(初稿版)第六章・第三節:「北に戦争を起こさせろ」――OIAの導火線
マーシャル・プランは形になった。
黄金の潜水艦という幻から生まれた偽ドルは、欧州復興の名の下に洗浄され、世界経済に“正当な通貨”として流通した。
ドロスの笑みは深まったが、資金の供給元としての**“幻”は、やがて飢える。**
次に必要なのは、**再現性のある“麻薬的依存”**だった。
ただの紙幣では国家は回らない。中毒構造が必要だ。
ドロスが次に目をつけたのは――朝鮮半島北部。
敗戦時、旧日本軍が開発・製造していた高揚剤・鎮痛剤の工場が、ソ連の管理下で眠っていた。
その規模、立地、そして秘匿性。どれを取っても、麻薬経済の“聖地”として理想的だった。
だが、問題があった。
北緯38度線の向こうは、ソ連の影響下。
ヤルタ会談で“赤く染まった”この地に、OIAが直接手を伸ばす理由など、どこにもなかった。
いや、**“なかったことにしなければならなかった”**のだ。
では、どうする?
答えは単純だった。
「北に、最初の一発を撃たせろ」
そのためにOIAが仕込んだのが、「空白」という名の策略だった。
ディーン・アチソン国務長官の防衛線演説――
後に**“アチソン・ライン”**と呼ばれることになるあの一文は、最初から罠として設計されていた。
> 「アメリカの防衛線は、アリューシャン列島から日本、沖縄、フィリピンに及ぶ」
一見、何の変哲もない定型句。
だが、そこに韓国の名はなかった。
北朝鮮指導部は動揺した。
南を武力統一する機は熟した。
“アメリカは韓国に干渉しない”――そう、読ませるための仕掛けだった。
この“空白”を見せられたソ連は、半信半疑ながら北進の許可を出す。
中国は、まだ介入のタイミングを計っていた。
そして、1950年6月25日――北朝鮮軍が38度線を越える。
作戦名:「ECHO-REACT(回響作戦)」
目的:「北の手で戦争を始めさせる」
OIAの思惑は、完全に的中した。
こうしてアメリカは、国連の名の下に“防衛”として朝鮮半島に介入した。
戦火に紛れて、OIAは北部地域の“再建事業”に名を借りて工作員を送り込み、
旧日軍製薬施設を掌握。麻薬生産ルートを確立した。
> 「空白が火を呼び、火が煙を隠す」
ドロスは言った。
「それが、理想的な戦争の始め方だ」




