい一撃となるでしょう。


そう考えていたのに、ヘクスが余計な声を上げたせいで奴に感づかれてしまいました。後は投げるだけだったのに。


言いたいことだけ言って、姿をくらませたクロノスさん。

逃げ方まで悪役っぽいですね。

しかも、去り際まで高笑いしながらでした。


「あーっと、ボスんとこに案内するっすね。」


邪魔しやがってと睨みつけたのですが、ヘクスは目を逸らしました。


案内してくれると言っても、こんな灯の玉ばかりで足の踏み場もないところをどうやって歩けばいいのかと口に出そうとしたところ、空に浮かんだヘクスに腕を掴まれ、引っ張りあげられました。

「ここ、闇で満ちてるんで地面に落ちることは無いんで、怖くないっすからね」

驚きと恐怖に、ヘクスにしがみつきます。

安心していいっすよって言われても、人間は空中に浮かんだ状態に安心なんてしないんです。


「あっ、そうそう。

これから闇の精霊がちょくちょく連絡とかでリリーナちゃんの所に顔を見せると思いますけど、俺以外は『冥府』のこと知らされてないんで。リリーナちゃんも内緒っすからね?」

「面倒・・・」

思わず、ポロリと本音が。

「クロ様って悪戯好きっていうか秘密主義っていうか。

多分、ボスとかタグっちにも計画の全部明かしてないんじゃないっすかね。

まぁボスってクロ様たちの事疑おうとしないんで気づいてないみたいっすけど?

ボスって『プルート』って名前くれたタグっちとかクロ様の事、大切な友達って大事にしてるんっすよ。

認めた相手にしか名前を呼ばせないとか、マジかわいいっしょ。」

そういえば、自己紹介タイムの時に『闇の精霊王』様だけ名前を教えてはくださいませんでした。

とっとも良いモエェですね。

次のネタにしてもいいですか?

「闇の精霊と光の精霊は『冥府』以外のクロ様の計画については知ってるんで、何かあったら頼ってくれていいっすよ?あとはまぁ追々、紹介するっすね。リリーナちゃんには、そいつらの『精霊譚』も書いてもらわないといけないっすから。」

「本当に過剰労働な気がするのですけど・・・・」

「頑張った分だけ、ご褒美貰えばいいんっすよ。

 例えば、精霊にしてもらうとか?」

「そういうのは興味ありませんから。」

「えぇ~リリーナちゃんが精霊になったら楽しそうなのに。

 じゃあ、即売会に関してならどうっすか?

 実は、保管されてる死者の中にっすね~」



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