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僕の職業適性には人権が無かったらしい  作者: 井上みつる/乳酸菌/赤池宗


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【別視点】 アーベルの気持ち   63

【アーベル】


 ラーシュは不思議な少年だった。


 上級貴族の嫡子であることが分かり、特別な教育を受けたのだと思って納得したが、それだけでは足りない何かがあった。


 単純に頭が良いのは間違いないが、あまりにも職業適性の知識があり過ぎる。


 リネア王女達が残した部下の騎士二人も強く、戦士としての鍛錬方法を確立していたが、その二人であってもラーシュの知識には舌を巻いていた。


 曰く、テオドーラ王国の王家でも持ち得ないほどの膨大な知識、とのことだ。


「……不敬にあたることを言った。黙っていてもらいたい」


 最後にそう言われたが、その言葉が何よりも説得力を持たせていた。


 各国が持つ職業適性とスキルの知識は基本的に秘匿されているらしいが、それなら何故ラーシュは知っているのか。


 子ども特有の嘘や誇張した内容ではない。なにしろ、村の全員がラーシュの力で強くなっているのだ。それに、スキルは精々数年に一つ覚えるくらいだったが、今では毎月のように新たなスキルを習得している。


「ラーシュ! 狙い撃ちと貫通矢の同時発動ができたぞ!」


「おー、すごい。これなら大牙猿みたいに立体的に動く魔獣にも致命打を与えられるね」


「まじかよ!」


 ミケルやロルフは単純に驚くような速度で強くなっていることを喜んでいるが、一部の村民はラーシュの知識量を不思議に思っていた。


 ただ、ラーシュが善人であり、純粋に村のことを考えていると理解しているから気にしていないだけだ。


「……不思議な子どもだ」


 そう口にして、新たなスキルを習得したミケルに新しい戦い方を教えるラーシュの横顔を見る。


 楽しそうに笑いながら、習得したスキルがどれだけ強いか。また、どのように使うべきか伝えている。その表情は誰が見ても楽しそうで、ミケルが強くなることを喜んでいる。


 そんなラーシュの様子を、イリーニャが嬉しそうに眺めていた。


 今では普通になった村の光景だ。以前ならば、何ヶ月かに一回、年に何人かの命が失われ、時には村の場所を移動する必要があった。


 だが、今は違う。


 俺たちは定住できるだけの強さを手に入れて、村の周囲は壁に囲まれて、立派な家が三十以上建った。上水道、下水道というものもできて、常に水が供給されるようにもなった。


 その上、森の外と道がつながり、定期的に行商人が村を来訪するようになったのだ。魔獣の素材を買い取ってもらうことで、食料や調味料、衣服なども手に入るようになった。我々の生活は格段に良い方向に変わっている。


「アーベルさん。ちょっと良いですか?」


 色々考えていると、そのラーシュから声を掛けられた。どうしたのかと顔を上げると、深刻な表情が目に入る。何か問題でもあったのか。


「……どうした?」


 聞き返すと、ラーシュは難しい顔でメモを取り出した。


「もし、アーベルさんとミケルさん、ロルフさんの三人が村を離れないといけないとしたら、今の村の皆で大丈夫と思う?」


「……どれくらいだ?」


「四ヶ月かな」


 そう言われて、頭の中で村の皆の戦いを思い浮かべた。ここ数か月で、皆は驚くほど強くなった。それこそ、以前の自分やミケル、ロルフと同等の戦士が何人もいる。そう思えば、以前よりはずっと村は安全になったと言えるだろう。


「……そうだな。四ヶ月か。それならば、何とかなるだろう」


 そう答えると、ラーシュはホッとした様子で頷いた。


「よかった! それなら、ちょっと三人にも来てもらおうかな」


「どこにいく?」


 聞き返すと、ラーシュは笑いながら答える。


「テオドーラ王国の王都に行くんだって。あ、ちゃんと王家からの招待だから、危ないこととかはないと思うよ」


 そう告げられ、成程と唸る。ラーシュの話では、テオドーラ王国の王家に村の存在を認められたお陰で、他の国も手を出し難くなっているという。それに、村を驚くほど住みやすくしてもらったり、商人が村まで来れるようになった面もある。


 その恩義を返す為にも、王家の招待とやらも受けねばならないのだろう。


「……王家に行って何をするんだ?」


 尋ねてみるが、ラーシュは困ったように笑った。


「よく分からないんだけど、多分テオドール王国の王様が僕たちに興味を持っているんじゃないかな? もしくは魔の森の開拓に興味がある、とか?」


 曖昧な返事をして、ラーシュは首を傾げる。どうやら、ラーシュ自身もあまり詳しくは知らないようだ。それだけ、テオドール王国の王女、リネアを信頼しているのだろう。


「……分かった。では、旅に出る準備をするとしよう」


 そう答えると、ラーシュは意外そうに目を瞬かせた。


「え? 良いの? 嫌がるかと思った」


 素直にそう言われて、思わず笑う。


「……俺たちはラーシュを信頼している。そのラーシュが大丈夫だというなら、テオドール王国へ行くことに関しても心配はしていない」


 自分の考えを口にし、ラーシュを見た。それに、ラーシュは照れたような表情で笑った。


「ぼ、僕だって失敗することはあるからね? おかしいと思ったら、アーベルさんが指摘してよ?」


「分かった、分かった」


「もう!」


 そんなやり取りをして、笑い合う。ラーシュは人間だが、優しい奴だ。何かあった時は、俺が守ってやらなくてはならない。




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