ファンからのぬいぐるみ
「私は確かに、前のライブで『ちょっと変わったぬいぐるみが好き』って言ったよ。でもさ、だからってこんなにレアなぬいぐるみばかり集まることある?」
ぬいぐるみの山を前に半ば呆れつつ、溜め息をつく私を「まぁまぁ」とマネージャーが宥める。
寒い中、頑張って屋外ライブをしたらファンのみんながマフラーや手袋をステージに投げて差し入れしてくれた。それ自体は素直に嬉しいことだ、ただ先日の私のぬいぐるみ発言でどこぞのフィギュアスケーターみたいにぬいぐるみも投げ入れられたのにはちょっと面食らった。
とはいえ、きちんと回収したぬいぐるみは全てファンからの贈り物。一つ一つ、マネージャーと共に丁寧にチェックしていく。
「えーと、まずはこの白いぬいぐるみ。餅みたいですね、中央を引っ張ると焼いて膨らむところが表現できるみたいです」
「ギミック系のぬいぐるみかぁ、結構面白いね」
「こちらはニンジンと大根のぬいぐるみがセットですね。生地の色変えただけでデザインがほぼ同じです」
「そういうこと言っちゃいけない」
他のファンと被らないように、という配慮なのか本当に珍しいぬいぐるみが多い。みんな、どこで買ってきたんだろうと思いつつぬいぐるみを確認していく。
「えっと、これはセットですね。犬、サル、キジ鍋のぬいぐるみです」
「桃太郎さん、なんで一匹調理しちゃったの?」
「これはバヌアツ産バヌアツ牛のバヌアツステーキのぬいぐるみです。ちゃんと『バヌアツ』って書いてあります」
「作った人、絶対『バヌアツ』が何か知らないで作ったよね」
中には、ちょっと反応に困るぬいぐるみもある。
「あ、また白いのが……これは和式トイレのぬいぐるみですね」
「トイレメーカーなら需要が……いや、むしろメーカーが自主的に作ったのかな」
「洋式もありますよ」
「アイドルはウンコしませーん」
まぁ、それでも純粋に「ぬいぐるみ」してるだけマシか。思いながら、マネージャーが「これはダメ」と避けた方のぬいぐるみに目を向ける。
「カメラに盗聴器、GPSにサーモグラフィー。どれも小さくて、見つけるのに苦労しましたよ」
「サーモグラフィーは、何をどうしたかったのかな……」
「体温を感じたかったんじゃないですか?」
何それ怖い。
アイドルとしてその手の贈り物は慣れたものだ、けれどつい感じてしまう本音を咄嗟に飲み込む。それでもマネージャーは続けた。
「それから髪の毛、血、爪、歯……これは、今回もお祓いが必要ですね」
「あー、またかぁ」
色々な「念」が込められていそうな、怪しい贈り物。こちらもまた、慣れたものだがお祓いを何度も経験しているせいで霊媒師さんとすっかり顔馴染みになっているのが悲しい……
……できれば、ドームとか武道館のスタッフさんと顔馴染みになれるように頑張っていきたいな。
まだまだアイドルとしては未熟な自分を嘆きつつ、それでも危険なものは入っていない純粋な「贈り物」としてのぬいぐるみを私は大事に抱きしめるのだった。




