1.荘厳なわたし
ここはサンクティア聖国の中心部、王都に在る、聖なる神殿。
その一室。真っ白な鏡台の前に座っているわたしこと、ベアトリクス。
何度目になるか分からないけれど、鏡の中の自分を再度眺める。鮮やかな紫で彩られたくりくりのおめめに、 腰まで届く煌々しい白金の髪は柔らかくウェーブしている。ちょーっと低めの身長。我ながら華奢な体は、神殿より支給された純白の衣装に包まれていた。
あ〜わたしってば神々しい。いえ、それだと神様への不敬になってしまうかしら。それはダメよ、だって私は敬虔な聖女なの。そうね…つまり完璧なのだわ。人ならざる美しさなのよ。
そんな物思いに耽りつつ、鏡に映る自分を穴が開くほど見つめていた。
「聖女様、お時間です」
「……はい。参ります」
鈴が鳴るような声音で答える。あ〜全人類がひれ伏す可愛らしさ。この声を聞いて震えないヤツ居るの?居ないわよね!これから衆目の前へと出向き、奇跡の御業を見せつけ……もとい、ご覧に入れて差し上げるのだ。感謝するのよ!わたしにではなく、神様にね!
長い廊下を抜け、神殿の外へと歩み出る。透き通った青い空の下へ姿を現すわたし、きっと腰が抜ける程美しいに違いない。ほら、皆わたしを見て恍惚としているわ。あ〜わたしもこの芸術品たるわたしを見たい!オイそこの鼻たれ坊主、おまえの視界をわたしに寄越せ。
な〜んてことを考えているなどとはおくびにも出さず、しずしずと定位置へつく。
「皆様、本日も良い天気でなによりです。こんな日は、日々を懸命に生きておられる方々への祝福が、より一層強く感じられることでしょう」
なに言ってんだ?って思うよね。もうわたしもよくわかんない。とりあえずおまえら息災でいろよ、的ななんか、そんな感じ。はい、ここで奇跡。わたしが両手を自分の胸元(※ボリュームはそれなりにある)にあて、目を瞑る。
───この場にお集まりの方々に、神のご慈悲を……
曇り無き心で、そう願う。すると、空が一瞬白く輝き…そしてちらちらと、銀色の粒子が降り注いできた。それに触れた人々から声が上がる。
「わぁっ…指の怪我がなくなってる!」
「腰の痛みが消えたよ…!?」
「えっ?昨日夫婦喧嘩で開けた壁の穴が塞がってる……!!」
いや最後のは知らん。家族が直したんでしょ、ちゃんとお礼言いなさいよあんた。などと声に出すことはしない。聖女なので。穏やか、かつ美しい笑顔を皆様へ向けて深く一礼する。
「これも神の思し召しです。皆様が敬虔である限り、神の愛が尽きることはないでしょう」
そう告げ、隣の建物…聖堂へと移動を始める。神へ祈る、という毎日のルーティンがあるのだ。面倒などとは思わない。わたしは日々、こんなに美しくしていただいた感謝を熱烈にお伝えしているのだ。それもこれも世界が平和であるから!わたしの村も、とんでもなく辺境なのに平和だった。そのお陰でこんなに美しくなれたのだ。本当に、こんなに美しくしていただいて(無限ループ)
っと、いかんいかん。まだ聖堂に着いてないのに頭がお祈りモードになってたわ。謎にキラキラ輝き始めたわたしを信徒さん達が見てざわざわし始めている。引っ込めー、一旦引っ込めー。こんなことでお小言言われたくないよー。
そんなこんなで聖堂へ到着。ああ、いつ来ても落ち着く。
さあ、今日も元気にお祈りするぞー!!




