第漆幕:計画と関西弁
オレは一生、アンディゴの為に働くつもりだった。オレにそう思わせたのも、一人の先輩のお陰なんだけど。その人は過激派だったアンディゴを、元に戻そうとした唯一の人だった。だからある日、先輩はチームの過激派に殺されてしまった。もちろん、リンチで。それがキッカケでオレはアンディゴを抜けた。酷い制裁を受けて。
「真っ青な刺青はアンディゴの誇りなんだよ」
翌日、事務所で犀が煙草をふかしながら、諭すように言った。
「しっかし、どうするかな。アンディゴに関わるとロクなことがねェ」
犀が頭をポリポリと掻く。それから、チロッと梗哉の方を見た。
「……何だよ」
「お前なら行けるな」
ボソッと犀が呟いた。すると、謙太郎が急に立ち上がった。
「犀の兄貴! そりゃ無茶ッスよ! ぼっちゃんにはまだ早ェ!」
梗哉は一人、不思議そうな顔をしている。何の話をしているのか、ついていけていないのだ。
「謙太郎、早くねぇよ。いくつだと思ってる?もう18歳ぜ?」
フンッと犀が鼻で笑った。梗哉はムッとして、立ち上がった。
「何でもやってやるよ! 言ってみろよ!」
「ぼっちゃん!!」
売り言葉に買い言葉だ。梗哉は見事に犀に誘導された。
「よーし、良く言った! じゃ、アンディゴに潜入しろ」
犀はニコニコと爽やかに言い放った。梗哉はポカンとした顔になる。
「……は?」
隣で謙太郎は頭を押さえていた。
「だーから、アンディゴに入隊するんだよ!」
「オレが?」
うん、と犀は首を一度縦に振る。
「何でもやるんだろ?」
ニヤリと笑う犀の顔は、とても憎らしかった。梗哉は謙太郎の方を見たが、謙太郎もご愁傷さま、と手を合わせていた。
「分かったよ。やってやるよ!」
梗哉は顔を歪めながら、ケッと言い放った。
「犀の兄貴ィ。やっぱ無茶ッスよぉ」
梗哉が準備している間、謙太郎が力なく言う。犀はのんびりと煙草を吸っている。
「過保護だな、おめェも」
ケケケと笑う。そしてポケットの中から小さな機械を取り出した。
「見ろ。発信機アーンド盗聴機!これがあれば、オレ達も楽だろ?」
今度はヒヒヒと笑った。謙太郎はガクッとうなだれた。
「あ、あと、春日部を付けるから」
「はぁ!? 信弥を!?」
「おぅ。これでお前も安心だろ?」
「いや、寧ろ更に心配に……」
大丈夫大丈夫、と犀が笑った。謙太郎はもっと文句を言いたかったが、それを遮られた。
「湍水さーーーんっ!!」
バターン、と元気よく信弥が入って来た。
「よっ!」
犀がパッと手を挙げる。信弥はニコニコーッと笑う。
「湍水さん! オレ、一生懸命働いて来ます!!」
信弥は目をキラキラさせて、犀に訴えた。
「おぅ、頼んだぜ」
謙太郎はガクリとして、黙ったままだった。信弥は謙太郎に気付き、話し掛けた。
「お! 瀧田やないか! なんや元気ないなぁ。どうしたん?」
信弥は関西出身の為、関西弁を話す。しかし犀に対してはシッカリと敬語を使った。
「いや、何でもない。ぼっちゃんを頼んだ」
「お前に言われんでも、湍水さんの頼みや。やったるわ!」
ポンッと胸を叩いた。信弥は背が高く、しっかりとした体つきなのに、話してみると幼い印象を受ける。謙太郎はそれが心配だった。
「安心しぃ。オレかて、大人なんやから!」
信弥がそう言った後、梗哉が準備を終えて出てきた。
苦労人の
溜め息が
小さく零れる。