第参幕:骨董品屋のオヤジ
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母親が死んで、それから連れて来られた場所は、梗哉の人生を一変させた。決して母親の事は好きではなかったが、母親の方がマシだ、と彼は思った。母親が離婚した父親は葛西組の頭で、梗哉に後を継げと迫る。17歳になって付けられた教育係は、年齢不詳の性悪男。周りには気性の粗い奴らばかりだ。元々梗哉はケンカっ早い方ではあったが、ケンカといってもせいぜい殴り合いくらいで、ナイフや銃が取り出される事など絶対になかった。ここでの生活は、余りにも今までと違いすぎる。
「オーヤージー! オレさ、腹減ってんの! 早く美知香ママの店に行きたいんだよ」
美知香ママとは、この辺りでちょっと有名なスナック「ミチ」のママのことである。犀はさっきからずっと机をバシバシ叩き続けている。
「オヤジ、頑固にならないでさ。別にやましいことなんてないんでしょう?」
謙太郎が必死に説得する。梗哉はそれらをボーッと見ていた。特にやることがないのだ。すると犀が恨めしそうな顔で見てきた。
「おい、ガキ」
「……ガキって言うな」
「お前も手伝えよ」
「何を?」
「バーカ、オヤジの説得に決まってるだろ!」
犀は頭を掻き、やってらんねぇぜ、と文句を言った。
「しつこい奴らだ。もう帰ったらどうだ?」
ふん、と佐仲が此方をチラリと見た。
「アンタが口を割らないからだろ? というか、何か知ってるだろ!」
ジロッと犀は佐仲を睨む。佐仲は目を閉じたまま、動じない。
「そッスね。オヤジ、犀の兄貴のことは嫌いだけど、いつもはもっと協力的な気がする」
謙太郎も犀の意見に賛同した。犀はクエスチョンマークを浮かべながらも、うんうん、と頷いている。
「絶対何か隠してるだろ!」
「……顔見知り」
ボソッと梗哉が呟いた。佐仲の肩がピクリと動く。
「あん?」
イラッとした様子で犀が聞いた。梗哉はジッと犀を見る。
「だから、犯人が顔見知りだったんだよ」
「成程! それでオヤジは口を割らないんスね!」
謙太郎がポンッと手を叩く。犀はフッと笑った。
「何だよ」
「いや? 見掛けによらず知性派? なーんてな」
クックックッと笑う。梗哉はムッとして、そっぽを向いてしまった。
「で? オヤジ、そうなのか?」
「……」
「オヤジ!」
「……そうだ。よく見知った顔だったよ」
「さすがぼっちゃん!」
謙太郎が手をパチパチと叩いた。しかし梗哉は無反応だ。
「誰だったんだんだよ」
「……孫だ」
ふぅ、と溜め息をつきながら、低い声で溢した。
「孫ォ!?」
ガタッと犀は座っていた丸椅子を立ち上がった際に蹴飛ばした。それを謙太郎が丁寧に起こす。
「孫って確か、すっげー可愛いあの子じゃ……」
「明花ちゃんッスよね」
犀は少し黙って、チロッと謙太郎を見た。
「何で名前、知ってんだよ?」
「いや、ちょっと知り合いで……」
謙太郎が少し焦りながら、必死に言い訳した。犀は不満そうな顔をしたままだった。
「まぁいいか。じゃあ、オヤジ、ゆっくり話を聞かせて貰おうか」
そうなりたい訳じゃないのに
いつのまにか
必死に