(初稿版)第二章・第五節:──そして、26年後
1973年10月9日 OIA本部地下第5記録庫(ワシントンD.C.)
蛍光灯の脈打つ音が、かすかに響いていた。
アーカイブ担当官G・S・モールスは、黄ばんだ革表紙の一冊をパタンと閉じると、
表紙の金文字を読み上げるように、かすれた声でつぶやいた。
> 「“我々は記憶によって統治されている”、ね……」
彼は鼻で笑った。
ポケットから紙巻タバコを取り出す仕草をしたが、
吸う前に思い直して、そのまま記録箱にしまい込む。
> 「狂人の戯言も、26年も経てば政策になるってわけだ」
古びた金属製の棚に、その分厚い報告書を一冊ずつファイリングしていく。
分類コード「Σ74」
タグ:「戦略的記憶制御・最終文書」
アクセスレベル:「ECHO-IRON」──OIA内でも5名しか開示許可を持たない。
ファイルをスロットに押し込みながら、彼は最後にぽつりと漏らした。
> 「なあ、ドロス……この“安全保障”、誰を守るためのものだったんだ?」
スロットが“カチリ”と音を立てて閉まる。
その瞬間、記録が“記憶”に変わる。
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【第四節:OIA最終報告書抜粋(1973年提出・暗号指定:ECHO-IRON)】
> 【分類:最終戦略資産評価報告】
【報告書番号:OIA/FIN-REP/73-Σ74】
【提出日:1973年10月9日】
【提出先:国家安全保障会議/戦略情報局/合衆国連邦大統領室】
【編纂責任:A. ドロス(戦略調整官・OIA初代長官)】




