69刀
「理事長はんが試合を見に来るなんて、珍しいなぁ」
「ちょっと、ね。」
「じゃぁ、うちはこれで…」
「【錯創削】」
「!!!?」
突然展開された能力に、うちは戸惑った。
とりあえず回避のために、【蜃気楼】を発動。
後ろに飛んで回避した。…けど。
「なにしはる…んぐ!?」
「Good nignt.」
クロロフィルムのにおい。
私はなんで理事長が背後にいるか分からず、意識を手放した。
「あらまぁどうしましょう
帰ってきたみたいで御座いますわ。」
「…?」
床の温度も冷え始めた頃。
組織内の誰かが帰ってきたと、私は悟る。
逃亡は結局できなかった。
「ヘズ。目隠し取ってやれよ。」
「無理なのを分かって仰っているんでしょう?
性格が悪い神官様。」
「お前をノア様が溺愛してるから、妬ましいんだよ
って奴もいるから気をつけろよ」
「心に刻んでおきます」
話し声とともに、目隠しが外された。
「御機嫌よう、改めましてヘズと申します。」
長い髪を後ろで一つにくくった、穏やかな盲目の女性が言う。
「俺は只の神官、アヌビス。」
アヌビスの面と長いマントを羽織った男性らしき人が続けて言う。
「ちょいと用事だよ。ほら行くよ。」
アヌビスに手錠を引っ張られ、どこかにつれていかれた。