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僕の職業適性には人権が無かったらしい  作者: 井上みつる/乳酸菌/赤池宗


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69/69

王都に到着 69

 ご機嫌で馬車に乗ると、ドラスが戻ってくるアーベル達を見て剣を鞘に戻し、眉間に皺を寄せた。


「……うむ。やはり強い」


 そう呟くドラスに、馬車の窓から顔を出したリネアが尋ねる。


「……皆強いわよね。特に、ミケルとロルフの弓は凄いわ」


「ふむ、私はアーベル殿の剣技に驚愕しましたぞ。以前見た時よりも更に腕が磨かれているようですな」


 二人はそんな話をしている。ふふふ、そうだろう。あの頃よりレベルも上がり、各スキルの熟練度も高くなっている。まぁ、ゲームと同様に、スキルポイントの上限があると想定している為、三人はまだ追加のスキルは取得していないが。


 そんなことを考えていると、リネアが目を細めてこちらに顔を向けた。


「それで……ラーシュはどれくらい強いのかしら?」


 その疑問に、ドラスも興味深そうに振り向く。


「そうですな。前回、我が国の研究者に聞いて回りましたが、終ぞラーシュ殿のスキルどころか、職業適性すら分かりませんでしたからな」


 ドラスがそう呟き、溜め息を吐く。その目には何か探るような視線を感じたが、それ以上の質問はされなかった。気にはなるが、恩人を問いただすようなことはできないということだろうか。


 まぁ、ゲームの最後の行動が反映されているなら、僕は転生を果たしてスキルポイントを百ポイント所持した状態の魔導技師だ。初期レベルに戻り、ステータスは下がっているが、レベルと商人、魔導技師の熟練度を上げてどんどん強くなる予定だ。


「……まぁ、僕の職業適性は商人だとされているけどね」


 そう答えると、リネアが首を左右に振る。


「どう考えても商人じゃないわね。商人は庶民に多い職業だけど、それなりに研究が進んでいるわ。それなのに、ラーシュみたいなスキルは全然見つかっていないもの」


「うんうん」


 リネアの言葉に頷いておく。個人的にも気になって調べてみたけど、魔導技師の職業適性については一切知られていなかった。まぁ、商人の職業適性で必死に戦う人なんていないだろうから、仕方がないことだよね。


 そう思っていると、アーベル達も自分達用の馬車に乗り込むところが見えた。ミケルは楽しそうにしているが、やはり高級な馬車に乗る機会などないから、嬉しいのだろう。


 その時、ドラスが思い出したように顔を上げた。


「む。そういえば、我が国、テオドーラ王国で過去に魔剣士となった騎士団長がおりますが、最初は戦士とされておりましたな。過酷な修練や、何かしらの切っ掛けがあって、偶然にも新たな職業適性へと辿り着いたものと思われておりますぞ」


「……ということは、ラーシュもその新たな職業適性の可能性があるわね。ただ、新たな職業適性を得た人って普通は四十代とか五十代くらいだと思うけど……年齢詐称してる?」


「してないよ!」


 リネアからジト目で言われたので、両手を振り上げて文句を言っておいた。ある意味で経歴詐称はしてるかもだけどね!


 そんなことはありつつ、僕たちは一ヶ月かからずに王都まで到着することができた。魔獣とは三度遭遇したが、それでも予定より早く王都まで移動することができたようだ。


 街道の先、遠目に見えた時から、王都の大きさは群を抜いていた。途中の城塞都市も大きかったが、比較できないほどである。


 見上げるような城壁と、城壁の向こう側に見える王城と尖塔を眺め、口がぽかんと開いてしまう。


「……お、大きいなぁ。王都ってどれくらい大きいの?」


 そう尋ねると、リネアは斜め上を見上げながら記憶を辿る。


「えっと……確か、最後の改修の時に、城壁の長さが二十キロを超えたと聞いたわね」


「二十キロ!?」


 その巨大さに思わず驚く。ハーベイ王国の王都の三倍はありそうだ。もちろん、フォールンテール伯爵家の第一都市とは比べ物にならない。


 ハーベイ王国は大国の一つであり、テオドーラ王国にも負けないと自負している。しかし、実際にはこれだけの差があるのだ。同じように大国に数えられたとしても、現実はテオドーラ王国が頭一つ分は抜けている。


「ふふん。ようやく我がテオドーラ王国の凄さに気が付いたようね」


 リネアが笑みを浮かべてそう言うが、今更である。


「いや、テオドーラ王国が大国なのは知っているよ。国土と資源だけでなく、経済や人財でも近隣諸国とは比べ物にならないよね。とはいえ、あの王都の大きさにはビックリしたけど」


 そう告げると、リネアが口を尖らせた。


「それならもうちょっと敬いなさいよ」


 と、リネアが文句を言う。どうやら、それが言いたかったらしい。腕を組んで口を尖らせるリネアの様子が可愛らしく、思わず笑ってしまった。よく考えたら、リネアは十代中頃といった年齢だろう。あまりにも雑に扱ってしまっていたのかもしれない。


「何を笑っているのかしら?」


 目を細めてそう言われたので、恭しく頭を下げた。


「失礼しました。これまでの無礼を御許しください。リネア王女」


 敬意を込めて謝罪をする。麗しきラーシュ君の憂いを帯びた瞳と切ない表情を加えた、世界最高の謝罪である。これで許さない人間はいない。


「うわぁ……何故か寒気がしたわ。命令よ。いつも通りにしなさい」


 いた。恐らく、世界で唯一、ラーシュ君の懸命な謝罪が通じない相手である。リネアは僕の謝罪に両腕の二の腕をさすりながら酷いことを言った。これがラーシュ君でなければ咽び泣くところである。




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