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宇宙人監視指令

作者: 活呑

この街には宇宙人がいる。

三年も前から、ひっそりと一般社会に溶け込み、生活している。


夜中に空が光ることもなければ、街の人間が消えることもない。


「あ、帰ってきた。定刻通り。レジ袋あり」

「いつも通りだな」

「【松】は定刻通り帰宅した っと」


笹山が腕時計を流し見し、双眼鏡を覗き込みながら報告を上げる。

それで、十分だった。


コンビ三年目。

安アパートの一室で、二人。

ずっとターゲット【松】の観察を任務としている。


この部屋にある家具は最低限だった。

折り畳みの机と、椅子が二脚。

床にはそれぞれの寝袋が転がっている。

布団はない。買っていない。


キッチンで、やかんが音を立て始めた。

火を止め、カップ麺にお湯を注ぐ。


「食事が済んだら交代しよう」


「了解です。俺、コンビニで何か買ってきます」

一拍置いてから、続ける。

「……そろそろ布団、買いませんか。寝袋だと体、ガチガチで」



「やめておけ。戻れなくなるぞ」



理由は言わない。

言わなくても分かる種類のことだった。


「……ですよね」


それ以上、話は広がらない。

カップ麺の蓋を剥がす音だけが部屋に残る。



「明日の報告会は、俺の番ですね」

笹山がため息交じりに言う。

「特記事項なし、ですか」


「あぁ。いつも通りだ」


麺を啜りながら答える。

報告書は定型文で済む。

事実のみ。推測は書かない。

感情は、そもそも項目がない。


「明日は燃えるゴミの日だから、ついでに出しておいてくれ」


「了解です」



笹山は双眼鏡を置き、立ち上がる。

上着を羽織り、鞄を肩にかける。


「【松】の監視、よろしく頼みます」


「ああ」


玄関のドアが静かに閉まる。

残された部屋には、やかんの余熱とカップ麺のにおい。

双眼鏡を手に取り、視線を戻す。

ターゲット【松】の部屋の灯りは、まだ消えていない。



笹山は、部屋の外で大きく体を伸ばした。

「3年か…」

異動願いの下書きは、鞄の底に入っている。

書いたのはずいぶん前だ。

だが、提出はしていない。



今週の報告も、特記事項なし。

今日も、宇宙人は定刻通り帰宅した。



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