プロローグ
もう、この世界で生きていくのは辛すぎる。
僕は、目を閉じた。
気が付けば、僕はどうしようもない人生を歩んでいた。
ただひたすら闇と言う名の途を歩く。
目は開いている。耳も傾けている。口も動いている。息もしている。
なのに、心は酷いものだ。
心の奥から沸き上がる懺悔の念に、弁を明かそうともがく自分。
――あぁ、こんな今になるとは。思いもしなかったんだ。
ただ、自分に素直になって、全てを投げ出して、違う途を歩みたかっただけだ。
それまでの自分に嫌気がさしてたんだ。
なのに、僕の周りを囲む人々の目は厳しい。
――ああ、そんな目で見ないでよ。
人は皆が同じじゃなくてもいいはずじゃないか。
なんなんだよ、どうして同じを求めるのさ。
だけど、気付かされるのは、今僕はこの世界で生きていること。この世界で生きるということは、暗黙の了解のうちに仕立てあげられたこの世界のルールに従わなければならない。その時、理解したんだ。
――僕は既に違法人だ。
そうだ。だから、そんな目を向けられて非難を浴びなければならなくて、弁を明かそうとも誰も聞いちゃくれないんだ。
何時しか言っていた。
「――君は、個性豊かね」
個性とは称賛されるべきものだろう。なら、なぜ僕は非難されるのさ。この世界は、いかほどに複雑なのだろうか。僕のちっぽけな頭では、理解など出来なかった。
だから僕は、この世界と別れるべく、目を閉じたんだ。