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Lv.BLACK  作者: 朝日野 夕
11/11

潜入①

虹彩が目に滲む。


朝か。


意識の覚醒と共に直感する。


目覚まし時計があるわけでもないのに、レックスはいつも同じ時間に目を覚ます。普段なら身体が覚えてしまったせいで、もう少し眠りたくても、目が冴えきって、眠りにつけないが、時刻を確認すると、もう夕方に近い。どれだけ眠っていたのだろう。数十時間……いや、日付を確認すると丸一日寝ていたようだ。


大きく伸びをしながら、ベッドから出る。評判の良い低反発のマットレスに買い換えたは良いものの、そもそもベッドを使う機会が少ないし、身体の痛みも改善されない。オーバーワークが祟ったか。


寝起きのせいか、目がしぼむ。こんな時はさっさと顔を洗って、余計な睡魔を洗い落とそう。洗面所には余計なものが無く綺麗に整理されている。と言っても、仕事で家を空けることが多いせいで、ただ単に物を置かないだけなのだが。


蛇口をひねると勢いよく水が流れる。


冷たい水が心地いい。


長く伸びた長髪を結んで、新鮮な空気を吸い込む。


快晴の火曜日。


大きなあくびをしながら食事の準備を始める。その前に、仕事用の携帯端末を確認する。仕事の依頼や、"それ以外"のメッセージを受けるための端末。


端末のメッセージは二つ。まずひとつは、タシギからだ。昨日の朝、家まで送ってもらった際に、なんと無く連絡先を交換したのだが、何かあったのだろうか。廃工場まで送った報酬がまだ来ていないことに痺れを切らしているのか。


恐る恐る、タシギからのメッセージを確認する。


『こんばんは。タシギです。昨日はお疲れ様でした。あれから、R.Eさんの容態はどうなりましたか? 車を預かっているので、お返しに行きたいのですが、退院するまでどれくらい掛かりそうか折り返し連絡してくださると嬉しいです。


――追伸。


コンジットに復帰しました』


あの女、結局コンジットに復帰したのか。まぁ、彼女ほどのスキルがあれば、コンジットでも充分、食っていけるはずだ。これから先、仕事を共にすることもありそうだし、この関係は長く続けていきたいものだ。


次のメッセージ。R.Eからだ。


『退院できる。迎えに来い』


短いメッセージ。アイツらしいな。タグの下でどんな治療を受けたんだ。あのダメージをたった一日で修復できるなんて、さすがはタグと言ったところか。


そうとなればさっさと迎えに行ってやらなきゃな。タシギにも返信しておくか。


『今日の夕方、ミッドナイトの"ウィッチ・スコープ"に来い』


間を置かずに、端末からOKと描かれたホロスタンプが浮かび上がる。ちょうど、ブロックフードがレンジで温まり、スナックが出来上がる。味はトマトソースベースのイタリアンピザ。飲み物はコーヒー。ブロックフードの酸味とコーヒーのコクが絡み合う。


ひとり暮らしは楽だが、味気ない。十年前に他界した祖父の料理の味を思い出しながら、一口、ブロックフードを頬張る。


テレビのリモコンを手に取り、チャンネルをニュースに合わせ、モニターを眺める。第二地区で、ギャングたちの抗争があったらしい。ロングヘアのアナウンサーが機械のように生気のない声色で伝える。最近、ギャングたちの抗争と言う言葉をよく聞くようになった。


世も末だなと思いつつ、チャンネルを変える。チワワが前足でボールを転がす映像が映る。器用だなと感心する。


前に負った傷口を見る。腹部にできた傷は綺麗に塞がっている。タグの腕がいいのか……それとも、レックスの回復力が異常なのか。そんなことを考えながら、空になった皿をキッチンに置き、身支度を済ませて、家を出た。

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