謁見 70
「酷いですよ、リネア王女。僕は心からの謝罪を……」
「もう止めて、私が悪かったから!」
ついには頭を抱えてしまった。そんなリネアを見てから、イリーニャに視線を向ける。イリーニャは僕たちのやり取りを見て肩を揺すって笑っていた。
「イリーニャからも擁護してよー。僕は真面目に謝っているのに」
そう言うと、イリーニャは更に笑い、上手く喋れずにいた。ツボに入ったな、イリーニャ。面白いぞ。
「リネア王女様ー。申し訳ありませぬー」
「止めなさいったら!」
冗談交じりに謝罪する僕と気持ち悪がるリネア。それを見て、イリーニャはキャッキャと笑ったのだった。
そんなことをしている内に、馬車は城門まで到着し、ドラスが門番に声を掛けると顔パスで王都内に入ることができた。
「おお! イリーニャ! 見てみて!」
馬車の窓から外を見て、王都の街並みに感動する。
「うわぁ! 凄いです!」
イリーニャも窓に張り付き、外の様子に歓声を上げた。
王都の街並みは長い歴史故に多少の古さは感じるが、手入れが行き届いていて綺麗だった。灰色の石造りの建物は二階建てどころか、三階建てや四階建ても建ち並んでいる。その見事な建築もそうだが、段差の少ない石畳の道も良く出来ていた。
その広い大通りには彩り鮮やかな衣服の店、飲食店、雑貨屋などがあり、活気の良い声が四方から聞こえている。
「お、あれ美味しそう」
馬車の窓から見えた屋台で焼かれている肉に反応すると、リネアがそちらを見て、口を開いた。
「ああ、サマレね。誰か、サマレを三人分買ってきて頂戴」
リネアが窓から声を掛けると、護衛の為に近くを歩いていた騎士が答える。
「は! 承知しました!」
返事をして、騎士がすぐに屋台に肉を買いに行く。三十秒後には、騎士が両手に肉の刺さった串を持って走ってきた。なんてことだ。騎士をパシリに使うとは。
「ありがと」
「ありがとうございます!」
「うわぁ、美味しそう。ありがとうございます」
リネア、イリーニャ、僕が御礼を言うと、騎士は嬉しそうに目を細めていた。
「うわ、美味しい」
早速肉に齧り付き、思わず声が出る。香ばしい匂いに釣られたが、しっかりと味も美味しかった。焼き鳥に似ていて嬉しい。
「すごく美味しいです!」
イリーニャも口元を手で隠しながら喜びの声を上げる。その様子を見て、リネアは微笑みつつ、豪快に肉に食いついた。王女よ、礼儀作法はどうしたのだ。
「……うん、中々良い味付けね。時々、王城に届けてもらおうかしら」
と、リネアはなんでもないことのように口にした。いやいや、その一言であの店はもの凄い人気店になるかもしれない。屋台が王家御用達の名店になってしまうのだろうか。
「あ、もう着くわよ」
「へぇ。王都内は凄く広かったけど、意外とすぐに着いたね」
リネアの言葉に肉を食べつつ、窓から顔を出す。確かに、王城はもうすぐそこだった。
大国、テオドーラ王国の王城は流石に荘厳である。王城の周りをぐるりと高さ十メートルほどの城壁が囲んでいるが、その城門すら巨大である。門は開けられており、そのまま馬車はその門を潜った。
そして、いよいよ巨大な城が目の前に現れる。尖塔が左右に並び、大きな城と飛梁で繋がっていた。
「さぁ、降りるわよ?」
「うん……これは、凄いね」
「……はい」
リネアに連れられて馬車を降りたのだが、イリーニャと一緒に城を見上げるばかりである。あまりにも規模が大き過ぎて冗談みたいである。
「……これが、テオドーラ王国の王城か」
「すっごいな……」
アーベル達も馬車から降り、城を見上げて唖然としていた。
「ふっふっふ。ようこそ、我が家へ」
リネアが胸を張ってそう言うと、ドラスがさっと前に行き、正門を守る騎士達に声を掛けた。
「リネア王女の御帰りである!」
「はっ!」
「どうぞ!」
ドラスが声を掛けると、騎士達はすぐに門を開いた。大きな両開き扉が開かれると、広いホールが目に入る。
「さ! 行くわよ!」
「……お、押忍」
「……はいっ!」
元気よく城の中に入って行くリネアに返事をして後に続く。イリーニャが付いてきたことで、アーベル達も何とか付いてきた。借りてきた猫のように静かになったミケルやロルフも面白い。
「皆様、こちらへ」
騎士はそう言って吹き抜けになった広いホールの正面にある階段を上っていく。なぜ、こういった場所の階段は無駄に広いのか。
二階に上がると、更に正面の広い通路を進んでいく。
「あら? 謁見の間で会うつもりかしら」
騎士が案内する先を予測し、リネアがそんなことを呟いた。それに思わず感嘆の声を上げる。これは、想像していたよりもずっと我らの存在を大きく扱ってくれているな。
「まぁ、異国出身ということで作法は気にしなくて良いから、言われた通りにしてね」
リネアは苦笑しながらそう言って、こちらの顔を見てふっと息を漏らすように笑った。
「……あ、ラーシュなら問題ないわね」
「頑張ります」
リネアの言葉に苦笑いをして返事する。妙な信頼を寄せないでもらいたい。侯爵家といっても公の場に出されることのない存在だったのだ。
「皆、僕の真似をしてね」
後ろに向かってそう声を掛けると、イリーニャやアーベル達が緊張した様子で頷く。どうも王都に来てから不安そうだ。
ちょっとでも緊張をほぐせたらと思ったが、残念ながら目的地に到着してしまったらしい。前を歩いていた騎士は立ち止まり、こちらに振り向いた。
「それでは、これより謁見の間にて陛下と謁見をしていただきます。よろしいですね」
「大丈夫よ」
騎士の言葉にリネアが返事をする。その言葉に頷き、騎士は扉をノックした。すると、扉は内側から開かれる。
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